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ピアノ基礎練習

ピアノ上達ヘの道!ハノンを効果的に活用する方法

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ピアノの鍵盤は88鍵。その鍵盤を私たちは10本の指で弾かなければなりません。人には利き手、利き指があるので、日常生活でよく使う指は、だいたい決まっており、動きやすさには差があります。また5本の指は長さも太さも違うため、キレイなメロディーを奏でるためには、繊細なコントロールが必要にもなってきます。そういう時に役立つのが、指のテクニックを身につける練習であり、ピアノ学習者に定番の『ハノンの教本』です。

筆者も長年、時間をかけて取りくんできました。自分のピアノのテクニックに自信がなかったので、コンプレックスを克服するために、毎日の練習の始めに、長く時間をかけていました。ところが、どれだけ時間をかけても、10年経ってもコンプレックスは克服できないままでした。それでも練習を積み重ねることで、テクニック不足が解決すると信じ、がむしゃらに時間を費やし続けていました。

いつの頃からか、長年のやり方を見直し、練習方法を変えてみたところ、ようやくテクニックが上達できなかった理由が、少しずつ見えてきたのです。

結果として、ハノンは使い方を工夫することで、テクニック上達への道が開ける。逆に一歩間違えると、ある一定のテクニックまでしか上達しない。これが、長年の経験で導き出したことでした。

それにより、練習時間がはるかに多かった学生時代より、今の方がはるかに指が自由にコントロールできています。それは本当に大切な練習を、これまではピックアップ&工夫が出来ていなかった…その原因に気がつくまで数十年かかりました。

上記のことを踏まえ、この記事では、ハノンを効果的に活用して、確実にピアノのテクニックを身につける方法をお伝えします。

もくじ

ハノンとは?

指の運び方やスケール(音階)・アルペジオなど、様々なテクニック練習が書かれた教本のことを指します。ピアノの練習を始める際の、指の準備体操として使われます。

フランスの作曲家

ハノンとはフランスの作曲家で、1820生まれ。本名はシャルル=ルイ・アノン(ハノン)といいます。教会のオルガニスト、ピアノ教授として活躍しました。

ハノンの教則本はピアノを学ぶ多くの学習者にとって、標準的な教材のひとつとなっています。ピアノ音楽界で、「ハノン」というと一般的にはこの曲集を指します。

一般的なピアノ学習者用だけでなく、今では子ども向け、大人初心者向け、などいくつか種類が出版されています。この記事では一般的なタイプの教本を元に説明します。

ハノン(教本)の目標

教本では「5本の指を全て平均して訓練すれば、ピアノ曲は何でも弾くことが可能になる」と考え、次のことを目標に設定されています。

1.指を動きやすくすること。
2.指をそれぞれ独立させること。
3.指の力をつけること。
4.つぶをそろえること。
5.手首を柔らかくすること。
6.よい演奏に必要な特別な練習を全部入れること。
7.左手が右手と同じように自由になること。

ハノン(教本)の構成

①1番の変奏の例(リズム練習など)
②第1部(1〜20番)
「指を〈1.すばやく動く 2.1本ずつ独立させる 3.力強くなる 4.つぶをそろえる〉ための練習」
③第2部(21〜38番) 「さらに進んだテクニックを得るための練習」
④音階(スケール)
⑤アルペジオ
⑥第3部(44〜60番) 「最高のテクニックを得るための練習」→トリル、重音の連続、オクターブ、トレモロなどの練習

ハノンに期待できる効果と落とし穴

上記の「教本に書かれた目標」のうち、身につきやすいこと、と意外と見落としがちなことがあります。理由を添えて説明します。

メリット

教本の構成の中にある「第1部」と「第2部」で占める曲数は40曲弱。とにかく多いので、ここを終わらせようとするだけで、数年はかかります。時間を費やした分だけ、練習すると格段にテクニックは上がります。例えば次のようなテクニックです。

