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ピアノのミスタッチ〜原因を知って、ミスを減らそう。

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ピアノのミスタッチ。聴いている人にはすぐに分かってしまうので、できるだけ減らしたいものです。

筆者自身、ミスタッチの多さにとても苦労してきました。長年、楽譜に忠実に、長時間ひたすら練習することでピアノは必ず上達する(→おのずとミスが減る)と信じてきました。しかし残念ながら、私の場合は長時間の練習しても、大事な場面でのミスが減らなかったのです。

ある時、ミスタッチを減らすことにつながる練習方法を偶然に知りました。ミスを減らす目的でその練習をしたわけではなかったのですが、結果として楽譜を見てピアノを弾くことが、以前よりもかなり楽に感じるようになったのです。

もちろん、ミスタッチの原因は何か、一概には言えません。練習回数を重ねればある程度は解決することかもしれませんし、一方、練習ではちゃんとできていたのに、少し緊張すると思わぬところでミスをしてまうということもあると思います。

ピアノを弾く人のレベル、曲の練習期間、曲の完成度など、条件が違うと対処法は異なりますし、プロのピアニストでもミスタッチがゼロになる訳ではありません。

ただ、少しでも減らす方法が分かれば…ピアノを弾く人にとって共通の想いでしょう。この記事ではミスタッチをしてしまう原因とそれを減らす方法についてお伝えします。

もくじ

鍵盤の感覚が身に付いていない(超初心者向け)

このセクションではピアノを始めたばかりの人向けに説明します。

手元ばかり見てしまう場合

ピアノ初心者は、お子さんでも大人でも、どの鍵盤に指を置くべきかまだよく分かっていない、ということがあります。つまり、鍵盤の感覚が身についていないと言えます。

たとえ弾くべき音符が頭で理解できたとしても、脳で捉えた音と手の動きが一致していないために、手元を見ないと弾きたい音に指がいかないのです。お子さんはまだ手が小さいこともあり、隣の音ですら距離が長く感じてしまいます。

ピアノの演奏において、指先の感覚はとても大切です。その感覚が育たないと、譜読みに時間がかかります。また、楽譜と音の関係を把握する力が伸びないので、理論を身につけることも難しくなります。

パソコンには「ブラインドタッチ」という言葉があります。ピアノについても手元を見ずに弾くことは、このブラインドタッチの感覚に近いかもしれません。パソコンは訓練すれば、だいたいの人がブラインドタッチをできるようになりますし、訓練しなくても、常にパソコンを使っていればどこに何のキーがあるか感覚で分かってきます。

つまり、ピアノも鍵盤に触れる回数が増えれば、近くの鍵盤は手元を見ずに弾けるようになるのです。

ただし、パソコンはキーによって指が決まっていますがピアノは決まっていません。ピアノは鍵盤が88鍵盤もあり、パソコンと比べると押さえる数が多いので、当然かもしれません。そこがピアノの難しいところでもあります。

手の感覚だけで鍵盤を探す練習

ここで、手の感覚だけで鍵盤を探す練習を紹介します。ゆっくりでいいので、手を見ないで指を動かしてみましょう。

①右手で、ドの音に1の指を置く(ここは手元を見てよい)

②手元を見ずに、2–レ、3–ミ、4–ファ、5–ソというように指を置き、何度も弾いてみて、感覚に慣れましょう。尚、音を出す時に常に、ドレミを声に出して言うと、耳の訓練にもなります。

