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ピアノ基礎練習

ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

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音楽を学ぶにあたって、基礎のテクニックはとても大切なものです。その中でも、スケール(音階)とアルペジオについては、多くのピアニストなどが、著書などでその重要性について解説しています。また、ピアノ講師の方々もブログやネット上の動画などで、練習方法などを詳しく説明しているのを見かけます。それほど大切な基礎練習ということです。スケールとアルペジオは一緒に練習することが多いですが、この記事ではスケールの練習方法を中心に解説します。

もくじ

スケール(音階)とは

鍵盤には12種類の高さの音があります

スケール(音階)とは言葉通り、「段」のことであり、12種類の高さの音を、ある規則で順番に並べたものです。ここでは、1番最初に覚えやすい音階、「ハ長調」を見てみましょう。

ハ長調…ハ(ド)の音を主音とする長調のことです。シャープ(♯)やフラット(♭)がつかない調号なので、初心者でも取りくみやすい調です。

主音…その調の音階の最初の音のことで、ハ長調でいうと「ド」のことです。

調号…ト音記号やヘ音記号のすぐ隣りについている、シャープ(♯)やフラット(♭)のことです。ハ長調とイ短調には、調号はつきません。

スケール練習の大切さ

ピアニストやピアノ指導者が声を揃えてスケールの大切さを語るのには、理由があります。その理由について説明します。

調の基礎知識が身につく

ハ長調は何も調号がつかないので鍵盤でいうと黒鍵は使用しません。白鍵だけを右方向に順番に弾いていけば自然な音階が成り立ちます。

ただし、他の調になると黒鍵を使ったり、楽譜では調号にシャープやフラットが付きます。スケールを練習するとその仕組みが、「感覚」で理解できるようになります。

よくスケールのことを「全音」や「半音」などの言葉で説明している解説本などを見かけます。スケールを弾けるようになれば、その理由が理論的にも感覚的にも理解できるようになります。もちろんその曲が何調なのか、瞬時に判断できるようにもなります。つまり、調の基礎知識が理解でき、調性感も身につくということになるのです。

それにより、楽曲分析もしやすくなるので、曲の練習や勉強にとても効果的です。初めての曲に取りくむにあたっても、初見譜読みにかかる時間が大幅に減るなど、非常に役に立ちます。

初見…楽譜を初めて見て、その場で出来るだけ止まらずに、最後まで弾くこと。

譜読み…初めて弾く曲の楽譜を正確なリズム・音符で、ある程度通して弾けるようになるまでの作業のこと。

楽曲でのテクニック練習が最小限になる

スケールの練習をマスターすると指のテクニック不足解消だけでなく、鍵盤の感覚が身につき、無駄なミスタッチが減ります。また曲にふさわしい正しい指づかいができるようになります。楽曲に出てくるパッセージには、スケールとアルペジオの音型がとても多く登場します。むしろ、楽曲の多くは、スケールとアルペジオの応用でできていると言ってもいいくらいです。つまり、スケールの練習が出来ていると、曲で出てきたテクニックを1から練習しなくても、最小限の練習で弾けるということになります。

和声感が身につく

それぞれの調のスケールの最後には音楽の終止形「T-S-D-T」があります。それぞれの調のカデンツの響きが分かるので、24の全てのスケールを弾くうちに「和声感」も身につきます。カデンツとは、楽曲の終止形で使われる和音進行のことをいいます。

音楽を学ぶ上で「和声感」も、とても大切な要素のひとつです。

スケールの練習方法

スケールを練習するにあたり、教本の紹介と練習方法の説明をします。

教本について

スケール練習をするための教本を紹介します。

ハノン「ピアノ教本」

ピアノ学習者に定番のハノンの「ピアノ教本」です。スケールの練習はこの中の39番にあります。この中には、アルペジオの楽譜も含まれています。

スケールとアルペジオ

指くぐりと指こえ

1オクターブ以上の長い音域を片手で弾こうとすると、途中で指が足りなくなります。そこでスムーズに弾くための練習が必要となり、スケールの練習をすることで身につけられます。

スケール練習の難しさは1の指を2、3の下へ送り込むこと(=指くぐり)と、1の指を他の指が越えていくところ(=指こえ)にあると考えられます。どの調のスケールでも同じことが言えます。

ちなみに、送りこんだ1の指で弾いた後は、すぐに手の甲は次のポジションに移動するようにします。手と指の理想的なフォームを崩さないためです。逆に、1の指を他の指が超えて弾く場合は、この逆の動作を行うことになります。

