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ピアノ基礎練習

ピアノでアルペジオを練習しよう。

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音楽を学ぶにあたり、ピアノの基礎のテクニックはとても大切です。そのひとつに「スケール(音階)とアルペジオの練習」があり、多くのピアニストやピアノ指導者が、著書などでその重要性を解説しています。今ではブログやネット上の動画などでも、沢山の練習方法が紹介されるようにもなりました。それほどに大切な基礎練習ということがいえます。

スケールとアルぺジオはよく一緒に練習することも多いです。この記事では、アルペジオの練習方法を中心に解説します。

スケール(音階)についてはこちら↓

ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

もくじ

アルペジオとは

アルペジオとは、和音を同時に鳴らすのではなく、1音ずつ順番に連続的に弾く奏法のことです。「分散和音」ともいわれます。和音の構成音を「高い方から低い方へ」または「低い方から高い方へ」と一定方向へ弾きます。

アルペジオ練習の大切さ

アルペジオの練習はとても大切な基礎練習です。その理由について説明します。

調の基礎知識が身につく

アルペジオはその調の1度の和音(主和音)で構成されています。

 アルペジオを全24調弾けるようになれば、和音の知識が理論的にも感覚的にも理解できるようになります。その曲が何調なのか、瞬時に判断できるようにもなります。つまり、調の基礎知識が理解でき、調性感も身につくということになるのです。

また楽曲分析もしやすくなるので、曲の練習や勉強にとても効果的です。初めての曲に取りくむにあたっても、初見譜読みにかかる時間が大幅に減るなど、非常に役に立ちます。

初見…楽譜を初めて見て、その場で出来るだけ止まらずに、最後まで弾くこと。

譜読み…初めて弾く曲の楽譜を正確なリズム・音符で、ある程度通して弾けるようになるまでの作業のこと。

楽曲でのテクニック練習が最小限になる

アルペジオを上手に弾くにはテクニック的にとても練習が必要です。それを日頃から練習しておくと、指の基礎的なテクニックが向上します。同時に、その調の鍵盤の感覚が身につくので、曲にふさわしい正しい指づかいができるようになり、無駄なミスタッチも減ります。

一般的に楽曲に出てくる音型は、スケールとアルペジオの音型、またはそれらが変形・発展したパッセージがとても多く登場します。つまり、アルペジオの練習が出来ていると、テクニックの向上を目指せるだけでなく、曲で出てきたテクニックを1から練習しなくても、最小限の練習ですむという一石二鳥の効果が期待できるのです。

腕の脱力と手首の柔軟性が身につく

アルペジオはピアノを学ぶ上で必要な動きが沢山詰まった、柔軟性を鍛えるために最適なテクニックです。腕の脱力と手首の柔軟性については、アルペジオを弾く上でごまかしがきかないからです。アルペジオを滑らかに弾くことは指の運びがスムーズであること、必要以上に身体が動かないこと、などが求められます。

このようにアルペジオには手の動きを錬えるための要素が沢山あるので、テクニック向上には欠かせない基礎練習といえます。

アルペジオの練習方法について

ここでは、アルペジオの練習方法について紹介します。

教本について

ハノン「ピアノ教本」

ピアノ学習者に定番のハノンの「ピアノ教本」です。アルペジオの練習はこの中の41番に載っています。39番には、スケールの楽譜もあります。

ハノンの教本がメジャーですが「スケールとアルペジオ」というタイトルの本もあります。

スケールとアルペジオ

 

指くぐりと指こえ

アルペジオは調によって指づかいが異なります。アルペジオ練習の難しさは、1の指を2、3の下へ送りこむこと(=指くぐり)と、1の指を他の指が越えていくところ(=指こえ)にあります。

指づかいを覚えることだけに着目すると、一見アルぺジオはやさしいように思えます。しかし、指こえと指くぐりをする音がひとつ前の音と少し距離があるため、上手に弾くのはテクニック的にとても難しいです。親指とその付け根の動きを柔らかくすることもポイントです

手首を素早く移動させて分散和音を弾くことをマスターするには、上手に腕と手首の脱力ができていないといけません。手首を上手く使えない人も、アルペジオを習得することにより、上手に手首が使えるようになります。

アルペジオ練習の手順

①まずは片手ずつ、必ず楽譜の指番号を守って練習しましょう。アルペジオは3和音(主和音)のくり返しの連続です。指くぐりと指こえが何度も出てきます。

下記のハ長調で、右手パートを見てみましょう。指番号は1、2、3の繰り返しとなっています。

つまり、手のまとまりが指番号1、2、3なので、どうしても上行形の時は1に、下降形の時は3にアクセントがつきがちになります。この時に、手のまとまりごとにアクセントがつかないようにすることが大切です。最初のうちは分かりやすく、1拍ごとの頭にアクセントをつけて練習すると、音楽的なまとまりを感じられるようになります。

