ピアノの暗譜は大変です。
ピアノは1人でメロディー、和音、バスの主要な動きに加えて、さらに第二のメロディーや飾りの音型など、様々な要素があります。
以前、バイオリニストである友人がピアノの発表会の様子をみて、「なぜピアノを弾く人は、よく止まってしまうのか」と言っていました。バイオリン学習者はステージの上で間違えたとしても、止まることはないのだそうです。
弦楽器や管楽器と違って、ピアノはメロディーだけを覚えればいいわけではありませんから、1音分からなくなっただけで、その後、ボロボロに崩れることは不思議ではありません。
それに、人前で弾くまでの道のりは、それは他の楽器より、時間とエネルギーはかかります。
練習ではちゃんと弾けていたのに、本番では思いもよらぬハプニングが起こることも、ピアノ学習者なら「あるある」でしょう。
この記事では、人前で弾く時に頭が真っ白にならないための、暗譜の練習方法を紹介します。
もくじ
ピアノの暗譜とは
暗譜とは、楽譜を見ずに曲を弾くことです。楽器、声楽、合唱などの伴奏では、本番のステージでも譜面を見ますので、暗譜の必要はありません。
一方で、ピアノソロの場合は、暗譜で弾くことがほとんどです。
ここではピアノの暗譜について、説明します。
譜読みに時間をかける場合
「譜読み」とは、楽譜に目を通すことだけでなく、「ある程度、曲がスラスラと止まらずに弾けるまでの作業」のことです。
譜読みが終わる頃に、暗譜がほとんとできていることもあります。
特に、譜読みが遅い場合は、完成までに練習に時間をかけるわけですから、ある程度弾けるようになった時には、自然と暗譜ができていることも珍しくありません。
なかなか暗譜ができない場合
譜読みが終わってもなお、なかなか暗譜ができない場合。
1段ずつ、1小節ずつなど、とにかく自分が覚えられる範囲で少しずつ覚えていきましょう。
その時に「楽譜を視覚的に見ること」「楽譜から目を離して弾いてみること」「鍵盤と指を視覚的に見ること(←慣れていないと、以外とこれが難しい)」、など色々な角度からアプローチしながら、暗譜を意識してとりくむことが大切です。
人前で弾くことは別もの
楽譜なしで弾けるようになったつもりでも、人前で弾いてみると、実は意外と弾けていない、ということがよくあります。自分一人で弾けることと、人前で暗譜で弾けることは別ものです。人前やステージで弾くには感覚的に暗譜するだけでは危険なので、確実に暗譜で弾くための練習が必要となります。
確実な暗譜をするために
人前やステージでも弾けるための、暗譜の方法を紹介します。
指づかいは毎回同じにする
もし、弾く度に指づかいが違っていては、その曲に対する指の感覚がなかなか身につきません。暗譜は視覚的に意識することも大切ですが、身体で覚えることももちろん大切です。しっかり感覚をつかむために、指づかいは練習の度に、必ず同じにしましょう。
実は、本番で思わぬところで止まってしまう原因のひとつに「いつもと違う指づかいをしてしまった」という場合があります。そうなると途端に脳が混乱し、次の音を続けて弾くことができなくなります。
他の楽器にはそれが理由で止まってしまうことは考えられないことかもしれません。
ピアノの場合、音楽の流れを止めないためにも、指づかいはとても大切な要素なのです。
緊張感の中で弾く機会を活かす
緊張感のある中で弾くと、日頃は何ともないような所で間違えたり、「ヒヤッ」としたりすることがあります。また、暗譜に自信がないところも見えてきます。
そういう時に、自信がなかったところや、暗譜ができていなかったか所には印をつけて、重点的に見直しましょう。その少し前から弾けるようにします。
その時のポイントは、再びスタートする時の指づかいまでも確実にしておくこと、です。
さらに楽譜をじっくり見て、頭に楽譜を叩きこんだり、ゆっくり弾いてみたり、その部分に多めに時間をかけて向き合います。