③次にドの音を基準に、ド→レ、ド→ミ、ド→ファ、ド→ソ、と弾いてみる…

それが出来たら、次はレの音を基準に他の音を弾いてみる…など手元を見ずに色々なパターンを弾いて、さらに感覚に慣れましょう。指先、耳、脳の3つに働きかけます

④左手でも、上記の①〜③をやってみましょう。

⑤隣同士に並んだ音をミスなく弾けることは重要な感覚です。隣同士の音に慣れてきたら、少しずつ「離れた音の鍵盤感覚」も身につけるとよいでしょう。

このように、基準とする場所に指を置いたら、後は感覚で鍵盤の位置が分かるようになると、ピアノを弾くことがスムーズになり、ミスタッチを減らすことにつながります。

練習不足、またはテンポが速すぎる

レッスンまでにある程度、練習していったつもりでも、先生の前で弾くと沢山ミスをしてしまう、ということはありませんか?自分一人で練習している時はもっとできるのに…

結論から言うとそれは、練習回数がまだまだ足りていないということになるのですが、言いかえると「今の段階では、そのテンポが速すぎる」ということです。

練習方法として、自分の声でゆっくりめにカウントしながら弾いてみましょう(下記参照)。声で数えながら弾く、という行為は難しく感じるかもしれませんが、ゆっくりのテンポであればできるはずです。逆にこれができないということは、正しく弾けていない可能性が高いということです。なので、その状態でテンポを速くしたとしても、正しく弾けるまでに、かえって時間がかかりますし、むしろミスタッチが増える原因になってしまいます。

<カウントしながら練習する方法>

カウントする時、数の後に「ト」という言葉を入れて細かく数えるようにします。まずはピアノを弾かず、声だけで数えてみましょう。どの数字も同じ幅で刻むことが大切です。速くなったり、遅くなったりしないように気をつけます(メトロノームに合わせてカウントしてもOK)。

4/4拍子の場合
1ト 2ト 3ト 4ト

3/4拍子の場合
1ト 2ト 3ト

声で正しくカウントできるようになったら、ピアノを合わせます。止まってしまったり、不安定になったりした時は、もっと遅いテンポでやるように心がけましょう。

<メトロノームに合わせる>

声のカウントで練習できるようになり、もう少し速いテンポでやる場合はメトロノームで合わせてもよいでしょう。この時、「少し遅いかな?」と思うくらいの速さを設定することがコツです。そうすることで、ハードルが下がり、より早く、正しく弾けていない部分に気がつくことが出来ます。

このように、ゆっくりでもノーミスで弾く成功体験を指に覚えさせましょう。そうすることで、確実に上達します。それさえ出来れば、その後、テンポを少しずつあげることはそれほど難しいことではありません。

ピアノの基礎練習が足りていない

曲の演奏に必要な基本的な動きが日頃から身についていれば、無駄なミスタッチをすることは少なくなります。前述で「鍵盤の感覚」について触れましたが、このセクションではもう少し経験のある人向けに鍵盤の感覚を身につける方法についてお伝えします。

その練習方法の一部には、スケール(音階)アルペジオオクターブの練習などがあります。これらの練習はハノンの「ピアノ教本」に楽譜が載っていますので、ぜひ毎日の基礎練習として行うことをオススメします。

鍵盤の感覚は、弾くことで得た筋肉の感覚からの情報を、脳に蓄積させることで身についていきます。これを意識的に行うとよりしっかりと脳に認知させることが出来ます。最初のうちは、手元を見ることも必要です。見ることで目からも情報が入り、より鍵盤の感覚が認識できるようになります。そのうち、手元を見ずに弾けるようになると、楽譜を見ながら曲を弾く時にミスタッチが減る可能性が高まります。もちろん、音が跳躍したり、必要なところでは手元を見てもOKです。

ピアノの基礎練習についてはこちら↓
ピアノ上達ヘの道!ハノンを効果的に活用する方法

指の筋肉がついていない

特に黒鍵を弾いた時、鍵盤の上で滑ることがあります。そこだけを何十回と練習しても、滑らずに弾ける確率がなかなか上がらない…それくらい難しい曲に出合うこともあります。特に黒鍵は白鍵よりも細いため、はずしてしまうのは仕方ないことかもしれません。そういう時にどのような練習が効果的なのか、著書や教則本には意外とその対策法が説明されていません。

筆者が昔、ピアノの師匠に「練習を重ねても鍵盤の上で滑る」ことについて相談し、理由を尋ねると「指の筋肉不足」と言われました。その対策として始めた練習方法は、ハノンの指練習を黒鍵で弾くことです。

ハノンの第1部には指の粒を揃えるための練習が沢山あります。本来、第1部は全てハ長調なのですが、練習として1曲選び、全て半音上げて(♯をつけて)、嬰ハ長調(変ニ長調)で弾くのです。

