ピアノは楽器の王様と呼ばれます。1台で、オーケストラが演奏できることと同じようなことが表現できる楽器です。
可能性が大きい分、上を目指せば、どれだけでも上がいる世界。
クラシックで有名な曲を弾こうと思えば、ピアノを始める年齢にもよりますが、最低でも10年くらいはかかります。長い年月ですね。
初心者向けにアレンジされた曲や、やさしめのポピュラー音楽であれば、まじめに練習すれば数カ月や数年で弾けるようになる人もいます。
いずれにしても、まじめに練習すること、それを何年も続けないと、思い通りに弾けるところまではいかないでしょう。
それほどまでにピアノが難しいと言われるのはなぜでしょうか。
この記事では、ピアノが難しい理由と、少しでもハードルが下がるための対策方法について説明します。
もくじ
ピアノが難しい理由
楽器それぞれに、難しさがありますが、ピアノはとにかく、長年練習をし続けてやっと形になるもの。他の楽器よりも大変な面が多い楽器です。その理由を説明します。
音楽の要素全てを1台で表現できるから
弦楽器や管楽器、また声楽など、ピアノ以外の編成で演奏しようとすると、弦楽四重奏であれば4人、吹奏楽やオーケストラなどはさらに大人数で演奏することは珍しくありません。
バンドでも、編成は様々ですが、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、時にはキーボードなど、やはり複数の楽器が集まります。
このように1つの音楽を完成させるために、大人数での楽器編成はよくあります。
一方、ピアノはどうでしょう?もちろん2人で演奏する連弾だったり、声楽や楽器の伴奏として共演したりすることはありますが、基本は独奏です。1人体制で充分に完結する楽器は、ピアノ以外ではなかなかありません。あとは、ハープくらいでしょうか?
音楽の主な要素はメロディー、和声、リズムです。時々、副旋律も加わります。
そういった様々な音楽の要素を通常は、1要素につき1つの楽器で担うものです。1つの要素を複数の楽器で奏でることすらあります。
一方、ピアノは全ての要素を1人で担うのですから、それは大変な作業となって当然ですよね。
そしてその全てを、1つの楽譜に表すことになるのですから、ピアノの楽譜は他の楽器に比べ、とても音符の数が多いこともうなずけることです。必然的に、譜読みが大変になります。
それでいて、楽譜の中には、ここがメロディーですよ、とかバスの役割ですよ、とか、副旋律ですよ、とかわざわざこと細かには書かれていませんから、そういう音楽的な要素を上手に読みとる力も必要となってくるわけです。
1人で担うから高度なテクニックが必要
前述のように、ピアノは「音楽的な要素を全て1人で担う」ため、左右の手をフルに使ったとしても間に合わないほどのテクニックが必要となります。
特に難しいと感じるのは、以下のテクニックです。
音の跳躍…ひとつの手で離れた音を弾くこと
指こえ/指くぐり…親指の上を他の指がまたいだり、親指が他の指をくぐったりすること。
和音やオクターブを掴む…沢山の音を同時に弾いたり、オクターブを連続で弾いたりすること。
さらには、テンポが速くなったり、上記の内容が複合的に合わさったりすると、ますます高度なテクニックとなってしまうのです。
クラシック出身者は和声の勉強ができにくい?
ポピュラー音楽を学ぶ人は「コード」を勉強します。「コード」は和音の英語読みですが、ジャズなど、アメリカ由来の音楽やポップス系の音楽に用いられるものです。
一方で子どもの習い事として習うピアノ教室や、大人でも基礎からピアノを学ぶ人は、クラシック音楽を中心に勉強します。
クラシック音楽の中で和声を勉強する時には「コード」は使いません。代わりに、和声記号と言って、ローマ数字で和声を表します。
筆者の個人的な感想かもしれませんが、和声の仕組みや音楽理論を学ぶ際、和声記号よりも断然コードが理解しやすい!
