日本の平均寿命はますます長くなっています。また、人生100年時代という言葉も、よく耳にするようになりました。
しかし、ただ長生きするのではなく、身も心も健康でいること、それが誰もが望む理想の姿ではないでしょうか。
実は、認知機能は、健康な人でも、20代後半から落ち始めると言われています。
また、個人差はあるにしろ、どんなに健康で鍛えている人でも、60歳以上のシニア世代になると、さらなる老化が現れます。
それが落ちる速度を遅めるにはどうしたらいいのでしょうか。
その方法のひとつに、「ピアノ学習」があります。
この記事では、ピアノが脳を活性化するしくみと、シニア世代の方へ、ピアノ学習を強くおすすめする理由について説明します。
もくじ
ピアノで脳が活性化するしくみ
ピアノを弾くことで脳が活性化すると言われます。ここでは、その理由について説明します。
全ての指を使うということ
「指を動かす」という行為だけで、脳は活性化するそうです。
しかし、使うのが毎回同じ指だと、脳はたいした刺激を感じなくなります。実際に、私たちは日常生活の中で、どうしても、利き手、利き指ばかり使っています。
日頃あまり使わない指、特に「薬指」「小指」を使うことで、脳への刺激が増え、血流量が多くなるとのこと。また、左右の手が同時に「異なる動き」をすることで、さらに血流量が増えるそうです。
ピアノを弾くという作業は、そういった日常生活にはなかなかない指の動きを、自然にやることになります。
パソコンのタイピングも全ての指を使うかもしれません。しかし、ピアノは「左右の手が同時に、異なった動きをする」という点ポイントです。
脳の血流量増加は認知症予防
『脳の血流量の増加は、認知症の予防になる』ということが研究で明らかになっています。
つまり、全ての指をまんべんなく使うピアノは、認知症予防につながる大きな役割を果たすわけです。
もし、ピアノを弾くシニア世代が増えれば、認知症になる人が減り、本人だけでなく、家族までもがいつまでもハッピーでいられます。
平均寿命よりも、日常生活に制限のない「健康寿命」を伸ばすことこそ、長寿大国である日本の理想の姿ではないでしょうか。
脳の回路の増加
ピアノ学習者であるシニア世代の人たちに、課題をやってもらうと、最初はできないのですが、数週間後にはできるようになります。もちろん、個人差はありますが。
課題ができるようになるのは、「練習することによって、神経細胞が活発に働き、脳の回路の先に新たな回路ができるから」と考えられています。
加齢や老化により、脳の回路は減少するのが自然です。それなのに、新たな回路ができるというのは、脳の老化に逆らっているという現象です。それって、すごいことだと思いませんか?
このような理由から、ピアノ学習は脳を活性化すると考えられるのです。
ドーパミンの分泌
ここまでの内容で、ピアノの練習の過程そのものに、脳の活性化の効果が期待できることが分かりました。
それだけではありません。
ピアノの練習をがんばった先には、「曲が弾けるようになるという喜び」が待っています。
そのような成功体験や達成感によって、「ドーパミン」という神経物質が分泌されます。これは、健康によいホルモンで、長寿や若返りの効果もある、と研究で明らかにされています。
ドーパミンは、快楽を感じたり、仕事や作業に効率を高めたり、疲れが感じにくくなったり、という効果もあるそうです。
シニア世代にピアノがいい理由
ここまで紹介した効果だけでも、充分にピアノが健康にいいことが理解できたと思います。他にもピアノがシニア世代にいい、と言われる理由があります。
指の筋力が保てる
必要最小限にしか身体を使っていないと、どんどんと筋力は衰えてしまいます。手や指の筋力も同じです。
ピアノはそれぞれの指を動かすため、脳にいいだけでなく、指の筋肉や関節の働きを維持するための運動にもなります。
お箸やペンを落としやすくなったり、という手先の筋力老化の予防にも、効果が期待できます。
昔の曲を懐かしむことはよいこと
子どもの頃までに遡ると、よく歌った曲、好きだった曲、感動した曲など、それぞれに思い出の曲があると思います。
ピアノを練習することをきっかけに、選曲するだけでも、色々な曲を思い返すことになります。
また、音楽は、人間の潜在意識に深く根付いていることがあります。音楽を聴いたり、ピアノを弾いたりすることで、深く眠っていた昔の記憶がよみがえり、当時の感情を鮮明に思い出すことがあります。
このように、若い頃の感情を思い出したり、人生の楽しかったことをふりかえることは、心理学的にも、とてもよいことなのだそうです。
年を重ねたからこその深み
同じ曲を弾くのでも、たくさんの経験を重ねた人だからこそできる音楽表現があります。
たとえば「ふるさと」を弾く時。
子どもの頃を思い出し、故郷に想いを馳せながら弾く音楽には、子どもや若者には表現できない深みがあります。
ピアノを長続きさせるコツ