ハノン 第1部1番を例にとります。原曲はこれ↓(ハ長調)です。

この楽譜を半音上げると、下の楽譜のようになります。楽譜に説明があるように、ハノンの教本でも、このように黒鍵の練習を勧めています。

ただこのページは、第1部に入る前のページにあり、しかも練習の効果について特に触れていないので、誰もがスルーしてしまうような存在感でしかありません…実際、私も最近までこのページに黒鍵の練習方法が記載されているなんて、気が付きませんでした(師匠のオリジナル練習法だと思っていた)。

しかし、非常に効果のある練習であることは、皆さんにお伝えしたいと思います。

ちなみにハ長調を半音上げると理論的には上の楽譜のように「嬰ハ長調」となりますが、「嬰ハ長調」は一般的には「変ニ長調」として表されます。ですので、教本の中の他の番号を練習する時も、変ニ長調として練習すると弾きやすいと思います。

ちなみにこういうこと↓ですね。

この練習は、黒鍵ばかりで非常に弾きにくいので、リズム練習をひたすらやること、それが効果的です。そうすると随分、指が自由にコントロールでき、黒鍵に慣れてきます。私の場合は、これをしばらく続けるうちに、黒鍵の上でミスタッチする回数がかなり減りました。今でもよくこの練習をします。

ちなみに、リズム練習についてもこちらの記事で説明しています。
ピアノ上達ヘの道!ハノンを効果的に活用する方法

意外と知られていない、効果的なミスタッチ克服法とは?

楽譜を見ながら弾いていても、緊張する場面でミスをしてしまうことがあります。楽譜を見て弾くとはいえ、充分な時間をかけて準備をしているはずなのになぜ、ミスタッチをするのでしょうか?

実は筆者もそれについて長年、悩んできました。本番がある度に長時間練習していましたし、練習では間違えずに弾けていたとしても、本番で思わぬところでやってしまうのです。しかしその理由が「準備不足」以外には思い浮かばず、「次こそは完璧に!」と、さらなる練習量によって解決しようとしてきました。

ある時、練習している曲とは直接関係のない、とある練習を続けたところ、以前に比べて、指が正しい鍵盤の位置に導かれる感覚がありました。ミスタッチを減らすためにそれを行なったわけではなかったのですが、結果として、楽譜を見る→ピアノを弾く、その行為がとてもやりやすく感じたのです。それがこの記事で1番伝えたかったこと、「音感を鍛えること」です。

「音感」とは、音に対する感覚のことで、音の高低、音色などを聞きわける能力のことを言います。

音感を鍛えることで、ピアノを弾く行為がやりやすく感じるようになった理由のひとつには、耳と脳と身体をつなげる作業が音感を鍛えることで備わったことが考えられます。その作業がずれていると、長時間練習しても、非効率的な練習になってしまい、ミスタッチを防ぐにも限界があるのだと思うのです。

例えば、英語の文法を理解していないのに、難しい英文をくり返し音読しても自分の言葉として喋れない、それと似たような感じだと思います。

小さい頃から、ソルフェージュのレッスンなどをしっかり受けて、音感が身についている人にとっては、この記事は参考にならないと思います。そもそもそういう人は、ミスタッチに悩まされることがあまりないか、悩んだとしても、もっと上の次元だと考えられるからです。

しかし、調性の感覚が少しでも自信がない人にとってはぜひやってみる価値が高い方法です。

たとえミスタッチをすることになっても、同じ和声の音を弾くことによるミスは、聴いている人にはあまり違和感はないはずです。音感が鍛えられると、万が一、ミスしそうになってもその曲の調の音を弾くか、その小節の和声を弾くなど、ごまかせる余裕さえ持てます。

つまり、ミスはミスでも、「より聴衆からバレにくいミス」程度に済ませることもできるのです。そうなると、次の音からすぐに立て直せますし、弾いていて「ヒヤッ」とするようなことも減らせることになります。

それは実力の底上げにもつながります。音楽の理論という分野にも関わってくることです。

つまり、音感を鍛えることで、大切な場面でのミスタッチを減らすことができるようになりますし、練習時間も減らすことができるようになります。このように「音感を鍛える」ことは、ピアノ学習者にとっていいことだらけなのです。

