ピアノは子どもの習い事として昔から定番ですし、幅広い年代に人気があります。そのステキな音色という以外に、大きなメリットがあることでも知られています。ひと言でいうと「脳の発達に有効である」という、脳科学的に証明されている内容によるものです。
脳を活性化する、ということは大人こそ必要な効果なのではないでしょうか。ここでは大人こそピアノを始めるべき理由を紹介します。
もくじ
ピアノが脳にいいと言われる理由
脳科学の観点から、ピアノを弾くことが脳の発達を促すということが分かってきました。その理由について紹介します。
使わない指を使うことが脳を刺激する
指を使うと脳の広い範囲を刺激する、ということはよく言われることです。ピアノをやると、日常生活で使う機会の少ない薬指・小指を使います。ピアノを弾くときも、この2つの指は動きが悪いのですが、普段使わない指を使うことで、脳が活性化するという脳科学的な実験結果があります。たとえ思うように弾けないとしても、よく動く指を動かすより、脳にはとても良いそうです。
ピアノは同時に多くのことが求められる
たとえば、パソコンも全ての指を使いますが、ピアノは同時に両手で違う動きをします。ピアノは、弾きながら、目は楽譜を追います。音の高さ、リズム、指づかいなどいくつもの情報を同時に読みとっていきます。先を追いながら、奏でているメロディーや和声を耳で聴こうとします。音程の幅を正しくとることにも気を配る必要があります。
このように、ピアノを弾くというのは、自然と多くのことを同時に行っています。これは他にはない、非常に高度な作業です。つまり、ピアノをやることで、自然にすべての脳の機能を高めていけるということです。脳の構造までも変えてしまう効果もあり、子どもの教育にとても効果があります。そしてそれは、大人の脳にも同じことが言えるのです。
大人こそピアノ
子どもの能力を伸ばすには、ピアノは早いうちから始めた方がよいと言われます。実際、他の習い事と比べても、早いタイミングで始めるお子さんが多いです。ではその時期を逃した場合は、ピアノを学ぶことに意味はないのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。むしろ年を重ねた人だからこそ、ピアノを学習するメリットがあります。その理由をいくつかに分けて紹介します。
新しいことに挑戦するということ
好きなことをやると、「ドーパミン」が多く分泌され、幸福感や意欲を感じるようになります。ドーパミンとは、脳の1番の栄養素で、脳が刺激を受けると分泌されるものです。新しいことに挑戦することも、これまで使っていなかった脳の部分を使うことになり、ドーパミンが分泌され、脳が活性化すると言われています。
一般的に、健康な人でも、20代後半から認知機能は落ち始めると言われています。さらに年を重ねるにつれ、思考や判断、コミュニケーションなどの能力も落ちてきます。昔から知っていることや、確実にできることだけをやっているだけでは、人間の体は老化とともにドーパミンを作る細胞が減ってしまいます。好奇心がかき立てられる趣味や習い事には、こうしたことを抑える効果があります。同時に脳が成長しつづけることにもつながります。
また、ドーパミンは、楽器を演奏することで分泌されるとも言われています。もし「いつかピアノをやってみたい」「ピアノを再開してみたい」と思っているのに行動に移せてないとしたら…もったいないことです。先延ばししている理由は、何でしょうか。忙しいからでしょうか。もしそうであれば、今後もベストなタイミングって、なかなかやって来ないと思います。
ピアノに限らず、チャレンジしてみたいことがあって、忙しさのせいで先延ばしにしているなら、細々とでも、今始めてみませんか。これから先、何才になっても始めるのに遅いことはありません。ただ、あなたにとって、今の脳が1番若い。きっと「やってみたい」と思った時がベストなタイミングなのです。
大人ならではの楽しみ方がある
子どもは大人にはない才能がありますが、逆に大人だからできることが沢山あります。ここでは大人だからこそできる、ピアノの楽しみ方を紹介します。