また手首が上下に揺れたり、肘と脇の間が閉じたり開いたり、とならないようにしましょう。常に手の甲が床と平行になることをキープしてください。

②左右それぞれが、きれいなフォームで弾けるようになったら、両手で合わせましょう。両手で合わせても、片手ずつの練習で気をつけた内容(腕や手首のフォーム)を崩さないことを心がけましょう。

③ゆっくりの段階から、メトロノームを使う練習をします。メトロノームにピッタリ合わせて弾くことは意外に難しく、速いテンポだけでなく、ゆっくりのテンポに合わせることもいい練習です。この練習を沢山やると、指のテクニックやテンポ感、曲の演奏などが全体的に安定していきます。

④アルペジオの練習では、どうしても音楽的に相応しくない場所にアクセントがついたり、指の移動がスムーズにいかなかったりすることもあるでしょう。そういう時に効果的なのが、リズム練習です。沢山練習することで、指の動きがスムーズになり、粒が美しく揃うようになります。1つの調に慣れるまで、何度も続けましょう。リズム練習の方法については、後ほど説明します。

⑤慣れてきたらテンポを少しずつ上げていきます。粒の揃い方が気になったら、再びリズム練習や、片手ずつの練習を、並行して何度も行います。

両手ばかりで練習していると、利き手ではない方の音が実は聴けていないことがあります。そうならないためにも、時々は片手ずつで、特に利き手ではない方を重点的に練習しましょう。

リズム練習について

アルペジオを美しく弾くことはとても難しく、手や指の都合で、望んでもいない所にアクセントがついてしまうことがよくあります。そのための対策のひとつとして、リズム練習があります。沢山やるほど、指が自由になり、コントロールしやすくなります。ハノンの「ピアノ教本」にも様々なリズム練習が紹介されていますが、ここではおすすめのリズム練習を2セット、紹介します。指くぐりや指こえの移動もスムーズになり、弾きやすさを感じられると思います。

①付点のリズム(2つを1セット)

②4つのリズム(4つの変奏を1セット)

①と②、両方ともやると、より効果が実感できます。

1つの調を丁寧に

調によって指づかいが違うため、それぞれの調に難しさがあります。

毎日の練習で、より多くの調のアルペジオを弾くに越したことはないですが、全ての調をざっと練習するよりは、1つの調を丁寧に弾くことの方がピアノのテクニックは上がります。リズム練習や片手の練習、メトロノームの練習など、美しいアルペジオが弾けるまで1つの調を丁寧に練習し、それを全ての調で積み重ねましょう。

減七・属七のアルペジオ

ハノン42番に減七の和音のアルペジオがあります。これは、通常のアルペジオ(主和音で構成されたアルペジオ)と違い、全ての指を使うので、指1本1本の間隔が広がり、指の独立の練習にもなります。

43番の属七の和音のアルペジオもよい練習です。左手の5、4、3、2の指がさらに広がる練習となります。

スケールとアルペジオの練習を日課にしよう

スケール(音階)とアルペジオの練習がある程度マスターできたら、この2つの練習を日課にしましょう。

スケールについてはこちら↓

ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

スケールとアルペジオ、同じ調を組みあわせて、1つのセットとして練習するのが一般的です。弾く順番の例です。

〈ハ長調の場合〉

ハ長調のスケール(1〜7小節/カデンツを弾かずに)×2回→ハ長調のアルペジオ×2回→ハ長調のカデンツ⇦ここまでを1セット

※カデンツ…終止形の和音進行のこと

1セットを、全ての調で弾きます。24の調、全てを弾くと長い場合は、1日の練習で半分だけ、1/3だけ、など練習時間に応じて、分けて練習するのもよい方法です。既述のように、時には、1つの調だけを丁寧にやることも必要です。ただし、少なくとも同じ調号の短調(平行調)は、一緒に弾くことをお勧めします。

まとめ:ピアノでアルペジオを練習しよう

ここまで、アルペジオについて説明しました。まとめると次のようになります。

<アルペジオ練習をすると身につけられること>
1.調の基礎知識が理解でき、調性感が身につく。
2.主和音の感覚が身につき、無駄なミスタッチが減る。
3.楽曲の多くはスケールとアルペジオの応用なので、アルペジオをマスターすると、新しい曲の初見や譜読みが早くなる。
4.腕と手首の脱力が学べ、上手に手首が使えるようになる。

ピアノを学ぶ上で、音楽の基礎知識を身につけることはとても大切です。楽曲のテクニックばかり練習していても、基礎がなければ、ピアノの上達に伸び悩む時が、いつかやって来ます。実はそういう筆者こそが、この基礎力を身につけることが遅かったために、ピアノの上達に苦労した経験者の1人です。だからこそ、これを読んでいる皆さんには、基礎力の大切さをお伝えしたいのです。

基礎力は必ず曲に反映します。このアルペジオはスケールとともに、時間をかけてでも習得する価値のある大切な練習です。毎日の基礎練習に取り入れて、ピアノ上達のために、ぜひ活用して欲しいと思います。

皆さんのピアノライフがより充実するよう、応援しています。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。