一般的にはソルフェージュのレッスンを受けると音感が鍛えられます。しかし、レッスンに通うとなると、お金も時間もかかってしまいます。そこで、自分でできる方法のひとつとしては、前述の「基礎練習」で挙げたように、スケール(音階)とアルペジオの練習をやることです。あとは筆者がやっている方法があるので、それを参考にどうぞ。関連記事はこちら↓

手っ取り早く鍛える、音感トレーニング

暗譜の練習が充分でない

ピアノの発表会や、ステージでの本番など、人前で暗譜で披露する機会もあると思います。もちろん、そういう場合は楽譜ありの本番よりも一層、準備に時間をかける必要あります。その準備が充分でなければ、緊張する場所ですし、ミスタッチをしてしまいます。逆を言えば、練習が充分であればあるほど、ミスタッチは減らせる、と考えられる訳ですが、そんな単純なことでは片付けられないところが、ピアノを人前で弾くことの難しさです。

単旋律の楽器と違い、ピアノはメロディー以外に和音やバスの音、打楽器、など多くの役割をひとつの楽器で弾くので複雑な動きをします。ただでさえ緊張のあまり、急に頭が真っ白になることもあります。

また、いつもと違う指づかいをしてしまうだけでも、調子が狂ったり、その後の流れが分からなくなったりする原因となります。

そんな暗譜必須のステージの恐ろしさは、経験した人でないと分かりません。そこからくるミスタッチの解決策としては、暗譜する方法を色々試すなどをして、対策を練ると良いでしょう。

その他のミス

それ以外で考えられるミスについて説明します。

跳躍が長い

前の音と次の音に距離がある場合。距離が長いほど、ミスタッチをする可能性が高まります。そういう時は、距離のある2つの音を、何度も弾いて、手にその距離の感覚を覚えさせましょう。視覚的に捉えることも大切です。特に次の音の着地点を早めに認識し、気持ち的にも余裕を持って準備が出来るよう、練習しましょう。

身体や腕が力んでいる

思わぬところでミスタッチが発生する理由に、身体や腕が力んでいる、ということがあります。ピアノを演奏する上で、自然な呼吸が出来ていないと、音楽の流れが止まり、ミスタッチにつながってしまうのです。

難しいパッセージではついつい、力が入ってしまいそうになりますが、ピアノを弾く時は、常に身体はリラックスし、上手に呼吸をして、「歌」を感じるようにしましょう。

突発的なミス

暗譜をして人前で弾く本番では、充分な練習量で準備をして挑むものです。しかし、本番でしか味わえない緊張感の中では、暗譜をしっかりしていたとしても、突発的にミスをしてしまうことがあります。ただ、その次元でのミスタッチは、一流のピアニストですらあり得ることです。悔いのないだけ練習をしたら、本番で起きてしまうミスについてはわりきりましょう。

大切なのはその後の音楽の流れを止めないことです。あとは少なくとも、曲の出だしと、最後の音だけは外さないように、心がけましょう。そこはとても目立つところです。外せないポイントは、特に意識して練習するようにしましょう。

それ以外は、音楽を感じて魅力的に演奏すれば、多少のミスタッチは意外と気にならないものです。

まとめ:ピアノのミスタッチ〜原因を知って、ミスを減らそう。

ここまでミスタッチについて説明をしました。ミスタッチの原因は、ピアノを弾く人のレベル、曲の練習期間、曲の完成度、などによって様々です。まとめると次のようになります。

①鍵盤の感覚が身についていない。
②その時点で、弾くテンポが速すぎる。
③基礎練習が足りていない。
④指の筋肉不足(特に黒鍵を弾く時)。
⑤音感が身についていない。⇦意外と見落とされがち
⑥暗譜の練習が充分でない。
⑦身体や腕に力が入っている

時間をかけて練習すれば解決できるものもあれば、どれだけ時間をかけても、本番で上手くいかないことがあります。そんな中で「音感を身につける」ことは、ミスタッチ防止にとても効果的な技術です。音感を身につけなくても、ピアノが弾ける人はたくさんいるので、意外と見落とされがちなのですが…

筆者はこのことを知らなかったせいで、長年、苦労してきました。だからこそ、知らなかった方にはぜひお伝えしたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。