ピアノを練習していて、ひとつの曲が完成に近づいてきた時。楽譜なしでも弾けるくらいまでに、十分に練習に時間をかけているのに、速いパッセージでは思うように指が動いてくれない。そういうこと、ありませんか?
指がもっと自由にコントロールできたらいいですよね。
そういう悩みの解決策の1つとして、「リズム練習」があります。
この練習をひたすらやると、あら不思議。やる前と比べて、指が軽やかに感じ、スラスラと動いてくれるようになるではありませんか。
この記事では、指のコントロールが楽になるための、「リズム練習」について、やり方と注意点を含めて説明します。
もくじ
ピアノのリズム練習について
ピアノは楽器の王様。表現できることは無限大です。だからこそ難しい楽器でもあります。ピアノにおける難しいテクニックは色々ありますが、その壁を乗り越えるために、リズム練習はとても効果的なのです。
「ハノン」でも紹介されている「リズム練習」とは?
多くのピアノ学習者が使う教則本で「ハノンの教本」というものがあります。ピアノのテクニックを強化する大切な基礎練習で、指の準備体操としても使われます。その中にも、「リズム変奏」での練習方法が紹介されています。
このハノンの教本を練習する際、「リズム変奏」で練習すると、「音の粒が良く揃う」という効果があります。
ハノンは、ピアノのテクニックを身につけるために、理想的な基礎練習が沢山紹介されています。
ハノンの活用法について詳しく知りたい方はこちら
しかし、ハノンを活用せずとも、楽曲中のフレーズを利用して「リズム変奏(リズム練習)」を行うだけでも、テクニックの上達にとても効果的があるのです。
その具体的な方法も、この少し後に紹介します。
ピアノにおける難しいテクニックとは
楽器によって、難しいテクニックは異なるものです。
例えば、ピアノでは前の音と次の音の高低差が広いと、すばやく移動することは難しいですが、バイオリンではさほど難しくなかったりします。また、バイオリンでは和音を弾くことはとても難しいですが、ピアノで和音を掴むことは難しくなかったりします。
このように、楽器によって、訓練したいテクニックというのは異なります。
ピアノにおいて、難しいテクニックを認識し、少しでも克服できれば、ひとつの曲を仕上げることがぐっと楽になります。その克服方法の一つとして、「リズム練習」は大きな効果をもたらしてくれます。
なお、筆者が難しいと感じるピアノのテクニックには主に次の3つがあります。
①指くぐり…1の指を2、3の下へ送りこむこと
指こえ…1の指を他の指が超えること
②音の跳躍…次の音への移動距離が長い 次の音への高低差が広い
③オクターブや重音(2音以上)が連続で登場する
これらのテクニックは、速ければ速いほど、多ければ多いほど難しくなりますし、様々な楽曲に度々登場します。テクニックや練習が不足していると、指くぐりや指こえの多い箇所でつまづいたり、流れるようなフレーズで表現したくても、デコボコした表現になったりしてしまうのです。
音の跳躍が続けばミスタッチをしやすくなりますし、オクターブや重音が連続で登場する箇所では、流れが重たい感じになってしまうことがあります。
リズム練習をすると克服可能なこと
ピアノのテクニックが十分になくても大丈夫!むしろ、テクニックがないからこそ、「リズム練習」で効率の良い練習をして、困難を克服しましょう。
リズム練習を真面目に行うと、次のようなことができるようになります。
①つぶが揃っていない→どの音符も均等になる
②ミスが多い→ミスが減る
③リズム感が甘い→洗練されたリズムになる
④音のひとつひとつが重い→クリアーな音質になる
この4つが改善されるだけで、音楽の流れが自然になり、理想の音楽に近づけます。
ピアノでリズム練習をやってみよう
実際にリズム練習をやってみましょう。
前述した「ハノンの教本」には様々なリズム変奏が紹介されていますが、全て行うとどれだけ時間があっても足りません。
なので、筆者がこれまで長年練習し、効果的だったパターンを紹介します。1つのセット内の練習はどれもバランス良く行いましょう。
4拍子や2拍子のリズム練習
8分音符や16分音符の連続は下記のような練習をします。
①付点のリズム(2つを1セット)
②4つのリズム(4つの変奏を1セット)
3連符、または8分の6拍子のリズム練習
3つの音符でひとかたまりの連続では下記のような練習をします。
3つのリズム(3つの変奏を1セット)
実際に練習してみると、以前より指が軽くなり、自由に動くようになった感覚があると思います。練習の量が多いほど、効果を感じやすくなります。
また、練習するリズムが甘いと、効果はあまりないので、上達が感じられない場合は、指導者のもとで行うか、録音して、自分の音を確認してみてください。鋭く、正確なリズムで練習できていますか?
リズム練習を行う上での注意点
リズム練習はやればやるほど、指が自由にコントロールできるようになります。しかし、それに満足してしまうことには、注意が必要です。
ただ指を動かすだけの練習を長くやりすぎると、演奏が機械的になってしまう恐れがあるためです。
そもそも音楽の最終目的地は、指がテクニカルに動けばいい、ということではありません。いかに作曲者の作った音楽をくみとり、奏者の想いも含めて音に表現するか、そういう「音楽性」を追求していくことではないでしょうか。
リズム練習は、あくまでも、音楽的な表現を目指すためのひとつの練習に過ぎません。この練習をするに当たっては、音のつながりや流れを意識して、目的を持って練習しましょう。
そしてゆくゆくは、技術面に支配されることが最小限になり、音楽表現に専念できる、そんな状態を目指しましょう。
自分の苦手な箇所を認識し、何を改善させたいのか、その目的を常に意識して、練習をするように心がけましょう。
まとめ:指のコントロールが楽になる!ピアノのリズム練習法。
ここまで、指のコントロールが自由になるためのリズム練習について説明しました。
中には子どもの頃からずっと、何時間もピアノの練習をし、指が自由に動かせる人はいます。
しかし、多くの人は大人になり、仕事をしながらも十分にピアノが練習できる環境でいつづけることは難しいのではないでしょうか。
ピアノ奏法における、すばやい動きや、細かい音の連続などを思うようにコントロールすることは難しいことです。
そこで、そんな悩みを少しでも解決する方法として今回の内容を記事にしました。
リズム練習はやればやるほど、自分の思うように指がコントロールできるようになります。筆者にとっても、この練習法ははずせないものです。
ただし、指が自由になったことを最終的なゴールにしないようにだけ気をつけてほしいと思います。技術面に支配されることが最小限ですめば、音楽表現に思うように専念できます。ぜひ、指が自由になったその先で、これからもあなたの音楽性を磨いていってください。「リズム練習は」その通過点に過ぎません。
この記事が、ピアノを学習する上で、少しでもお役に立てれば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。