流れてきた音楽を、楽譜もなくピアノで演奏できる人を見て、「絶対音感がある人はいいなぁ」と羨ましく思うことはありませんか?
しかし、そのピアニストは必ずしも「絶対音感がある」とは言えません。むしろ、別の能力が優れている可能性の方が高いのです。
この記事では、ピアノを学習する上で、絶対音感があると有利なのかどうかについて、説明します。
もくじ
絶対音感とは
絶対音感とは「ある音の高さを他の音と比べずに判別する能力」のことです。
それは、楽器の音だけに限りません。世の中には、楽器の音以外に、様々な音が存在します。絶対音感とは、そういう日常の生活音ですら、瞬時に「音名(ドレミ…)」で分かる能力のことを言います。
例えば、車のクラクションが瞬時に「ラ」に聞こえたり、鳥の声が「ミ」に聞こえる、というようなことです。もちろん、そういった音はピアノの鍵盤でも表せないことがあります。日常の生活音や自然音には、「ド」と「ド♯」の間の音、のように曖昧な音が多いからです。
尚、絶対音感は、先天的に持っている人は非常に稀で、なおかつ、幼少期(7才位)までに訓練しないと身につかないと言われています。
相対音感とは
一方、基準の音を聞いて音を判別できる能力を「相対音感」といいます。
では、ピアノの音を1音だけ弾いて、鍵盤を見ずに音名を当てられる能力は、どうでしょう?他の音と比べずに当てられたので、ある意味、絶対音感と言えるのかもしれません。実際にそれを絶対音感と呼ぶ人もいます。しかし、これは絶対音感とは言えません。
楽器の音程を他の音と比べずに判別できる能力は、「相対音感」の範囲内なのです。音程のある音は全部で12コ。これは大人でも訓練すれば、他の音と比べずに認識できるものです。
多くの楽器演奏者や音楽家は、ある程度のレベルの相対音感は、自然と身につけています。あるレベル以上になると、訓練が必要となります。
ピアノの上達には相対音感を訓練すべき
他の楽器と比べてもピアノの上達には、相対音感の訓練で十分な理由があります。それについて説明します。
相対音感を身につけるとメリットがたくさん
冒頭で紹介したような、「聞こえた音楽を楽譜もなく、ピアノで演奏できる人」は、絶対音感というよりは、「相対音感が非常に優れている」ということになるわけです。
実際に、プロの音楽家ですら、相対音感だけを持つ人がほとんど。もちろん、絶対音感を持っていれば、恐いものなしなんでしょうけど、残念ながら、それは幼少期までにしか身につけられないものですし、そもそも音楽の仕事をする上では相対音感で十分なのです。
相対音感を身につけるほど、ピアノ学習においては、音楽の理論が分かる、初見や譜読み※が早くなる、即興演奏ができるようになる、など多くのメリットがあります。
つまり、多くのピアノ学習者にとって「絶対音感があるって羨ましい」と嘆くよりは、相対音感を訓練する方が、ピアノ上達への道としてはるかに現実的な方法なのです。
※譜読み・・・初めて弾く曲の譜面を見て、ある程度正しく弾けるようになるまでの作業
ピアノは音程を作る必要がない楽器
バイオリンなどの弦楽器は、「ド」「レ」「ミ」などの正しい音程を自分で作らければなりません。一方、ピアノは、ある鍵盤を弾けば確実に「ド」の音が出せる楽器です。
そのため、ピアノ奏者は音程における、微妙なピッチの違いを判別する必要はありません。そういう意味でもなおさら、ピアノは相対音感を鍛えるだけで十分な楽器と言えるわけです。
ただし、ある一定レベルの相対音感を身につけるには、それ相応の訓練が必要となります。
相対音感の身につけ方について、もっと知りたい方はこちら→ソルフェージュとは?ピアノ学習と併用する効果。
まとめ:ピアノには絶対音感が有利?
ここまで、ピアノを学習する上で、絶対音感があると有利なのかどうかについて説明しました。
絶対音感とは、「ある音の高さを他の音と比べずに判別する能力」のことを言います。これは、生活音や自然音ですら、瞬時に音名で分かる能力のことです。
一方、基準の音を聞いて音を判別できる能力を「相対音感」といいます。
楽器の音を判別できる能力においては、たとえ他の音と比べずに判別できたとしても、「相対音感」の範囲内なのです。
ピアノは鍵盤を押さえれば、必ず音程のある音がでますので、絶対音感がなくても、何の不利にもなりません。
つまり、ピアノ学習者にとって、相対音感を身につけることが、ピアノ上達へつながる方法なのです。相対音感は大人になっても訓練することで身につきますから、ぜひ身につけることをおすすめします。
あなたの音楽ライフが充実したものになりますように。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。