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ピアノの効果

ピアノ学習が勉強に与える効果

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昔からピアノは、子どもの教育によいと言われてきました。「ピアノが弾ける人は勉強もできる」ということを耳にしたこともあるのではないでしょうか。近年では、脳科学的にも、ピアノが子どもの脳に与える影響が証明されています。ここではピアノを習うことが勉強にもいい効果をもたらすことについて、脳科学的な観点から、紹介します。

もくじ

ピアノは頭がよくなる?

ピアノは楽器の王様と言われます。オーケストラの音域以上の広音域を担う楽器であり、メロディー、和声、リズム、オブリガード、などを1つの楽器でできてしまいます。両手それぞれに複雑な動きをさせ、さらに、ペダルを使うようになると、足にまで動きが必要となります。動きが複雑である分、脳を刺激しやすく、他の習い事をさせた場合と比べても、脳の効果が大きく向上すると言われています。

ピアノを習っている子どもの例

筆者の学生時代を振り返ると、中学校時代にピアノを習っていた同級生は、ほとんどが学区内か私立のトップ高校に合格していました。全員ではなかったかもしれませんが、私の覚えている限りではそうでした。

また、ピアノを教えるようになってからのこと。高校受験を機にピアノのレッスン通いをやめてまうことも多い中、数年前に教えていたピアノの生徒は、高校受験中も休まずにレッスンに通っていました。そして見事に合格したのは、県内のトップ高校でした。

そしてもうひとつ。高校(進学校)で音楽の授業を教えていた時にも、思いあたるエピソードがあります。ある男子生徒がいつも授業前に音楽室のピアノを楽しそうに弾いていたのですが、ショパンのエチュードなど、音大を目指すレベルの曲でした。別の先生によると、その生徒はかなり成績がいい、とのこと。部活も運動部で忙しいのに、かなり器用に時間を使えてる印象を受けました。

ここで挙げたのはほんの一例ですが、ピアノが上手な子は成績がいい、というのはだいたい当てはまるような印象があります。

東大生の小学生時代の習い事

ピアノを習っている子どもの学力は高い、というのはデータ上でも情報があります。難関大学の学生にピアノ経験が高いことも有名な事実です。

東大生の2人に1人はピアノを習った経験がある、という調査結果もあります。さらに、東大生を対象に、小学生時代の習い事が東大合格に役立ったかどうかの「貢献度」についての調査が行なわれました。

その結果、ピアノは非学習である学習塾と英会話を除いた習い事の中で、習字の次に高い貢献度でした。つまり、小学生時代にピアノを習っていた現役東大生の多くは、ピアノの経験が東大合格に役立ったと考えているということになります。

ショパンコンクールの出場者の中には…

また音楽コンクールの最高峰、国際ショパンコンクール2021年の出場者の中には、東大卒・大学院修士課程卒と名古屋大医学部医学科の学生がいるそうです。その異色の高学歴にはさすがに驚きました。ショパンコンクールに出場するだけでも、狭き門なのに、ピアノ以外のことにも長けているなんて…!びっくりです。

ピアノが脳にもたらす効果

ピアノを習わなかったとしても、同じだけの成績を残せていたのでは?と聞かれたら、そうではないとは言いきれません。「同一人物が、ピアノを習った場合と習わなかった場合」、という実験ができれば証明できるかもしれませんが…。それは不可能ですので、ここからはもっと客観的な「脳科学の観点」より、ピアノが脳にもたらす効果について紹介します。

脳が活性化し、頭がよくなる

ピアノを弾くときは、メロディー、和声、リズム、テンポ、など様々なことに集中する必要があります。譜面を目で追いながら、一時的に覚えて、両手それぞれが、複雑な違った動きをします。これだけ多くのことを、自然に行っています。

これは他にはない、非常に高度な作業です。つまり、ピアノをやることで、自然にすべての脳の機能を高めていけるというわけです。そういう理由から、ピアノは、脳の広い領域が同時に活性化されると言われます。そして脳の構造までも変えてしまう効果もあり、子どもの教育にとても効果があります。

ワーキングメモリーの機能が鍛えられる

ピアノをすることで、「ワーキングメモリー」の機能がよくなるとも言われます。ワーキングメモリーとは作業や動作に必要な情報を記憶・処理する能力のことです。この機能は会話、読み書き、計算など日常のあらゆる判断や行動に必要となります。ですので、機能が弱いと様々なことに支障をきたします。練習の時間を増やせば増やすほど、機能的によくなるそうです。

