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ピアノの最適な環境とは?家庭でのお手入れ対策

ピアノは多くの部分が天然素材で出来ており、とてもデリケート。快適な環境でないと、負担がかかり、不調や故障の原因になってしまいます。

できるだけ長く付き合うために、この記事ではピアノにとって最適な環境について説明します。

ピアノはデリケート

ピアノの不調や故障の多くは、湿度が原因となることが多いです。

ピアノの外側は塗料でコーティングされているので、湿気を吸いにくくなっていますが、内部のほとんどは、木、フェルト、金属でできており、湿度にはとても敏感です。

長時間、湿気の高い環境に置かれると、木とフェルトは湿気を吸って膨み、鍵盤が重くなったり戻りが悪くなったりします。カビが発生する場合もあります。金属部分(弦やフレーム)は、さびることもあります。

ピアノの快適な状態というのは、人と同じと思ってください。暑すぎたり、寒すぎたりするのは不快に感じますし、湿度が高すぎたり、乾燥しすぎることもよくありません。

ピアノにとっての快適な環境

日本の気候は高温多湿なのが特徴。その上、住宅の高気密・高断熱化が進んでいるため、湿気が室内にこもりやすくなっています。

どのような環境がピアノにふさわしいのか、具体的に説明します。

湿度は40〜70%を目安に

日本の気候は夏は湿度が高く、冬は乾燥します。ピアノにとって理想は、夏だと20〜30℃、湿度は40〜70%、冬では10〜20℃、湿度は30〜65%が理想です。

ピアノの部屋には、湿度温度計を用意して、常に部屋の環境を確かめるようにしましょう。

また、最適な湿度を保つためには、風通しのいい環境を作ることも大切。アップライトの場合、壁から10〜15センチほど離して置くようにしましょう。

直射日光・エアコンの直接的な風は避ける

ピアノは、急な温度変化もNGです。温度や湿度が急に変化すると、ピアノ内部や壁に結露が発生し、さびや故障の原因になるからです。エアコンの水滴が落ちる可能性のある真下や、風が直接ピアノに当たる場所は避けましょう。

また、直射日光で過度に乾燥することで、外装表面のひび割れや音程が狂う原因となります。

そのため、窓際や外壁に面した場所は避けたほうが安心。直射日光が当たる場所に置く場合は、厚手のカーテンをして、できる限り遮光しましょう。

家庭でのピアノのお手入れ&対策

家庭でもできる、ピアノの適切なお手入れと対策方法を紹介します。

天気の良い日にピアノを干す

湿気により鍵盤が重くなったり、音がこもったりするようになります。その対策として、天気の良い日には鍵盤の蓋や屋根を開けて、約2〜4時間くらい風を通すと効果的です。

逆に、湿気が多い雨の日や夜間は窓を閉めて、ピアノの蓋も閉めることが大切です。日頃から練習後は、きちんと蓋をして、片付けるようにしましょう。

長雨が続いたらドライモードにする

湿度が80%を超えた状態が続くと、カビが発生しやすくなります。また雨の日は洗濯物を室内干しにすることもあり、家の中は想像以上に湿気だらけ。

そういう時は、室内を換気したり、エアコンのドライモードや除湿機を使いましょう。ただし、ピアノは急激な変化に弱いので、温度や湿度の設定を極端に変えすぎないよう、注意してください。

湿気対策や虫害予防のお助けグッズを使う

ピアノの湿度対策には、ピアノ専用の乾燥剤を、虫害予防にはピアノ専用の防虫剤を使うのが安全です。

ピアノ内部に入れっぱなしになったり、入れ方によっては雑音が出たりすることもあるので、調律師さんに相談しながら使用することをお勧めします。

まとめ:ピアノの最適な環境とは

ここまで、ピアノにおける最適な環境について説明しました。ピアノの部品の多くは天然素材でできているため、とてもデリケート。人間と同じように、過酷な環境には弱いものです。

ピアノは大切に扱うことで、何十年と付き合っていける楽器です。今の部屋の環境がピアノにとっていい状態かどうか、まずは湿度温度計を手に入れて、チェックしてみましょう。

そしてこれからも末長く、ピアノライフを楽しんでください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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ピアノの調律は何のため?

ピアノはとてもデリケートな楽器です。気持ちよく練習するために、また長く使い続けるためには、定期的な管理が必要となります。

そのひとつが「調律」。ひと言で言えば、ピアノのチューニングであり、健康チェックのようなものです。

この記事は、調律をする必要性について説明します。

ピアノの調律とは?

