カテゴリー
楽器の知識

ピアノの蓋。正しく知って上手に活用しよう。

Pocket

学校などでよく見かけるグランドピアノですが、「ピアノのフタ」と言えば、どこの部分を想像するでしょうか。

ピアノ胴体そのものの「大きく開く蓋」の部分を想像する人もいれば、「鍵盤の蓋」を想像する人もいるでしょう。

名称としては、ピアノ胴体部分の大きな蓋は「屋根」鍵盤の蓋のことを「鍵盤蓋」、といいます。

この記事では、ピアノのフタと呼ばれる「屋根」と「鍵盤蓋」について、詳しく紹介します。

もくじ

ピアノのフタについて

「ピアノのフタ」を含むピアノの名称について確認しましょう。

グランドピアノ名称

グランドピアノの名称を確認してみましょう。

上の図から分かるように、正式名称として「蓋」、という名称がついているのは「鍵盤蓋(けんばんふた)」のことです。

しかし実際には、ピアノの胴体部分にある「前屋根」「大屋根」のことも「ピアノのフタ」と呼ぶことが多いです。「鍵盤蓋」と区別するために「屋根」という名称がついているのかもしれません。

たとえば、コンサート出演時、共演者に「(伴奏として)ピアノのフタどのくらい開けましょうか?」などと話し合います。この時の「フタ」とは、「屋根」のことを指します。むしろピアノの「屋根」のことを「屋根」と呼んでる人なんて、これまでほとんど知りません…

ただ、この記事では区別するために、「前屋根」「大屋根」の部分は名称どおり「屋根」と呼ぶことにしますね。

グランドピアノの屋根の働き

ピアノは楽器そのものを共鳴させて、豊かな響きを奏でます。グランドピアノは「屋根」の開き具合で音量や音の響きなどを調節できるようになっています。

そして屋根を「全て開いた」状態のことを「全開」(ぜんかい)といいます。イラストや、コンサートでもよく見かける、このような↓開き方のことです。

「全開」が1番音量と響きがあり、音質はクリアーな音がします。開き方を全て数えると5段階くらいに調節できます。

以下、①→⑤に行くにしたがって、響きが減り、音量は小さめになっていきます。音質はくぐもったような音になる傾向があります。

①全開

②半開

③小さい突上棒のようなもの(機種によりないピアノもある)で開けた状態

④「前屋根」だけ開けて「大屋根」は全く開けない状態

⑤前屋根すら開けない状態

また、響きが減ると、鍵盤が重く感じる傾向があります。同じピアノなのに、とっても不思議です。

屋根はどのくらい開けるのが理想?

屋根は5段階くらいに調節できることを説明しましたが、どのくらい開けるのが理想なのでしょうか。シーン別に説明します。

コンサート会場などで

ピアノのコンサートや発表会など、ソロで演奏する場合は「全開」にすることが多いです。これは、十分な音量、響きが必要になるからです。

声楽や弦楽器などの伴奏になると、半開などにしたりします。場合によっては小さな突上棒を使って、ほんの少しフタを開ける状態で弾くこともあります。コンサート会場が響きすぎる場合は、全く開けないこともあります。共演する声楽家や楽器とのバランスがとても重要になってきます。

「屋根」はピアノの音を反響させる働きがありますが、会場の環境によっては、声楽家や楽器の音ですらも、うまく反響させてくれることがあります。そういう場合は、全開で演奏することもあります。

会場そのものの響きや共演者との音量のバランスなどは、人前で演奏する際はいつも悩ましい問題です。

家庭での練習では

日頃の練習としては、ピアノが置かれてある部屋の響き方、外への音の漏れ方などにより、屋根の開き方は様々なようです。「前屋根」だけ開ける人、半開の人、などが多いでしょう。中には「前屋根」すら閉めて、譜面台をピアノの上に乗せた状態で弾く人もいます。

なお、先ほども述べましたが、開ける部分が多いほど、よく響くため「鍵盤が軽く」感じます。そうなると、一見、「屋根を全開すると弾きやすい」と感じます。

そのため、「指のテクニック的には、閉じて練習する方が『指の訓練』につながるのかな?」とも考えられます(指に負荷をかけて鍛える、的なイメージです)。

そう考えた学生時代に、師匠に質問してみました。そこで言われた内容は以下の通りです。

大事な本番(人前で弾く機会)が控えている直前は、全開で練習した方が良いとのこと。その理由は、よく響くことで「自分の音が細部までよく聴こえるため」です。

確かによく響いた方が、音が繊細に感じとれ、演奏する音色にとても影響します。

音楽をするということは、テクニック的に自由に動く指を作ることも必要ですが、それ以上に「表現する」=「自分の音をよく聴く」ことが大切だとあらためて感じた助言でした。