本人の意思で始める
ピアノを始めた人の大半が「親きっかけ」である子どもと違い、大人からスタートする人は、ほとんどが「本人の意思」です。あの人みたいに弾けるようになりたい、憧れの曲が弾けるようになりたい、などそう感じたことがこれまで幾度となくあったのではないでしょうか。その感情を大切にし、その意欲をぜひ形にしましょう。
経験を糧にできる
大人の皆さんにはあって、子どもにはないもの。その1つが「経験の多さ」です。人それぞれが思い出を持って生きています。曲のタイトルから想像できるイメージ、またその曲を耳にした時のイメージは大人の方が大きいかもしれません。それらを音楽的な表現力や深みにつなげていきましょう。
また昔からの憧れの曲があれば、挑戦するのもいいですね。憧れた年数、想いの深さなどは、なかなか子どもが大人に勝ることはありません。
知識や情報を増やす
取りくむ曲について、知識を増やしましょう。作曲家が生まれ育った時代背景や、作曲された時の想いなどを知ると、ぐっと身近に感じ、その曲への想いも深まります。たとえば、作曲された背景が「外国への亡命中に、祖国を思いながら作った曲」だと知ると、その曲への捉え方が変わってきませんか?情報が加わることで、演奏の表現も変わってくるはずです。子どもには理解が難しくても、大人だからこそ感じとれるものがあります。
あなたにとってのピアノとは?
ピアノを学習することが、脳の活性化につながることを認識できた今、ぜひピアノを楽しんで欲しいと思いますが、あなたにとって今、ピアノはどんな存在でしょうか?
ピアノは身近なもの
既にピアノを弾くことが、習慣になっている方。素晴らしいことです。これからもずっと続けてください。初めての作曲家やジャンルにも、チャレンジして、どんどん音楽の世界を広げてみましょう。
ピアノを始めようか、と検討中
初心者
初めてピアノにチャレンジしてみようという方。さらにはピアノの購入から検討しているという方。ピアノが手元に届くまでは、ピアノがなくてもできる練習方法があります。まずはそのトレーニングで、今できる練習をしつつ、時間をかけてピアノ選びをしましょう。
またピアノ教室に習いに行くかどうかも悩む…という方。もちろん、プロから習うことは上達への近道です。しかし、先生と合わなかったら…?続けられなかったら…?そいういうことを気にしてスタートすることをためらってしまうくらいなら、独学でもいいので始めてみましょう。今はたくさん、本やネットでの動画で初心者向けのものがあります。自分で練習しながら、ピアノ教室を探すという順番でも遅くありません。
昔、ピアノの経験あり
少しでもピアノの経験があれば、早速再開しましょう。昔の教本を、引っ張り出して復習しつつ、楽譜を読む感覚や鍵盤をタッチする感覚を、少しずつ思い出していきましょう。新しく曲集を、購入するのもいいですね。楽器店や大きな書店、図書館などに足を運んで、手にとってワクワクするような曲集を選んでみてください。
ピアノが眠っている
ピアノが家に眠っているのなら、使わないでいることはとてももったいないことです。
特にアコースティックピアノが長年眠っているお宅は、宝の持ち腐れです。ぜひ活用してください。久しぶりに使う時は、調律しましょう。最後の調律から時間が経っているのであれば、かなり狂っている可能性が高いです。調律代が多めにかかるかもしれませんが、アコースティックの楽器をいい状態で管理することはとても大切なことです。
久しぶりに日の目を浴びることは、ピアノにとっても嬉しいことですし、家にあるものを活用して脳の機能を高められるなんて、最高の環境だと思います。
長くピアノを楽しむ秘訣
せっかくピアノを始めたのに、それが続かなければ意味がありません。ここではずっとピアノを楽しんでいくための秘訣を紹介します。
練習はコツコツ
始めることそのものは簡単でも、これまで習慣の中になったことを継続するのは大変なことです。気がつけば何日もピアノを触らないまま過ごしていた、ということにもなりかねません。しかし1度習慣化してしまえば、エネルギー最小限で、取りくめます。毎日の習慣の中に取り入れ、少ない時間でもコツコツと続けましょう。