グランドピアノやアップライトピアノ、つまりアコースティックのピアノ(生ピアノ)には調律が必要です。その理由を説明します。

ピアノの調律は健康チェックとチューニング

ピアノは木、フェルト、金属などからできています。日々の演奏や温度・湿度などの気候の影響で、それらの状態が変化します。そのため、ピアノ全体の調子を整えるための作業が定期的に必要です。

温度・湿度などの変化で、ピアノの弦が伸縮するため、音程も狂ってきます。そのため、鍵盤ごとの音のピッチ(高低)を正す音作業が必要となります。

尚、音は空気の振動です。空気が、1秒間に何回振動するかをHz(ヘルツ)という単位で表します。中音部の「ラ」は440〜442Hz(ヘルツ)が一般的。この数値が大きいと音は高く、小さいと低い音となります。

ピアノは自分でチューニングできないの?

弦楽器や管楽器は演奏の度に、奏者がそれぞれチューニングします。オーケストラの演奏で、曲が始まる前にステージで、1人のバイオリニスト(コンサートマスター)を基準に、音を合わせている光景を見たことがある人もいるでしょう。

ほとんどの楽器は、普段からその場で奏者がチューニングし、音程を調整します。

一方、ピアノは自分ではチューニングできません。そもそも、弦の数が弦楽器とは比べものになりません。バイオリンは弦が4本ですが、ピアノはなんと、鍵盤の数より多い約220本も!

ピアノのチューニングは、専門的な勉強と訓練を積んだ調律師でないとできないことなのです。

調律しないとどうなる?

調律にはお金もかかりますし、定期的な調律をついつい見逃すことも。

しかし、調律をせずに放置をすると、ピアノに良くありません。音程の狂いだけでなく、部品の不具合が起こることもあります。放置すれば、さらに他の部品にまで影響が出てしまいます。

そのため、定期的な調律が必要なのです。

調律中はずっと付き添いが必要?

 

一般家庭では、調律は年に1度が平均ですが、楽器の年数、前回の調律からの年数、部屋の温度・湿度管理、などによっても異なることもあります。

調律時間はピアノの状態にもよりますが、平均約2時間ほど。付き添いは最初と最後だけでOKです。

ピアノの状態で気になることや希望があれば、必ず最初に伝えましょう。仕上がりの弾き心地は、持ち主であるあなた自身でチェックしましょう。

終了時、調律師さんの時間が許すようでしたら、お茶を出して差し上げると丁寧です(お茶をピアノの上に置くことは絶対に避けましょう)。

調律後の試し弾き、何をチェックすればいい?

調律が完成した時、「(ピアノを)チェックしてください」と言われることがあります。

この時は、ピッチ、タッチ、音色など弾き心地に違和感がないかを、楽器の持ち主がチェックするわけです。正直、何をどうチェックしたらいいの?と戸惑うかもしれません。

確認として、両手オクターブで下から半音ずつ弾いていくという方法があります。ユニゾンで弾くと、ピッチのずれは一目瞭然で確認しやすいです。それで違和感なければ、おおよそ問題なしだと思います。

タッチや音色にこだわる人は、自分のレパートリーを弾いて試すのもいいでしょう。ただし、楽曲を弾くことは、全ての鍵盤を使うわけではないので、ピッチの違和感に関してチェックすることは難しいかもしれません。やはり「両手オクターブ」で、チェックすることをお勧めします。

※ユニゾン・・・複数人でひとつの旋律を歌うこと。楽器演奏では、複数の楽器で同じ音との旋律を演奏することを言う。ピアノでは、同じ音を異なるオクターブで同時に弾くこと。

まとめ:ピアノの調律は何のため?

ここまで、ピアノの調律をする必要性についてお伝えしました。調律とは、ひと言でいえば、ピアノのチューニングでもあり、健康チェックのようなものです。

日々の温度・湿度などの変化や演奏などにより、ピアノは少しずつ音程が狂ってきますし、楽器の中の状態も変化していきます。

音程や修理が必要なところを放置しておくと、不具合が起こることもあり、定期的な調律が必要となります。一般家庭では平均で年に1度がお勧めです。

本来ピアノは、長く演奏できる楽器です。専門家によるお手入れを定期的にして、より寿命を長くしてあげてください。

あなたのピアノライフが充実したものになりますように。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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ピアノの語源について。

ピアノは、幼稚園や学校などで日常的に演奏される、とても身近な楽器です。

この記事では、そんなピアノの語源について、簡単に説明します。

ピアノとは?