緊張感を作り出すためには、本番を意識して録音したり、家族や友人にお願いして、聴いてもらったりすることです。「発表会ごっこ」をしましょう。
楽譜を見直す
人前で弾くとどうしても、予期せぬところで頭が真っ白になってしまいます。どんなに一流のピアニストですら、本番でしか味わえない緊張感があると言います。一般の学習者ならなおさらです。
それを前提に、万が一止まってしまっても、どこからでも始められるようにしておきましょう。その際に、楽譜を頭の中で視覚的に覚えることも、とても有効です。
メトロノームを活用する
メトロノームを活用することで暗譜が定着しているか確認ができたり、強化できたりします。その具体的な方法を説明します。
インテンポで合わせる
「インテンポ」とは、正しい速さで、という速度に関する意味を表します。
メトロノームに合わせながら、楽譜を見ずに、インテンポで通し弾きをしてみましょう。それだけでも、思わぬところでミスしたり、暗譜が定着していないところが見えてくることがあります。
片手ずつ合わせる
片手の練習はとても重要です。両手では何となく弾けていたところでも、片手では弾けないことがよくあります。メトロノームあり、無し、両方で試してみましょう。片手ずつ練習することで暗譜が確実に強化されます。
2、3倍遅いテンポに合わせる
普段弾くテンポより、遅いテンポで弾いてみましょう。意外と難しいことに気がつくと思います。
ゆっくりで弾けないということは、暗譜が曖昧だということです。ゆっくりのテンポで確実に練習し、暗譜を強化しましょう。
1番細かい音符を200くらいのテンポで
2、3倍遅いテンポに合わせるのが意外と大変だったと思いますが、さらに細かく、ゆっくりのテンポに合わせる練習をします。
曲にもよりますが、例えば、一番細かい音符が16分音符だった場合、16音符を1拍とカウントし、200位のテンポで合わせて弾くのです。この練習は全て、響きのあるフォルテで練習するのが良いです。
不思議なのですが、筆者はこの練習をした時に、暗譜に自信が持てた感覚がありました。大学受験の時に初めて師匠に教わった方法でしたが、おかげで、試験本番に、最高に緊張している中でも冷静に弾くことができたことを覚えています。
発表会やステージ演奏などを控えている人には、個人的にはおすすめの方法です。
意外と難しいので、この練習は楽譜を見ながらやってみてもいいと思います。
でも楽譜なしでできたら、強いですよ!!
まとめ:本番にも使える、ピアノの暗譜方法
ここまでピアノの暗譜方法を説明しました。
一人で暗譜で弾けることと、人前やステージで暗譜で弾けることは別ものです。人前で弾くとなると、さらなるエネルギー、準備、練習が必要となります。
その準備のために、本番前には必ず「発表会ごっこ」をして、一人の練習では感じられない、緊張できる場を作りましょう。そこで暗譜ができていなかった所には楽譜に印をつけて、重点的に暗譜の強化しましょう。その際、指づかいをしっかり確認することも大切です。
メトロノームを使っての練習も効果的です。具体的には以下の4つです。
①インテンポで
②片手ずつで
③2〜3倍のゆっくりなテンポで
④1番細かい音符を1拍でカウントし(←超ゆっくりです)、フォルテで
また、頭が真っ白になることを前提に、楽譜のどこからでも始められるように、楽譜を視覚的に捉えることも大切です。もちろん、指づかいも、セットですよ。
暗譜に不安があると、せっかくのステージが台無しになってしまうかもしれません。それはそれで、成長するためには必要な経験となることもありますが、できる限りのことは準備して、本番に挑みたいよね。
筆者にとっても、暗譜は永遠の課題です。ただ、緊張も含めて、これからもピアノを楽しんでいけたらと思います。皆さんにとってもピアノが人生を豊かにするものであるよう、願っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。