練習過程を大事にし、楽しむ
ピアノはメロディー、和声、リズム、オブリガード、など1人であらゆる音楽的な要素が表現できる楽器です。その分、1曲を仕上げるまでに、他の楽器よりも大変な作業となり、時間も多く必要となります。ただし、大変な分だけ、脳は活性化され、脳の機能を高めていくことができます。
また、時間をかけ、その壁を乗り越えた分、仕上げられた時の達成感はひとしおです。ドーパミンも分泌されます。曲の仕上がりが思ったように進まなくて、諦めてしまいそうになったときは、ぜひこのことを思い出してください。ピアノ学習は、仕上がるまでの過程そのものが、その結果と同じだけ価値があることなのです。
自分のペースで
これまでのピアノの経験年数は人それぞれ違います。ネットの動画などで、ピアノにおける様々な参考動画があると思います。目標にすることはいいことですが、自分のペースで進めましょう。自分が弾きたいと思う曲、また今の自分が無理せずに弾けそうなレベルの曲を選びましょう。楽しく取りくめると、ずっと続けられます。1週間、1か月後の上達を目指して、練習過程そのものを楽しみながら、進めて行きましょう。
レパートリーを持つ
暗譜でいつでも弾けるような、得意な曲を1曲、持つようにしましょう。急に「弾いて」と言われた時に弾けると、自信にもつながりますし、周りも楽しい雰囲気になります。一部分でもいいのです。いつでもすぐに弾けるように、仕上げた後も終わりにせず、これからもその曲を時々練習するようにしましょう。
目標を作る
1年間で弾きたい曲をピックアップしたり、憧れの曲を期限を決めて仕上げる、など目標を作りましょう。そうすることでモチベーションが上がり、自然と行動に移せるようになります。
人に聴いてもらう
人前で弾く機会を作りましょう。1曲弾けるようになるだけでも大きな喜びですが、誰かに聴いてもらうと刺激となりますし、緊張しながらも弾ききったときはさらに大きな喜びにつながります。
また人に聴かせようと思って練習することで、いい緊張感が生まれ、練習中の集中力も増します。自分のレベルで聴いてもらうのは…と、ためらう気持ちもあるかもしれませんが、家族や身近な人であれば、好意的に聴いてくれるはずです。あなたの頑張る姿勢に、刺激を受け、これからも応援してくれると思います。また、友人・知人の中にも、ピアノ好き・音楽好きがいませんか?その人たちを巻き込んで楽しむのもいいと思います。
まとめ:ピアノは脳に効果大!大人こそ始めよう。
ここまで、ピアノが脳に効果が大きい理由と、大人こそ始めるべき理由を紹介しました。
ピアノはメロディー、和声、リズム、オブリガード、などあらゆる音楽要素を表現できる楽器です。その分、一度に多くの作業をするため、自然と脳の多くの機能を高めることができます。
健康な人でも、20代後半から認知機能は落ち始めます。ピアノを続けることで、脳を刺激することができ、認知機能の低下をゆるやかにすることができます。
また新しいことへの取りくみは、いくつになっても価値があります。ずっと昔にやっていたことを再開することも、当時と経験値が違うため、新たな挑戦みたいなものです。記憶を呼び起こすことで、脳の眠っていた分野が開花するかもしれません。ピアノをやってみたい、再開してみようかな、と迷っている人は、始めてみませんか。
ただ、スタートすることはすんなり出来たとしても、難しいのは「継続させること」。それさえ出来れば、あなたのピアノの力は伸び続けますし、脳もずっと活性化し続けます。三日坊主で終わってもOK。三日坊主を、また始めればいいのです。続ける限り、終わりませんから。ピアノを触ったという経験は、やった分だけ、残ります。
あなたにとって脳は、今が1番若いのです。やりたいと思った時が始め時。今というベストなタイミングでピアノを始めましょう。ステキなピアノライフとなるよう、応援しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。