ピアノは「鍵盤楽器」ですが、鍵盤を押すと連動したハンマーが上がり、弦を叩くことによって音が鳴ります。

弦を叩くことから「弦楽器」でもあり「打楽器」でもあります。

全ての機能をあわせて、「打弦鍵盤楽器」と言われます。

楽器の構造についてもっと詳しく知りたい方はこちら→ピアノの構造を知ろう

ピアノの語源

ピアノは、1709年、イタリアの楽器製作者、クリストフォリが制作しました。

当時はチェンバロやクラヴィコードが普及されており、多くの場所で演奏されていました。

チェンバロは音量の調節ができないという難点がありました。一方、クラヴィコードは強弱をつけられる楽器でしたが、音量が非常に小さいというのが難点でした。

そんな中、2つの楽器をいいとこどりしたような特徴を持つピアノが完成されました。

名前は「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ Clavicembalo col piano e forte」。イタリア語で「強音も弱音も出せるチェンバロ」という意味です。

それが次第に略され、「ピアノフォルテ」または「フォルテピアノ」と呼ばれるようになり、さらに略され、現代のように「ピアノ」と呼ばれるようになりました。

つまり「ピアノ」という楽器名も、イタリア語ということが言えます。

ピアノの歴史についてもっと知りたい方はこちら→ピアノの構造を知ろう

ピアノの略語

オーケストラのスコアなど、複数の楽器編成の楽譜などでは、楽器を表す際「略語(略称)」が使われます。

バイオリン(violin)の略語は 「Vn」。フルート(flute)の略語は「Fl」。

一方で、ピアノの略語は「Pf」ですが、これは、「ピアノフォルテ(pianoforte)」が由来となっています。

まとめ:ピアノの語源について。

ここまでピアノの語源について説明しました。

ピアノは1709年、既に普及されていた楽器、クラヴィコードやチェンバロの良い点を併せもった楽器として完成されました。

当初の名前は「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」。イタリア語で「強音も弱音も出せるチェンバロ」という意味です。

それが短くなり「ピアノ」と呼ばれるようになりました。

ピアノは、現代でも改良され続けているのだそうです。将来、どのようなピアノが登場していくのか、楽しみですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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楽器の王様、ピアノは何楽器?

オーケストラの楽器を分類すると、バイオリンやチェロは「弦楽器」、フルートやトランペットは「管楽器」、ティンパニーやマリンバは「打楽器」に分けられます。

では、楽器の王様と言われるピアノは、一体何楽器なのでしょうか?

他の楽器に比べ、ピアノは音が実際に鳴るしくみが外から見えにくい場所にあるので、「何楽器」と言うのか、イメージが湧きにくいかも知れません。

この記事では、ピアノが何という楽器に分類されるのか、音が出るしくみと共に説明します。

ピアノは何楽器?

ピアノは何楽器なのか、少しずつ見ていきましょう。

鍵盤楽器

ピアノは鍵盤があるので、一般的に「鍵盤楽器」と言われます。

鍵盤楽器には他にオルガン、アコーディオンなどがあります。

オルガン

アコーディオン

多くの人が子どもの頃に経験する鍵盤ハーモニカも、「鍵盤楽器」ですね。

ピアノは弦楽器や打楽器の要素も!

グランドピアノの内部を上から覗いてみましょう。約220〜230本あまりの「弦」が縦方向に(斜め方向にも)張りめぐらされています。

下の図はピアノの内部を横から見た様子です。弦とハンマーがあります。

「音が鳴る」しくみとしては、①鍵盤を押すと②ハンマーが上がり、弦を叩くことによって③ピアノの音が鳴る

というしくみです。

つまり、ハンマーで弦を叩いて音を出すので、「打楽器」とも言えますし、弦を響かせて音を鳴らすので、「弦楽器」とも言えます。

グランドピアノの屋根(フタ)を開けて音を鳴らすと、角度によっては上記のような「音が鳴るしくみ」が見れることもあります。

身近にグランドピアノがある人は、1度実際に見て、確認してみるとおもしろいですよ。ただし、屋根(フタ)を開けるときは、充分に気をつけて開けましょう。

ピアノは「打弦鍵盤楽器」

ピアノは、前項で説明したように、「鍵盤楽器」と呼ばれ、「弦楽器」や「打楽器」の要素も併せ持っています。そのため、「打弦鍵盤楽器」と言われます。

楽器の王様と言われるだけあって、単なる「鍵盤楽器」だけでなく、「弦楽器」や「打楽器」という要素を持ちながら、オーケストラよりも広い音域を奏でるのがピアノです。

ピアノを奏でる時は、そういった要素も意識して、音の響きを感じられると素敵ですね。

ピアノの構造についてもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ→https://marmalade-music.club/piano-kouzou.html

まとめ:楽器の王様、ピアノは何楽器?