指が動きやすくなる/指の力がつく/手首が柔らかくなる/ある程度は左手は右手と同じ速さで弾けるようになる

毎日の練習で、楽曲にすぐにとりかかるよりも、最初にこの練習をすると、確実に手や指が自由に動きやすくなります。また「リズム練習」をすることにより、さらに粒がそろい、美しい音質で弾けるようになります。

気が付きにくい落とし穴

ハノンは間違えずに弾けたからといって、すぐに次に進むような曲集ではなく、じっくりと取りくむ必要があります。また楽曲と併用して進めるものなので、第2部まで終わらせるだけでも、相当な年月がかかります。そこに落とし穴がありました。

①第1部と第2部は、白鍵のみの練習しかありません。白鍵よりも黒鍵の方が物理的に幅が細いので、黒鍵の上こそ弾くのが難しいのに、長い年月を費やしても、黒鍵を弾く筋肉は身につけられないということになります。

②第1、2部について、もうひとつの落とし穴。ひたすら全ての指を動かす練習にはなっているのですが、弱い指(4と5)は、弾きながら「隣の指が自然と助けてしまうことが可能な練習」になってしまっているのです。他の指が助けると、一見、指がよく動いているように感じるのですが、結局、指が独立しない練習となってしまいます。つまり、本当の意味で指が独立するための練習というのは、第1部、第2部にはない、というのが、この練習を10年以上続けて、筆者が気がついた感想です。

③音楽を学習する人にとって、「スケール(音階)とアルペジオ」の練習はとても大切です。音楽に大切な調の感覚や音感が身につくので、この練習こそ、時間をかけてでもマスターする価値があります。指の訓練ができるのと同時に鍵盤の感覚も身に付くので、効率のよいテクニック練習となります。これは、楽曲を練習する上でもとても役に立つものです

それほど大切な練習であるにも関わらず、教本を最初から順番に進めてしまうと、スケールとアルペジオにたどり着くのは4、5年後…。そうなると、この教本をスタートする年齢にもよりますが、大学受験で音大や音楽科を目指す人にとっては、大切なテクニックを習得しておきたい若い年代のうちに、大切な練習に充分な時間をかけられないまま時が過ぎてしまいます。

スケールとアルペジオの重要性を元々知っていれば、すぐに取りかかればすむことですが、学生時代はその重要性にはなかなか気がつきません。私もそのうちの1人でした。とにかく第1、2部の量が多すぎるので、この教本に忠実に取りくむ人ほど、本当に大切な練習になかなかたどり着かない、それが落とし穴なのです。

④指の独立が目指せる練習としては、「減七のアルペジオ」「重音の連続」などがあります。これらも非常に効果的な練習です。これらの練習も、③で述べたスケールとアルペジオの練習も、ハノンの教本の中では、そこまで重要視されていると思えないのです。くり返しになりますが、第1、2部が最初に占める割合が多いため、師事している先生がよほど、練習の必須課題として指定しない限り、大切な練習の優先順位を見落としてしまうというデメリットがあります。せめてスケールとアルペジオが掲載されている順番がもっと前の方であればいいと思うのですが…もしくは第1、2部の練習の中に黒鍵を使用すような練習があれば…そう思ってしまいます。嘆いても仕方ないので、教本を効果的に活用する方法を次に紹介します。

ハノンを効果的に活用しよう

以上の面から、筆者がたどりついた効果的な練習内容を紹介します。

第1、2部は選曲し、黒鍵での練習もする

第1、2部は同じような効果を狙ったものが多いので全てやらずに、特に苦手だと思うものを選びます。そして全て半音上げて、嬰ハ長調(変ニ長調)の状態で練習します。こうすることで、黒鍵の上でも滑らずに弾ける指の筋肉を鍛えることができます。

リズム練習をする

第1、2部の練習をする際は、粒をそろえるために、第1部の前のページにある「1番の変奏の例(リズム練習)」を必ず取り入れましょう。様々なリズムを練習することで、さらにコントロールが自由に効くようになります。全てをやるのは時間がかかるため、おすすめなのは次の2つの方法です