運動能力が上がる

ピアノは考えながら手を使うので、脳と手の運動部分をつなぐ回路も鍛えられます。継続することで、脳の機能がまんべんなく鍛えられ、学力だけでなく運動能力にまでよい影響を及ぼすと言われます。

人間性知能が上がる

ピアノを習うことで、問題解決力、主体性、協調性、思いやりなど、人間らしいと言われる能力が高くなります。他の習い事をやっている子よりもこの能力が高いことが、脳科学の研究で分かっています。

将来、認知症を発症しにくい

アメリカの研究では、幼少期からピアノを習うことにより、将来の認知症リスクを抑えることができる、ということも分かっています。ピアノを弾くことそのものが「脳トレーニング」になっていて、ワーキングメモリーの能力も発達し、脳全体が活性化するためだと考えられます。

曲を仕上げるまでの過程で身につくこと

ピアノをやることそのもので脳トレとなりますが、曲を仕上げる作業をくり返すことによって、養われる能力もあると考えられています。それらの能力について、紹介します。

集中力・持続力

1曲新しい曲を仕上げるためには、時間と努力が必要です。まず完成までの目標を設定し、先の見通しを立て、譜読みをします。ピアノの譜読みにはとても時間がかかるので、集中力が必要です。また、楽曲について正しく理解し、内容を深めながら弾きこみます。その際、持続力・忍耐力が必要ですし、続けることで、さらにその力が身についていきます。

想像力・表現力

楽譜上の音符をピアノでただ再現するだけでは、音楽とは言えません。譜面にある情報を全てを読みとりながら、音楽的な表現力が出来るところまで追求することが求められます。

ピアニストの演奏を聴くと、楽譜だけでは読みとれなかったイメージが湧いたりします。楽曲分析をしたり、作曲された時代背景などの情報も取り入れたりすると、さらにその曲への理解が深まります。そして自分なりにどう表現するか、考える。そして音で表現する。正解はひとつではありません。迷いながら、自分なりの表現にしていく…そうやって深めていくことで、想像力、表現力が養われていきます。

記憶力

最後の仕上げとして暗譜をします。その時、ただ機械的に覚えるのではなく、豊かな響きで、どのように表現するかを考えながら、記憶します。その作業により、脳にとてもいい影響を与えますし、続けることで記憶力の向上にもつながります。

達成感

ピアノは、あらゆる音楽的な要素が1つの楽器で表現できる楽器です。その分、1曲を仕上げるまでに、他の楽器よりも大変な作業となり、時間も多く必要となります。ただし、時間をかけ、その壁を乗り越えた分だけ、仕上げられた時の達成感は大きなものとなります。それによって、脳が活性化される「ドーパミン」が分泌され、脳の機能が高められます。

時間管理が上手になる

ピアノは他の楽器と比べて音符の数が、とても多く、譜読みをするだけでもかなりの時間を要します。だからといって、学校生活や他の習い事、部活などで忙しい中、ピアノの練習ばかりに時間をかけるわけにはいきません。

練習時間以外で、他のことが終わるよう、時間をやりくりする必要があります。それによって時間の使い方が上手になってくると、ピアノも上達しますし、同時に勉強や他の面でも、役に立ちます。

まとめ:ピアノ学習が勉強に与える効果

ここまでピアノ学習が勉強に与える効果について紹介しました。まとめると次のようになります。

両手がそれぞれ同時に複雑な動きをさせるピアノは、脳科学的に見ても、脳を刺激しやすく、脳機能が大きく向上することが分かっています。

・頭が良くなる
・ワーキングメモリーが高まる
・人間性知能が高まる
・運動能力が鍛えられる
・将来、認知症が発症しにくい

それは、他の習い事をさせた場合と比べても明らかということです。

また、ピアノは広音域で、奏でる音数も多いため、新しい1曲を仕上げるまでに、多くの時間と努力が必要となります。その作業をくり返すうちに、次のことが身につけられると考えられています。

集中力、持続力、想像力、表現力、記憶力、達成感、時間管理能力

弾くことそのものが脳トレとなる上に、上手になる段階で多くの能力を体得できるピアノ。勉強や他の面でもそれを活かすことで、物ごとが効率よく進んでいきます。そのような沢山の理由から、「ピアノが弾ける人は勉強もできる」ことにつながっているのだと思われます。

ピアノを学ぶことは、良いことだらけです。習い事を始めるなら、ぜひピアノを選んでみませんか。続けた先には、きっとピアノ以外の可能性も広がっていくと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。