クラシック出身者はコードを勉強しないので、和声のことを理解せずにピアノを弾いている人は意外にも多いのです。
基本的にクラシックピアノの楽譜は、弾く音は全て大譜表の中に記譜されています。
対して、電子オルガン(ヤマハでいうと「エレクトーン」)やギターの楽譜は和声の要素はコードで書かれますよね?そういう楽器もあるわけです。
ピアノで弾く音の数はバイオリンやフルートなどの旋律楽器に比べて、比較できないほどの数があるのに、和声などを理解する機会も少ないうちピアノ譜を弾いたら、そりゃ難しく感じるのは当たり前のことです。
音数が多い分、ただでさえ弾くので精一杯になることが多いピアノ。意識して勉強しないと、音楽的な要素を無視した演奏になってしまう、それも難しい理由のひとつです。
「分からないこと」って難しく感じますよね?音楽的な要素がきちんと理解できるようになると、ピアノの難しさは軽減できるのです。
ピアノの難しさを軽減させる方法
先ほど、答えは言ってしまいましたが(笑)、あらためて説明します。
何度も言いますが、ピアノは音数が多いため、どんな工夫をしても、他の楽器より難しい。上手になるために、練習は避けて通れません。
しかし、正しく楽譜を読むことが出来れば、ピアノの難しさを減らすことは可能です。
それについて、説明します。
音楽の大切な要素を理解する
くり返しになりますが、ピアノ譜は、メロディー、和声、リズム、時々副旋律…それらが全て1つの楽譜に表されています。だから複雑に見えますし、弾くだけで、大変に感じると思います。
それを限りなくシンプルに考えてみましょう。
メロディーと和音、それだけを抜き出して弾いてみるのです。難しければメロディーだけ、和音だけ、でOK。
そうすると、とっても簡単になりますよね?大切なことは今「抜き出して弾いてみた部分」、それなんです。
近現代に作曲された曲のように、構成そのものが複雑な曲もありますが、多くの曲は「メロディー」と「和声」があれば、その曲の雰囲気は伝わるもの。
実際の曲にはメロディー、和声に加えてリズムや副旋律が加わることで、華やかになります。その華やかさが、難しく感じさせるひとつの要因かもしれませんが、惑わされないでください。
「メロディー」と「和声」が理解出来ると、より大切に表現すべき音や、少し音色を変えるべき音、はっきりとしたタッチで弾くべき音、などが明確に分かってきます。
それを理解して弾くのとそうではない場合では、弾きやすさも表現力にも、差が出てきます。
たとえば、バイオリンであればメロディーライン、チェロは伴奏の一部を担当…そのように役割が明確なので、「メロディー」「和声」の練習をする必要はないわけです。
ピアノは色々な役割を同時に行なうわけですから、そうはいきません。
曲を聴いて分かったつもりにならずに、大切なところは、抜き出して弾いて、理解しましょう。
音符が大きい楽譜を選ぶ
ピアノ譜は音符が多いので、譜面が小さいと、とても読みにくいです。沢山ある音符のうち、1音でも読みまちがえるとハーモニーが変わってしまうこともあります。
全く同じ曲であっても、音符が大きな楽譜だと読みやすさが全然ちがってきます。
大きな音符の譜面が存在しない場合は、拡大コピーをするという方法もあります。
少し手間はかかるかもしれませんが、その後の長時間の練習が、ぐっとやりやすくなりますよ。
また、楽譜が読める人も、間違えやすいところには「ドレミ」をカタカナで書いてもOK。それだけでも、難しさのハードルは下がります。
ピアノ未経験者が2週間で伴奏曲を仕上げた話
筆者の知人のお子さん(小学校6年生)の話です。
そのお嬢さんは、卒業式で歌う合唱曲の伴奏のオーディションに、ピアノ未経験であるにもかかわらず、立候補したそうです。もちろん楽譜は読めません。
知人(ママ)が、ピアノの伴奏譜をコード譜にアレンジして、お嬢さんにも分かるようにしてあげたところ、なんと、たった2週間でオーディション当日までに弾けるようになったそうです。
ピアノのテクニックはないはずなのに、驚きですよね?楽譜の読みやすさは、ピアノへのハードルを下げる方法につながることを実感した出来事でした。
まとめ:ピアノが難しいのはなぜ?その理由と対策方法。
ここまで、ピアノが難しい理由と、少しでもハードルが下がるための方法について説明しました。
ピアノは音楽の大切な要素、メロディー、和声、リズムなどを全て1台で表現できる楽器です。
そのため、音符の数は多いし、あらゆるテクニックが必要となります。
ピアノをそれなりに弾こうと思えば、決して、練習は避けては通れません。
しかしその中でも、難しさを軽減させる方法がありました。
それは、音楽の大切な要素のうち、さらに「メロディー」と「和声」、これを理解することです。実際に抜き出して弾いてみることがコツ!
これを身体で理解して弾くと、どの音を表情たっぷりに歌い、どの音を控えめにまたははっきりと弾くか、など全体像がみえてきます。
それによりぐっとピアノへのハードルが下がります。何よりも、いい演奏への近道になります。
ピアノは難しい分、弾けるようになると達成感も大きいですし、自然と脳トレになる、という嬉しいおまけ付きです。
楽譜が読みにくい時は、拡大コピーをしたり、自分なりに楽譜に分かりやすく書き込みするのもおすすめです。
この記事がほんの少しでも、ピアノをより身近に感じるためのヒントになれば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。