ここまで、ピアノがシニア世代にとっていいことだらけだということは分かっていただけたと思います。ただし、せっかくスタートしても、すぐにやめてしまっては、効果がありません。一般的に難しいのは、始めることではなく、「続けること」です。
ここでは、練習を継続させるためのコツを紹介します。
習慣化させる
ハミガキをしたり、ご飯を食べたりするように、毎日の習慣とは、意識せずにやれてしまいます。同じように、ピアノの練習も習慣化させてしまいましょう。
「顔を洗う前の10分練習」「ご飯前の20分練習」など、毎日の習慣の前後に練習をくみこんでしまうと、大きなエネルギーを必要とすることなく、自然に練習ができます。
目標を作る
目標がある方が、長続きします。
この曲集を1冊仕上げたい、孫の好きな曲を弾いてあげたい、発表会で弾きたい・・・
何でもいいのです。「お友達の前で好きな曲を弾く」、というささやかなことでもいいのです。
何かひとつ、目標を作って取りくみましょう。
ピアノ仲間を作る
ピアノは基本、孤独な時間の多い楽器です。どうしても練習へのモチベーションが下がることも避けられません。
そういう時にピアノ仲間がいると、とても心強いです。
共にがんばる仲間がいるのといないのでは、継続力の差が出る、という実験結果も出ています。
ピアノ教室を選ぶ時に、グループレッスンをしているところを選んだり、個人レッスンであれば、同世代の仲間を見つけたりすることをおすすめします。
練習メニューを工夫する
比較的、時間に余裕があるシニア世代のように、充分に練習を確保できる場合は、まだ練習時間があるのに、途中で飽きてしまうことがあります。
特に、ある程度、譜読み※が終わって、曲を深める段階に入った時。その曲への新鮮さも薄れて、飽きやすくなります。
もし集中力が途切れたら、気分転換に、新しい曲に挑戦してみるといいでしょう。それが譜読みの練習になり、読譜力が身につきます。読譜力が身につくほど、ピアノがさらに楽しく感じられるようにもなります。
また、前に終わらせた曲を、久しぶりに弾くなどして、練習内容に変化をつけましょう。
1度完成させた曲でも、しばらく練習しないと、あっという間に弾けなくなるものです。それを防止するためにも、時々は弾いて、思い出すようにしましょう、
※譜読み…初めて弾く曲を、ある程度すらすら弾けるようになるまで練習する作業のこと
動画に撮る
練習用でも、記録用としても、どちらの目的でもOK。動画に撮ることで、思っていたように弾けていないことに気づき、課題が見えてきます。
また人前で披露する機会がない場合は、完成した曲を動画に撮って、ためていくことを目標にするのもいい方法です。
上達はほんの少しずつでも、あとで振り返った時に、練習の成果を感じることができます。また、自分の頑張りの積み重ねが、記録され、やる気をキープすることにもつながります。
人と比べないこと
前述したように、ピアノ仲間を作ることが、モチベーションアップにつながることを説明しました。
ただし、ひとつ注意していただきたいことは、「人と比べないこと」です。
同じ世代であっても、シニア世代だからこそ、経験や能力の差があって当然です。
自分より上手な人と比べると、自信をなくし、嫌になってしまうことがあります。
比べるなら、ぜひ過去の自分と比べましょう。上達は目に見えて分かることではありませんが、楽譜が前より読めるようになった、レパートリーが増えた・・・など、半年、1年前の自分よりはできることが増えているはずです。
ほんの少しでも進んでいる自分を認めて、とにかく、楽しく続けましょう。
まとめ:ピアノで脳を活性化!シニア世代におすすめの理由
ここまでピアノが脳を活性化する理由と、シニア世代におすすめする理由について説明しました。
日本は長寿大国で、平均寿命が伸びています。
寿命が伸びても、身体と心が健康でいなければ、意味がありません。
そんなシニア世代の老化の速度をゆるめるための方法として、ピアノ学習がいい効果をもたらします。
その理由をまとめると次のようになります。
ピアノで脳が活性化する理由
①普段使わない指を使うことで、脳への刺激が増え、血流量が増える。
②脳の血流量が増えることは、認知症予防につながる。
③脳の回路に新たな回路ができる。それはシニア世代でも起こることあり、老化に対抗する現象である。
④成功体験や達成感により、ドーパミンという健康ホルモンが分泌され、長寿や若返りの効果をもたらす。
上記以外にも、シニア世代は子どもや若い世代よりも、年を重ねた分、深みのある音が出せるようになる、という利点があります。
ある程度の練習は必要かもしれませんが、沢山の経験を経た人によって表現されるものは、音楽に限らず、豊かなものです。
表現力に正解や到達点はありません。
だからこそピアノ学習は、やればやるほど難しくもなり、面白さも感じられるようになる分野です。
初心者の方も再開組も、興味を持った時が始め時です。
好きな音楽でピアノを楽しみながら、この先も、心と身体の健康維持をしていきませんか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。