ピアノを弾く上で、「脱力」は大きな課題であり、一流のピアニストさえも一目置いているテーマです。
脱力とは、文字通り言えば、力を抜くことですが、ピアノが弾けなくなる脱力では意味がありません。大切なのは「余計な場所に力を入れない=無駄な力を抜く」ということです。
ピアノを弾く上でなぜこれが大事なのでしょうか。この記事では、脱力の大切さについて、説明します。
もくじ
ピアノ学習において、なぜ脱力が大切?
ここでは、ピアノを弾く上で必要な「脱力」の意味と、ピアノ学習の初期段階で脱力方法を身につけた方がいい理由を説明します。
脱力とは?
脱力とは、余計な力を抜いて、リラックスした状態で弾くことです。スポーツの世界でも少し力を抜いて「脱力」することが、よいパフォーマンスを発揮するために重要であると言われています。そしてこの「脱力の重要性」はスポーツ以外の分野でもよく研究されるテーマのようです。
ピアノを弾く上で、脱力が出来ていないとどうなる?
ピアノの場合、脱力が出来ていないと、硬い音ばかり出て、音楽に表情がつきにくくなりますし、響きのあるよい音では弾けません。また速いパッセージが出てきた時に指が自由に動きませんし、ミスタッチが多発する原因になってしまいます。難しい曲を弾くようになった時は特に、脱力が出来ていないと、最後まで弾くためのスタミナが持ちません。
このように、脱力ができていないことは、ピアノを弾く上でデメリットだらけなのです。
ピアノを始めたばかりのお子さんや、ピアノ初心者の方など、やさしいレベルの曲を弾くのであれば、脱力が出来ていないことへの影響はあまり感じないかもしれません。しかし、少しずつレベルアップしていくうちに、この重要性が感じられることになります。それに気がついた頃に上手く脱力ができていないと、せっかく練習を頑張ってきても伸び悩むことになります。
また、やさしい曲で身につける方が、音数が少ないので、脱力の感覚がつかみやすくもあります。そのため、ある程度ピアノが弾けるようになってから身につけることは、かえって難しいのです。
だからこそ脱力ができることは、ピアノを始めた初期のうちに身につけるべきなのです。
脱力の方法
脱力の方法で大切なのは、まずはその基本、姿勢です。
正しい姿勢で座る
ピアノは88鍵あります。イスに座るときは、鍵盤の端から端まで届くよう、身体が自由に動けるような座り方をする必要があります。
①身体を安定させ、自由に動かすために、お尻は尾てい骨を中心にしっかりと重心を下ろします。そして、上半身が安定するように座ります。
背筋は適度に伸ばします。猫背になったり、反らしすぎてもいけません。
②腕は、ひじから手首までが、鍵盤に対して水平、またはひじが少し上になるようにします。ひじが低くなりすぎない過ぎないよう気をつけましょう。この時に、手首は力が入らずに、ゆるんだ状態を保ちます。
イスの高さや、鍵盤と身体の距離は、この腕の体勢によって決まります。
③大切なのは、イスに座るとき、重心のバランスを取ったら、肩から下(腕、ひじ、手首)はしっかりリラックスさせることです。腕の重みを指に伝えて指でしっかり打鍵するようなイメージで弾きます。
脱力している状態を、片手ずつ感じてみる
練習しているうちに、どうしても手首や腕に力が入る時、あると思います。そういう時、コントロールが難しいですよね?
そんな時は、片手ずつ弾いてみて、空いている方の手で、弾いている手の、力が入っているところ(腕や手首)をぎゅーっと掴んでみましょう。掴んだり、握ったり…
どうですか?そうすることで、力が入っている状態を確認できましたね?
また、そうやって片方の手で力んでいるところを握ってしまえば、それ以上力を入れにくい思います。その「力を入れられない状態」をしっかりと感じて、その感覚を覚えましょう。その状態のまま、指先は自然に弾けるようになるまで、何度かやってみましょう。
肩を上げ下げする
弾きながら肩を上げ下げしてみて、曲が止まってしまうようなら、力が入っている証拠です。
この動きをしながら、曲を止めずに弾ければ、肩と腕の脱力は上手くいっているということになります。
また、弾きながら力が入っている時は、どうしても肩が上がってしまう傾向があります。力が入ってることを自覚した時は、肩を下げる、それだけでも効果があります。
スタッカートの練習をする
手の先に余計な力が入らないようにするための練習としてオススメなのが、スタッカートの練習(=その音を短く切ってひくこと)です。
打鍵して、鍵盤が底までたどり着いたら、すぐに力を抜いて鍵盤を元に戻す行為なのですが、脱力ができていないと、いい音で響きません。なお、スタッカートの弾き方として、着地した時に、目的と違う場所に降りないよう、はねすぎない(鍵盤から手が離れすぎない)にしましょう。
最初は片手ずつ、手首をしなやかにして、弾力を感じながらゆっくり練習します。そして、ピアノの音にもよく耳を傾けましょう。使用しているピアノにもよりますが、ピアノの音が、よく響き、伸びのある音で弾けるようになることが理想ですし、それが脱力ができている証拠になります。
この練習は、どの音も均等の音量で弾く練習にもなりますし、上手にできるようになると、音楽の表情も豊かになります。
中級者以上へのお勧め脱力練習法はアルペジオ!
アルペジオというのは「分散和音を弾くこと」ですが、ピアノを学ぶ上で必要な動きが沢山詰まったテクニックであり、柔軟性を鍛えるためにも最適な奏法です。腕と手首の脱力が上手にできていないと、手首を素早く移動させて弾くことができないからです。
アルペジオを滑らかに弾くことは指の運びがスムーズであること、必要以上に身体が動かないこと、などが求められます。
今は腕と手首を上手く使えない人も、アルペジオを習得することにより、腕の脱力と手首の柔軟性が自由になり、上手に手首が使えるようになります。
このようにアルペジオは、手の動きを錬えるための要素が沢山あるので、テクニック向上や柔軟性を鍛えるために欠かせない基礎練習といえます。
アルペジオ練習の難しさは、1の指を他の指の下へ送りこむこと(=指くぐり)と、1の指を他の指が越えていくところ(=指こえ)にあります。
指こえと指くぐりをする音がひとつ前の音と少し距離があるため、上手に弾くのはテクニック的にとても難しいです。指の動きがスムーズになれば、アルペジオを滑らかにひくことができるようになります。
黒鍵を使うとなると、また違った難しさも出てきます。
肩やひじが上がってしまったり、手が斜めになったり、必要以上に身体が動いてしまうなら、脱力ができていないということになります。親指とその付け根の動きを柔らかくすることもポイントです。
アルペジオがスムーズに弾けるようになれば、自然に脱力ができているということになります。
まとめ:ピアノ学習者必見!脱力の大切さ。
ここまで脱力の大切さについて説明しました。
ピアノにおいて脱力とは、余計な力を抜いて、リラックスして状態で弾くことです。「脱力の重要性」は他の分野でも、よいパフォーマンスを発揮するためによく研究されるテーマです。
ピアノの場合、脱力が出来ていないと、デメリットしかありません。そのため、ピアノを始めた初期のうちに身につけることが大切です。
脱力を身につける方法はいくつか紹介しましたが、感覚をつかむまでにはやはり練習が必要となるものです。思い通りのパフォーマンスを発揮するためにはとても大切なことなので、ぜひ身につけたいですね。脱力する感覚をつかんで、響きのある、豊かな演奏を目指しましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。