ここまで、ピアノは何楽器か、ということについて説明しました。

結論から言うと、「打弦鍵盤楽器」と言います。

「弦楽器」や「打楽器」の要素を、鍵盤を使って表現する楽器です。

ピアノは実際に音が出る構造が分かりにく楽器ですが、音が鳴るしくみを知ることで、ピアノの音の出し方をもっと豊かにイメージできることでしょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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ピアノの鍵盤数が88鍵になるまで。それ以上増えない理由。

ピアノの鍵盤数は世界共通、88鍵が標準です。

ピアノが発明された18世紀はじめは、わずか54鍵でした。それからずっと進化を遂げながら、19世紀末に現代の88鍵になります。それ以降、改良されながらも、鍵盤数は変わらず88鍵のままです。

この記事では、ピアノの鍵盤数が88鍵になるまでの進化と88鍵以上に増えない理由について、簡単に説明します。

ピアノが発明された当初は54鍵

ピアノはイタリアの楽器職人、クリストフォリによって、1709年に発明されました。

当初の鍵盤の数は、わずか54鍵。それまで、弦をひっかいて音を出す「チェンバロ」が主流でした。強弱をつけられないチェンバロに対して、強弱のつけられるピアノの誕生は、当時としてはものすごく画期的なことでした。

ピアノの進化と発展

クリストフォリの発明から、ピアノは常に進化をしていきました。そして、より幅広い表現力を求める作曲家の要望に応じて、次第に音域を拡大していきます。

中でも、ベートーヴェンはいつもピアノ工場に出入りをし、自分の要望を伝えていたそうです。61鍵、68鍵、73鍵・・・と鍵盤数の増加に応じて、鍵盤数をめいいっぱい使うような名曲を生み出していきました。

88鍵になって以降、鍵盤数が増えない理由

現代の鍵盤数88鍵になったのは、19世紀末。それ以降もピアノは進化していきましたが、鍵盤数は100年以上も変わらず、88鍵盤のままです。

その理由について、説明します。

既にオーケストラの音域を超えている

ピアノの88鍵という音域は、既に「オーケストラの音域」を満たしています。オーケストラの中で1番低音のコントラバスより低い音や1番高音のピッコロより高い音ですら、ピアノの88鍵で出せてしまうのです。

実は、人の耳が音程として聞き分けることが出来る音域があります。

試しにピアノの1番高い音・1番低い音を弾いてみましょう。音程(ドレミ)が分かりにくいと思いませんか?

もっと具体的に言うと、1番低い「ラ」の音とその1オクターブ上の「ラ」を弾き比べると、上の音の方が、はっきりと「ラ」の音だと認識しやすいと思います。

このような理由から、これ以上音域を増やしても、つまり鍵盤の数をこれ以上増やしても、音楽的にほとんど意味がないということになるわけです。

88鍵以上の特注ピアノ

ただし例外として、一部のメーカーが特注で生産している、92鍵、97鍵というピアノもあります。低音部の音域が増えています。

これは、他の鍵盤を弾いた時に、低音部の弦と共鳴して豊かな響きを与えたり、音色に深みを出したりするためのものであり、単音で使用するものではないようです。

筆者が知っている中では、兄弟ピアノデュオ「レ・フレール」さんがこういうタイプのピアノを使用されています。彼らは「ブギウギ」というジャンルのピアニストで、クラシック以上に、低音の動きや響きが演奏の鍵を握っているようなんです。そのため、このようなタイプのピアノが大きな力を発揮するのでしょうね。

まとめ:ピアノの鍵盤数が88鍵になるまで。それ以上増えない理由。

 