アップライトにも屋根がある

アップライトピアノにも屋根があります。

「屋根」の部分は、普段は楽譜など物を置いたり、ピアノカバーをしたりすることが多いと思います。

時には、開けて弾いてみましょう。グランドピアノの屋根と比べて、簡単に開けることができます。

屋根を開けることで、音がクリアーになり、自分の音がさらに細かく聴こえるようになります。音楽的な表現力を身につけるためには、時々は開けて練習することも効果的です。

鍵盤蓋には気をつけるべし

この辺りで「鍵盤蓋」についても触れたいと思います。

指をはさむ危険性

「鍵盤蓋」には、そっと閉まるタイプのピアノと「バタンッ!!」と勢いよく閉まるタイプのピアノがあります。

勢いよく閉まるタイプの蓋は、気をつけないと指をはさんでしまう恐れがあります。小さいお子さんは特に気をつける必要がありますので、講師や親御さんは危険性について、しっかりと伝えなければいけません。

それでも万が一のために、安全対策グッズ「フィンガード」というものが販売されています。これはアップライトピアノに使用できるものです。詳細は楽器の専門店などに問い合わせしてみましょう。

蓋の間に物を落とした時の対処法

グランドピアノの蓋や、一部のアップライトピアノの蓋には開けた状態の際、蓋と鍵盤の間に隙間ができます。そこにうっかり、鉛筆などを落としてしまうことがよくありますが、安心してください。このタイプの蓋はほとんどの場合、素人でも取り外しが可能です。

ただし、最初だけは経験者にやり方を教えてもらいましょう。我流でやると、再び取り付ける際に、うまくはまらずに、ピアノを傷付けてしまう恐れがあります。取りだすまでは鉛筆がカタカタと音がするのは気になるかもしれませんが、楽器にとってそこまでの悪影響はありません。調律をしてもらう時まで、待ってもよいでしょう。

1度やり方を知れば、それ以降は自分で出来るようになりますよ。

ピアノのフタは練習の度に閉めるべきか

屋根や鍵盤蓋は、長時間開けっぱなしでも問題ないのでしょうか。開けていた方が「練習に取りかかりやすい」という意味では、開けっぱなしの方がよいかもしれません。

筆者の場合も練習の途中、休憩をする時に、屋根や蓋を閉めるかどうか迷います。時々は開けっぱなしにしたり、面倒くさいのを我慢して片付けたりすることもあります。

基本的には、長時間開けっぱなしでいることは、埃などが気になります。グランドピアノの場合は、埃は弦の下にたまっていくので、調律時だけでは、手入れが行き届かない場所に埃がたまることになるのです。

また、開けっぱなしだと、ピアノを管理する人が不在の時が心配です。例えば、ピアノを触ったことのない家族が何も知らずに、万が一お茶などをこぼしてしまったり、何か物をぶつけてしまったり…そのような可能性ができてしまいます。それで何か起きても、家族に文句は言えません。

それを踏まえた上で、きちんと楽器を管理しましょう。

まとめ:ピアノの蓋。正しく知って上手に活用しよう。

 

ここまで「ピアノのフタ」と呼ばれる「屋根」と「鍵盤蓋」について紹介しました。まとめると次のようになります。

屋根…一般的に「ピアノのフタ」と呼ばれ、「前屋根」と「大屋根」があります。

楽器本体を響かせる大きな役割があり、コンサート会場や家庭での練習など、シーン別に開き具合を調節して使います。

鍵盤蓋…ゆっくり閉まるものと、勢いよく閉まるタイプのものがあります。

勢いよく閉まるタイプは、油断すると指を挟んでしまいます。小さなお子さんやピアノ初心者にとっては取り扱いに注意が必要です。

物を落とした時のために、蓋を取り外す方法を知っておくと、後々役に立ちます。

アコースティック楽器は大切に使うと長年使用することが可能です。ピアノのフタの使い方を正しく知って、長くピアノと付き合っていきましょう。皆さんのピアノライフがこれからも楽しいものになるよう応援しています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。