スケール練習の手順

①片手ずつ、必ず楽譜の指番号を守って弾きましょう。気をつけることは、指くぐり・指こえをしても、それをしたことが分からないよう、どの音も同じ音量・音質で弾くことです。また手首が上下に揺れず、手の甲が床と平行になることをキープしてください。

②左右それぞれ、出来るようになったら、両手で合わせます。指番号が左右で違うので最初は合わせて弾くことが難しいと思います。ゆっくりのテンポで手・指のフォームは崩さないことに気をつけて練習しましょう。

③ゆっくりの段階からメトロノームを使って練習します。メトロノームにピッタリ合わせて弾くことは意外に難しく、速いテンポだけでなく、ゆっくりのテンポに合わせることもいい練習となります。この練習を沢山やると、指のテクニックや演奏が安定していきます。

④両手の練習に慣れてきたら、リズム練習を取り入れて、粒が美しく揃うことを目指します。1つの調に慣れるまで、毎日続けましょう。リズム練習については、後ほど詳しく説明します。

⑤慣れてきたらテンポを少しずつ上げていきます。粒の揃い方が気になったら、再びリズム練習や、片手ずつの練習を並行して、何度も行います。

両手ばかりで練習していると、利き手ではない方の音が実は聴けていないことがあります。そうならないためにも、時々は片手ずつで、特に利き手ではない方を重点的に練習しましょう。

リズム練習について

スケール練習でリズム練習をすると、コントロールが自由に効くようになりますし、粒が美しく揃うようにもなります。ハノンの「ピアノ教本」にも沢山のリズム練習がありますが、おすすめのパターンを2セット、紹介します。これをやると、スケールの指くぐりや指こえの移動もスムーズになり、弾きやすくなります。

付点のリズム(2つを1セット)

4つのリズム(4つの変奏を1セット)

①と②、両方ともやると、より効果が感じられます。

1つの調を丁寧に

毎日の練習で、多くの調のスケールを弾くに越したことはないですが、全ての調を雑に練習するよりは、1つの調を丁寧にやることの方が大切です。ミスタッチをしたり、粒が揃わない、など気になることがあれば、次の調に進むのではなく、納得のいく弾き方ができるまで、1つの調で、色々な練習をするようにしましょう。

難しい調のスケール練習について

スケールの練習が、全ての調で同じ指づかいであれば楽なのに、と思いますよね。しかし実際には、調によって指づかいが違います。この違いの理由はどこから来るのでしょう?

スケールで黒鍵を弾く時は…

この記事では、全ての調は紹介しませんが、調によっては、スケールの中に黒鍵が登場しますよね。スケールの指づかいでは、黒鍵を弾くときは、1の指は最少限の使用にとどまることが暗黙のルールです。ですので主音が黒鍵始まりの調は、1以外の指でスタートすることになりますし、それ以外でも黒鍵を1の指で弾かないような指づかいになっています。それらの理由により、調によって指づかいが違ってくるのです。

難しい調を練習する時は…

黒鍵は1の指以外で弾く。頭では理解できたけど、シャープやフラットが多い調はやっぱり難しいよ。変ニ長調(下の楽譜)には調号にフラットが5つもついているし。

そういう時は、まず1オクターブだけを弾こう。下の譜面を参考にしてね。必ず、片手ずつゆっくりやるんだよ。
スケールはこの1オクターブ↓が同じ指づかいで続いているだけだから、このやり方に慣れたらスケールも弾けるようになるよ。ゆっくりトライしていこう。

右手

左手

左手で(2)とカッコ書きしてあるのは、スケールを弾くときの頂点の指づかいです。どちらの指づかいでも出来るようにしておくと、スケール練習に移行した時に、スムーズに弾けるようになります。

まとめ:ピアノでスケールを練習しよう

ここまで、スケールについて説明しました。まとめると次のようになります。

<スケール練習をすると身につけられること>
1.調の基礎知識が理解でき、調性感が身につく。
2.理論だけでなく、鍵盤の感覚が身につき、無駄なミスタッチが減る。
3.楽曲の多くはスケールとアルペジオの応用なので、スケール練習をマスターすると、新しい曲の初見や譜読みも早くなる。
4.和声感が身につく

ピアノを学ぶ上で、音楽の基礎知識を身につけることはとても大切です。スケールが弾けるようになれば、指のテクニックが向上するだけでなく、上記の内容も身につきます。

つまり、スケールは時間をかけてでも習得する価値のある練習です。何度も練習することで、その効果が感じられるようになり、ピアノがぐっと身近になることでしょう。

皆さんのピアノライフが充実したものになるよう、応援しています。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。