付点のリズム(2つを1セット)

4つのリズム(4つの変奏を1セット) 以下の3、4、5、15の4つ

どの練習も、粒が美しく揃うまで、このリズム練習を沢山行いましょう。

指の独立を目指す練習をする

次の①〜③の練習は、それぞれの指が独立しないときちんと弾けない仕組みになっているので、これを練習することで、指がかなり独立します。それぞれの指がコントロールできます。それぞれ、記述の「リズム練習」も行い、粒が良く揃うまで練習しましょう。

42番 減7の和音のアルペジオ

50番、54番 重音の連続

59番 1-4と2-5を広げるための練習

スケールとアルペジオを日課に

ハノンの教本では、39番がスケール(音階)、41番がアルペジオとなっています。それぞれ練習し、弾けるようになったら、1つの調を組みあわせて1つのセットとして練習するのが一般的です。

例えばハ長調の場合

ハ長調のスケール音階×2回(カデンツを弾かずに)→ハ長調のアルペジオ×2回→ハ長調のカデンツ ⇦ここまでを1セットとする

*カデンツ…終止形の和音進行のことで、音階の中の8〜10小節目に当たる部分。

1セットで、全ての調を続けます。24の調、全てのセットを弾くと長いので、1回の練習で弾く調は、半分にする、など分けて練習してもよいと思います。既述のリズム練習も必ずするようにし、粒が美しくなるまで、練習しましょう。

ハノンの教本以外に「スケールとアルペジオ」というタイトルの教本も出版されています。それほど、この練習はピアノ学習者にとって、大変重要です。

これらをマスターすると指のテクニック不足解消だけでなく、鍵盤の感覚が身につき、無駄なミスタッチが減ります。また曲にふさわしい正しい指づかいができるようになります。そしてどの楽曲も、その調のスケールとアルペジオに近い音型がひんぱんに登場するので、初見や譜読みも早くなり、楽曲分析もしやすくなります。つまり、とても効率のよいテクニック練習であり、楽曲を練習・勉強する上でも、とても役に立ちます。

ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

 

オクターブ練習

53番のオクターブの音階、56番のトレモロの音階でオクターブの練習をしましょう。手が小さい人、または元々身体が硬い人は手の開き方が狭いので、オクターブ練習を行うと効果的です。

自分の弱点から必要な練習を選ぶ

曲を弾いているとつまずいてしまう箇所が出てくると思います。そこがどうしてできないのかを考えてみてください。何が弱点なのかを知る→どういう指の訓練が必要なのかを探る→該当する練習番号で克服する(対応するものがなければ工夫する) この流れが大切です。

人によって、苦手なテクニックは違います。当然、時間をかけるべき基礎練習も違ってきます。自分の弱点を知って、上手にハノンを活用しましょう。

まとめ:ピアノ上達への道!ハノンを効率的に活用する方法

ここまで、筆者の経験を元に、ハノンを効率的に活用する方法を紹介しました。ハノンには指が動きやすくなることが目標とされていますが、気が付きにくい落とし穴もあります。そのために、使い方を誤ると、ある一定のテクニックまでしか上達しません

そうならないために、ハノンは効果的に活用しましょう。その方法をまとめると次のようになります。

1.第1、2部は曲が多すぎるため、抜粋し、黒鍵の練習をすること。
2.指の独立を目指す練習をすること(第1、2部だけでは身に付かない)。
3.スケールとアルペジオを日課にすること。
4.オクターブ練習をして手首を自由にさせること。
5.自分の弱点を知り、必要な練習に時間をかけること。

ハノンの教本の内容はとても充実している分、日常的に使用するものは抜粋して練習する必要があります。自分の弱点を知り、それに合わせて練習を続ければ、確実にテクニックは身につきます。ピアノの練習は継続が必要ですが、ハノンを利用して確実にテクニックを磨けば、必ず全ての努力があなたのピアノの技術、表現力に結びつくことでしょう。テクニックを身につけ、よりステキな演奏ができるよう、応援しています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。