ここまで、ピアノの鍵盤数が88鍵になるまでの進化とそれ以上に増えない理由についてお伝えしました。

ピアノが発明された当初、鍵盤はわずか54鍵。主流だったチェンバロに比べ、音の強弱がつけられるピアノの登場はとても画期的なものでした。

その後も音楽の発展と共に改良が重ねられ、次第に音域も拡大。19世紀末に現代と同じ88鍵になりました。

それ以降、ピアノそのものは進化をしますが、鍵盤数は100年以上変わらず88鍵のままです。

その理由は、これ以上音域を増やしても、人の耳が音程として聴き分けることができないためだと言われています。既にオーケストラの音域を十分に満たしているのです。

今でも進化を続けているピアノ。モーツァルトもベートーヴェンも、現代のピアノを見たらきっと驚くでしょうね。

この記事では、ピアノの歴史について少しだけ触れましたが、歴史について詳しく知りたい方はこちらをどうぞ→ピアノの歴史をたどってみよう

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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ピアノの歴史をたどってみよう

大きなコンサートホールでオーケストラとも共演可能な「楽器の王様」とも言われるピアノ。しかし、ピアノが誕生した当初は、今と同じ形だったわけではないようです。

ピアノは1709年頃、フィレンツェのクリストフォリにより完成されました。以来300年に渡り、さらに豊かな音をめざして、さまざまな設計が考案され、改良を重ねて、現在と同じ造りとなりました。

この記事では、そのピアノの歴史について紹介します。

ピアノが誕生するまでの鍵盤楽器

ピアノが誕生する前、既に普及していた鍵盤楽器には次のようなものがあります。

オルガン

15世紀頃、ヨーロッパで教会の楽器として普及していました。独奏楽器としても合唱の伴奏としても使われ、ルネサンスから後期ロマン派の時代にかけて活躍しました。鳴らしたいパイプに下から風を送り、圧力をかけた空気がパイプを通って音を鳴らします。パイプは大きなリコーダーのような作りになっており、長さによって音高が決まります。つまり、鍵盤楽器ではありますが、音の鳴るしくみは全くピアノとは異なるものです。

クラヴィコード

16世紀にはヨーロッパ全土に、17世紀には特にドイツで家庭用として普及しました。弦をタンジェント(棒のようなもの)でたたいて鳴らします。音量はある程度調節できるものの、全体として音量が小さく、小さな部屋での演奏にしか適していませんでした。

J.S.バッハやその息子たちも好んで演奏していました。

チェンバロ

弦をはじいて音を出す楽器で、16世紀末以降に普及しました。音域も広く、オルガンより手軽なため、室内や演奏会などに適していました。貴族のサロンでも好まれ、器楽音楽の普及と共に広く使われるようになりました。ただ、音量の調節は出来ませんでした。

なおグランドピアノの形の元となった楽器であり、呼び方は国によって異なります。「チェンバロ(ドイツ語・イタリア語)」「クラヴサン(フランス語)」「ハープシコード(英語)」などと、呼ばれます。

ピアノの誕生と発達

1709年頃、奏者の技術で音量を調節できるピアノが製作されます。以来300年に渡り、さらに豊かな音をめざして、さまざまな設計が考案され、改良を重ねてきました。

ピアノの誕生と正式名称

18世紀初め、すでにチェンバロが普及され、多くの場所で演奏されていましたが、音量の調節ができないという難点がありました。

そんな中、1709年頃にフィレンツェのクリストフォリ(1655–1732)により、ピアノが完成されました。グラヴィコードよりも大きな音が出て、弾き方によって音量を変えられるものです。これが最初のピアノで「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(強音も弱音も出せるチェンバロ)」と名付けられました。

小さなハンマーで弦を叩いて音を鳴らします。また奏者が鍵盤を押す力を加減することによって音量をコントロールすることが可能です。

この仕組みは、①鍵盤を押すと連動されたハンマーが動き、②弦を下から叩き上げる、というメカニズムとなっています。これは現在のピアノのメカニズム(下の図)とほぼ同じです。

さらにハンマーが弦をたたいたらすぐに離れる仕組み(エスケープメント)というメカニズムとなっています。弦にハンマーが触れたままだと振動して音が鳴らないためです。

また、ハンマーの速度をより速くするレバーも考案し、各弦にダンパーをつけ、奏者が鍵盤から指を離すとダンパーが弦に触れて振動が止まり、音が止むようになりました。

この「鍵盤+ハンマー+エスケープメント+ダンパー」の組みあわせがピアノの「アクション」とよばれます。

さらにピアノには「響板」があり、弦が振動すると響板が共鳴し、弦そのものの響きよりさらに大きな音量に増幅されます。現代のピアノで、「響板」の場所を確認してみましょう。

