ピアノの作品で、オクターブの音型が出てくると、単音だけのフレーズに比べて、ものすごく難易度が上がると思いませんか?
一般的に、手が大きい人はオクターブを掴むのに有利だと思われています。しかし、比較的手の大きな筆者はオクターブ奏法がとても苦手でした。
ポピュラー音楽であれば、ちょっと楽をして「オクターブを単音だけ弾く」という方法もありなのですが、クラシックはやはり楽譜通り弾かなければいけません。特にメロディーでのオクターブは、豊かに美しく歌うように奏でたいものです。
この記事では、なぜオクターブが多用される音型が難しいのか、その意外と知られていない理由と克服する方法について、またオクターブを練習するメリットについて説明します。
もくじ
オクターブ奏法が苦手な理由
オクターブが連続して登場する音型は、難易度がとても上がります。そんな時でも、大柄なピアニストは楽々と弾きこなしているように見えますよね。
オクターブを弾くには、やはり手が大きくないと不利なのでしょうか。それについて説明します。
手が小さいのはオクターブ奏法に向かない?
「オクターブが届かない」という人は、「自分は手が小さいから」というのが理由だと思うでしょう。
意外と知られていないのですが、オクターブ奏法を苦手と感じる人の特徴は「手が小さいから」というだけではありません。
実は、中学生以上になれば、手の小さい人でも、オクターブはちゃんと届きます。物理的には可能なのです。では、オクターブの苦手な人は何が理由なのでしょうか。
オクターブ奏法は手の関節が柔らかい人が有利
知り合いに、とっても小柄で、手が小さいバイオリニストがいます。しかし彼女は、ピアノの鍵盤はオクターブを楽々掴めます。ピアノはほぼ未経験で、手が小さいにも関わらず、です。なぜでしょうか。
実は彼女は身体が生まれつき柔らかく、ヨガをしても伸ばすところがないくらい、極端に柔らかい関節を持っています。そのため、指の関節もとても柔らかいのです。
ある日、彼女がピアノのオクターブを楽々と掴んでいるのを見た時、オクターブ奏法が困難な人は、手の大きさよりも、手の関節の硬さの方に原因があるのだとあらためて気がつくことになりました。
あなたの関節はどう?硬い人は自分で対策を
筆者は学生時代から師匠に、「あなたは手が大きくていい手をしているのに、なぜオクターブがきれいに弾けないの?」とよく言われてきました。
オクターブの連続を弾くと、どうしても隣りの音まで触ってしまうのです。ただの練習不足だと思い、そういう所は他よりも余計に練習しました。それなのに一向に上達しなかったのです。
そんな時、前項のバイオリニストのエピソードがあり、自分がなぜオクターブ奏法が苦手なのか明確になりました。
実は筆者は、極端に身体が硬い人間。人と比べて硬いことを、少しは自覚していました。ただし、それがピアノのテクニックにまで影響しているなんて、長いこと気が付かなかったのです。
つまりこういうことです。
身体が硬い→手の関節も硬い→手が広がりにくい→ピアノのオクターブが掴みにくい→オクターブ奏法が苦手
これに気が付かなかったため、オクターブが苦手という認識も薄く、「オクターブの基礎練習」が人よりも多く必要だということを、長年、自覚すらできなかったのです。
楽曲の中にあるオクターブ奏法をがむしゃらに練習したところで、技術力がなかなか上がらなかったのは、その根本的な原因が分かっていなかったから。そして、楽曲だけのオクターブの練習では不十分だったのです。
オクターブ奏法が苦手と感じる人の中には、筆者と同じように、単なるテクニック不足や練習不足が原因でなく、「身体や関節が硬い」ことが原因の人がいるということです。
そのような人は、人よりも多くオクターブの練習すべきなのですが、残念ながら、そこを指摘してくれる指導者はなかなかいません。自分で対策をすべきなのです。
オクターブ奏法が苦手だと、脱力できない
オクターブ奏法が苦手な人は、手を広げる時につい、手や腕に力が入ってしまうという特徴があります。それにより、本来の力が発揮できないという残念な演奏になってしまうことも多い。
ピアノの奏法では「脱力」はテーマとしてもよく取り上げられる程、大きな課題です。
オクターブ奏法が苦手な人はぜひ、基礎練習をして、克服することをお勧めします。そうすることで、和音もしっかり掴みやすくなり、上手に脱力しやすくなります。それは、奏でる音楽に深みが増すということにもつながり、とても効果的です。
オクターブの練習をすることは、ピアノ経験者だけでなく、大人のピアノ初心者さんにとっても効果的です。
その基礎練習については、次の項で紹介します。
オクターブの連続を苦手に感じないために
オクターブの奏法が苦手にならないために、子どもの時にできること、大人になってからでもできる対策について説明します。
子ども世代にこそ多く練習すべき
小学校の高学年くらいになると、オクターブを使う楽曲が少しずつ出てくると思います。
中には、まだオクターブが届かないという子もいるでしょう。クラシックは楽譜通り弾くことが前提です。しかし、オクターブ届かない時期であれば例外的に、音を抜いて単音で弾くということをよしとする先生もいます。
左手のバスとして登場する場合は、シンプルな形が多いため、初めてでも挑戦しやすいです。ところが、右手のメロディーとしてのオクターブは、左手よりも少し複雑なこともあるので、まだ単音で弾こう、とする子がいると思います。
そのように、右手のオクターブの練習の開始が遅くなってしまうと、左手よりも右手のオクターブの方が苦手となってしまう可能性があります。
子どもは身体が柔軟です。関節も柔らかい。少し頑張れば届く、という状況であれば、出来るだけ早いうちにオクターブ奏法にトライすることが理想です。若いうちに、練習量が多いほど、大人になっても、ずっと関節の柔らかい手を維持できるからです。
オクターブが苦手な人は、日頃から基礎練習を
もちろん、大人でも練習すればオクターブ奏法が楽になります。
楽曲で出てきたオクターブの難しい箇所を集中して練習することも大切ですが、「オクターブの基礎練習」を追加するとより効果的です。
ピアノ学習者定番の教本、「ハノンピアノ教本」の中に、オクターブの練習方法がいくつか載っています。
少しでも苦手と感じる人は特に、普段の基礎練習の中に、オクターブの練習を取り入れることが大切です。
尚、身体や関節が硬い人は、一度手が広がりやすくなっても、基礎練習を辞めてしまうとすぐに元に戻ってしまうのでご注意。この基礎練習は、常日頃から行うようにしましょう。その必要性、きっと周りからは指摘してくれませんので、自分で気がついて実行した者勝ちですよ。
まとめ:ピアノのオクターブ奏法、難しい本当の理由と克服方法。
ここまで、なぜオクターブ奏法が難しいのか、その意外な理由と克服方法について、説明しました。
手が小さい人は、オクターブ奏法に不利だとよく言われますが、苦手の原因が、身体や指の関節が硬いことだというのは意外と知られていません。関節が硬いと、手の開き方が狭く、オクターブを掴むことが人よりも困難です。
オクターブは若いうちから練習するのが理想ですが、大人の学習者でも、基礎練習を続ければ、随分と掴むのが楽になり、腕の脱力もできるようになります。
ぜひ、ハノンピアノ教本などを利用して、オクターブの基礎練習をし、オクターブで自由に弾けるようになりましょう。きっとテクニックが上がって、ピアノがより身近になりますよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。