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楽器の知識

サイレントピアノを20年以上使って。特徴を紹介。

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筆者のグランドピアノはYAMAHAのもので、26年前に家やってきました。当時はまだ新しかった「サイレント機能」が搭載されているものです。当時、学校から帰宅後、夜に練習していたため、音が外に聞こえないサイレント機能は、随分活躍したのものでした。

「音が外に聞こえない」という面でいえば、電子ピアノも似たような機能を持っています。その共通点や違いをおり混ぜながら、実際20年以上に渡って使い続けてきた経験から、サイレントピアノの特徴や年数が経った今、などについてお伝えします。

もくじ

サイレントピアノとは

「サイレントピアノ」とはグランドピアノやアップライトピアノに、取り付ける機能。普段はアコースティックピアノとして使用し、夜間など音が気になる時は、消音状態(音はヘッドホンから出る)にできます。

筆者のピアノの場合は、同じ大きさ・ランクのもので比べると(サイレント無のものより)、20万円くらいプラスだったと思います(1995年当時)。

アコースティックピアノの音が鳴るしくみ

まず、ピアノの音が鳴るしくみを、確認しましょう。下の図はグランドピアノの内部を真横から見た図です。実際には、弾いている人からは見えにくい場所にあります。

ピアノの鍵盤を押すと連動したハンマーが弦を撃ち、その結果、音が鳴ります。

さらに響板(大きな木の板)によって、楽器全体が共鳴し、音を大きく鳴らすという構造です。

ちなみにこのしくみのことを「アクション」と呼びます。

サイレントピアノの消音のしくみ

サイレント機能の消音のしくみは、ハンマーと弦の間にストッパーがセットされ、弦をたたく直前でハンマーの動きを止めて弦を鳴らさないようにすることで、実現します。

そして、鍵盤の動きをとらえるセンサーによって、繊細な演奏を忠実に再現するしくみです。ヘッドホンから聴こえる音は、コンサートグランドピアノから収録したピアノ音です。

アップライトは後付けできる

 

アップライトピアノであれば、サイレント機能は後付けが可能です。

尚、YAMAHAさんによると、アップライトのサイレント機能も、ヘッドホンの音は「フルコンのグランドピアノを響きまで再現している」とのことです。

2021年10月現在、アップライト用のサイレント機能を追加すると、取り付け費用込みで20万円強、とのことです。品番にもよるので、詳細を知りたい場合は、直接、楽器店に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

グランドピアノは後付けはできない、とのことです。

サイレントピアノを使ってみて

これまで20年以上サイレントピアノを実際に使ってきた感想について述べたいと思います。

音の聴こえ方は電子ピアノに近い?

タッチとしては、消音時でも、ピアノのアクションをそのまま使用するので、アコーステッィクピアノと同じタッチです。ただし、消音時、ヘッドホンから聴こえてくる音は、正直いって「電子の音」という印象です。そういうこともあり、私の場合は、サイレント機能の使用頻度は最少限にしていました。YAMAHAさんの売りとしては「(消音時)ヘッドホンから聴こえる音は、フルコンのグランドピアノ」とうたってはいますが。

ところで「電子ピアノ」にも色々種類ありますが、金額が上がるほど「アコースティックピアノの音を強弱や音色などまで再現する」「細かいタッチも感知できる」などを特長としている機種があります。そのように細部までこだわっていても、それを電子音で再現するには限界があるのでしょう。

同じように、サイレントピアノの消音時も、ヘッドホンから鳴る音は楽器本体を響かせているわけではないので、どうしても「電子音が鳴っている」という印象になってしまうのは、むしろ自然なことなのかもしれません。

やはり、ピアノの楽器本体を共鳴させるアコースティック楽器の響きにかなうものはありませんね。

電子ピアノとの違い

ところで、電子ピアノで激しい曲を長時間練習すると、腕が痛くなります。弾力性をもって弾こうとしても「力の逃げ場がない」という感覚で、強く弾くと腕や手に負担がかかるような気がします。アコースティックピアノの鍵盤の素材・アクション機能とは違うからでしょうか。他のピアノ経験者も同じようなことを言っていました。

その点、サイレント機能(消音時)で長時間練習しても、電子ピアノほどの身体の負担はありません。サイレント機能(消音時)も電子ピアノも、聞こえる音は電子音のようであっても、身体への負担はサイレントピアノ(=アコースティックピアノ)の方がやさしいということが言えます。ff(フォルテッシモ/意味:とても強く)が続く曲でなければ、さほど影響はないと言えますが…。

ハイブリッドピアノと似ている?

「ハイブリッドピアノ」というのは電子ピアノとアコースティックピアノの「良いとこどり」のようなタイプのピアノです。鍵盤の素材や、アクション機能はアコースティックピアノと同じであり、音は電子音で音量が調整できるという利点があります。

先日、このハイブリッドピアノを楽器店で試奏させていただきました。まさに、サイレント機能(消音時)と似ている、と感じました。音は電子音、タッチはアコースティック、という感想です。楽器そのものを共鳴させているわけではないので、どうしても「電子音」以上にはならないのでしょう…

サイレントピアノ(消音時)より利点があるとすれば、ハイブリッドピアノは、スピーカーも搭載されているということです。例えば、夜間に小さい音で練習しながら、家族に一緒に聴いてもらうこともできる、というわけです。

消音時でも打鍵音は響くことも…

 

気をつけたいことですが、消音時でも、打鍵音の「パタパタ」とした音はどうしても聞こえてしまいます。家の外まで聞こえることはないと思いますが、2階以上にピアノを置いている場合は、夜中に下の階に打鍵音が響く恐れはあります。

当の本人はヘッドホンをしているので、その打鍵音にすら気がつかないことも多いです(筆者自身がそうでした)。特に就寝時間は、気をつけましょう。

26年経った今

ピアノ購入後、10年くらい経った頃でしょうか。消音時に聴こえてくる音のうち、まず1音が鳴らなくなりました。タッチを少し変えると鳴る時もある、そんな程度でしたが。しかしこの頃から、数年にかけてさらに1音、また1音…と鳴らない音が増え、現在は5つ以上鳴りません。機械なので段々と劣化するのでしょう。

さすがに気になって、先日、調律師さんに修理についてお尋ねしたところ、こんな答えが返ってきました。20年以上前のサイレント機能は、部品が廃盤になっているものもあるので、修理不能です…と。

というわけで、修理はあっさり諦めることに。もし今後、夜中に練習がしたくなったら、電子ピアノで練習することにします。譜読みや暗譜の練習なら、電子ピアノで充分なので…。

まとめ:サイレントピアノを20年以上使ってみて。その特徴を紹介。

ここまでサイレントピアノについて紹介しました。まとめると次のようになります。

サイレントピアノ(消音時)の特徴

・ヘッドホンの音は電子音だが、タッチはアコースティックと同じように練習できる。ハイブリッドピアノと似た機能。

・サイレント機能の部分は機械なので、アコースティックの楽器本体よりも寿命が短い。

学生時代は練習時間が夜間中心だったため、サイレント機能が大活躍していました。26年経った現在では、ほとんど使用していません。しかし、サイレント機能分の金額(約20万)分の働きはしっかり活用できた、と感じています。

ピアノ購入を検討している方や、アップライトピアノに後付けを検討している方に、少しでも参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。