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作曲家の豆知識

ピアノの詩人ショパンの言葉〜音楽とは歌〜

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多くの人々が時代を超えて、ショパンのピアノ曲に魅了されてきました。

そのメロディーの多くは、甘美で儚く美しい。彼がそのような魅力的なメロディーを作れた理由のひとつとして、音楽を「歌」だと捉えていたから、ということが関係しているようです。

この記事では、ショパンがいかに「歌」にこだわっていたかということを取り上げ、ショパンの音楽への真髄にほんの少し歩みよってみようと思います。

もくじ

ショパンは「ピアノの詩人」

フレデリック・フランソワ・ショパン(1810〜1849)はポーランド出身の、前期ロマン派音楽を代表する作曲家でありピアニストです。意外にも、繊細な人柄で大勢の前での演奏などは苦手だったといいます。

作品の多くは、ピアノ独奏曲がほとんどでした。そのメロディーは美しいだけでなく、情景的、叙情的で「詩的」。そのため、彼を表すのに「ピアノの詩人」が代名詞となっていることは有名です。

ところで、ショパンの「ピアノ協奏曲」を聴いたことあるでしょうか?聴くたびに胸をキューっと掴まれるような切ない気持ちになり、「クラシックっていいなぁ」と心の底から思わせてくれるほど美しい曲です。

一般的に「ピアノ協奏曲」というは、ピアノとオーケストラ、それぞれの見せ所があるものです。

ところがショパンのピアノ協奏曲の場合、オーケストラにメロディーを譲ることはほとんどなく、完全に「ピアノが主役」という印象を受けます。それほどまでに、ショパンは音楽的なメッセージを、どの楽器よりも「ピアノ」を通して伝えたかったのでは?筆者は個人的にそう思います。

1番が特に有名ですが、2番もステキです。2番の2楽章はショパンが19才で、初恋の時に作曲したものだそうですよ。どちらもとってもおすすめなので、聴いたことない方はぜひ聴いてみてください。

ショパンの音楽の源は「歌」だった

ショパンは「音楽の源は歌」と考えていたといいます。彼の場合、たまたまそれを「ピアノ」という楽器を使って、指を使って表現しているだけだったということです。

ピアノを上手に弾くには、歌うことが大切、という考えの下、弟子たちを実際に歌のレッスンに通わせていました。ピアノは「(歌のような)レガート」が大切と感じており、それを表現させるためでした。

ピアノの楽器の特性

ショパンもこだわる「ピアノで歌うように弾く」ということ。それが、実はとても難しいことなのですが、その理由について説明します。

弦楽器は歌うように弾けるが・・・

バイオリンやチェロのような「弦楽器」は楽器の特性上、音量を減らさずに好きなだけ長く鳴らし続けることが可能です。それどころか、途中で音量を増やすことだってできます。

また人の声のように、曖昧な音を表現することも可能です。例えば「ド」と「♯ド」の中間のように、「音名では表せないような音」のことです。

一方ピアノは、鳴らした音は必ず減衰していく楽器。そして、音名で表せないような曖昧な音は表現できません。つまり、レガート奏法がとても難しく、人の声のような曖昧な音を表現することが難しい楽器なのです。

音をレガートにつなげたり、声楽のように自然な呼吸で「歌う」こと。音楽にとっては単純なことかもしれませんが、ピアノしか経験したことない人にとっては、ピアノでそれを表現することは実はとっても難しいことです。それは今の時代でも、多くのピアノ学習者にとって課題と言えます。

ピアノがそういう特性だからこそ、ショパンは歌のような表現へのこだわりがあったのでしょうね。

あるバイオリニストの音楽への考え

筆者が親しくしているあるバイオリニストは、幼い頃から英才教育を受けており、とても音楽的で情熱的な演奏をします。

そんな彼女がある時、言いました。

「私は演奏する時、楽器を弾くという感覚よりも、『どんな歌声でどんな風に歌いたいか』。そのイメージをバイオリンで表現している。」

これはまさにショパンの言う「音楽とは歌」という考えと同じ。筆者は、その彼女の言葉によって、初めてその考えに触れ、目からウロコでした。当時はそれでも尚、「弦楽器だからそれが出来るんだよね〜。ピアノでは無理だわ。」と思っており・・・。

それから随分後になり、ショパンも同じ考えだと知ったわけですが、この考えは音楽全てに共通して言えることだとあらためて感じるようになりました。楽器の垣根は関係ないということですね。勉強になります。

まとめ:ピアノの詩人ショパンの言葉〜音楽とは歌〜

ここまで、ショパンが人々の心を惹きつけるメロディーを作り上げた理由のひとつとして、いかに「歌」にこだわっていたかということについて説明しました。

ショパンの言うように「音楽とは歌」。楽器の特性上、ピアノでメロディーを歌のようにレガートで弾くことは難しいものです。彼はそれを知っていたからなおさら、指で歌うように弾くことの大切さを感じ、こだわっていたのでしょう。

それは筆者も含め、多くのピアノ学習者の永遠の課題のようなものです。

時代を超えて愛されるショパンの作品の数々。今後は、彼の音楽に対する想いを感じながら触れてみてはいかかでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。