ピアノが完成されて以降、さまざまな改良が重ねられてきましたが、この「弦を叩くアクション」が基本のメカニズムであることは、現在のピアノと変わりありません。

世界に広めたジルバーマン

クリストフォリのピアノはまずドイツで注目されました。その後、ジルバーマン(1683–1753)は1725年頃、クリストフォリのピアノとよく似たものを製作しました。彼はこの楽器をJ.S.バッハに提供し意見を求めました。しかしバッハは、このピアノをあまり好みませんでした。タッチが重く、高音部が弱いことを指摘したのです。

それから約20年後、バッハがジルバーマンの別のピアノを試奏した際は、そのピアノに満足したそうです。しかしバッハが改良されたピアノのために楽曲を作ることはありませんでした。

したがって、バッハが生涯に渡って鍵盤楽器のために作曲した作品はどれも、オルガンかチェンバロのための曲ということになります。

ジルバーマンはクリストフォリのアクションを復元し、多くの音楽家に紹介して、ピアノを世に広げました。さらに独自の機構を装備しました。彼の功績は現在のピアノの普及に、大きく影響しています。

その後、ドイツのピアノ製作は、新しいアイデアのアクションの考案から発展し、ウィーン式アクションが登場します。

ピアノの発達

ジルバーマン後、クリストフォリ式のアクションはタッチが重いことから、当時普及していたクラヴィコードの軽いタッチに慣れた人々には不評でした。クラヴィコードのようなタッチを求めて、ウィーン式アクションが考案されました。

ウィーン式アクション

ウィーン式はアクションが軽く、そのためより俊敏な演奏が可能で、音色はやや細くなるが華やかで軽やかな澄んだ音がしました。このウィーン式ピアノを開発したのがヨハン・アンドレアス・シュタイン(1728-1792)で、さらにアントン・ワルター(1752-1826)によって改良が加えられました。

このアクションのピアノは、当初はピアノ本体もクラヴィコードに似て箱型に製作され、スクエアピアノまたはテーブルピアノと呼ばれました。

なお、ウィーン式ピアノはハイドンとモーツァルトのお気に入りでした。

イギリス式アクション

19世紀中頃になると、音楽の場がサロンからコンサートホールに移ることになり、豊かな音量が求められるようになりました。そのため、ウィーン式アクションは、大きく・力強い音には不足している、として批判されるようになりました。

ジルバーマンの弟子、ツンペ(1726〜1790)はイギリスへ向かい、クリストフォリのアクションを単純化したような構造のイギリス式シングル・アクションと呼ばれるアクションを組みこみ、成功しました。そこから欠点を補うため、さらに改良を加え、イギリス式ダブル・アクションとして普及しました。これにより、イギリスのスクエアピアノの人気はさらに高まりました。

一方、グランドピアノのイギリス式アクションはバッカーズ(?〜1778年)により、開発されました。その後、このアクションを、イギリス式ピアノ製造会社であるブロードウッド社が採用し、さらに改良を加えました。

イギリス式アクションのピアノは、音色が豊かで音に深みがあることや、品質の良さで高く評価されます。一方で、アクションがやや重く反応が遅いので速い打鍵が難しいという点もあります。華やかな音を好む人たちには愛されましたが、俊敏で軽やかな演奏には不向きな造りだったようです。

ベートーベンはウィーン式のピアノが好きでしたが、フランス製のピアノも所有していたといわれます。フランス製はどちらかというとイギリス式に近い造りで、ベートーベンが自作品を演奏するにはウィーン式とイギリス式、両方の長所が必要だったようです。

19世紀のピアノ

クリストフォリが製作したピアノから更にアクションが改良されて、現代のピアノに近づいていく流れを紹介します。

現代アクションの確立

19世紀初めから、長年の歳月をかけて、エラール(1752〜1831)が新しいアクションを考案し、これまで以上に速い打鍵が可能になりました。それにより、世界のピアノのテクニックも飛躍的に拡大します。徐々に他のピアノメーカーもこの仕組みに移行するようになりました。この機能は現在の一般的なグランドピアノのアクションとして採用されています。

フレームの改良

さらにピアノメーカーに求められたのは音量でした。

1825年、アメリカのバブコック(1785〜1842)によって継ぎ目のない一体型の鋼鉄製フレームの特許が取得されました。バブコックのフレームはスクエアピアノ用のもので、1843年には一緒に働いていたチッカリング(1797〜1853)がグランドピアノ用の鋳鉄製フレームを製造するようになりました。

現代のピアノで「フレーム」部分を見てみましょう。

金属製フレームには音量と頑丈さ以外に、温度や湿度の変化による影響を受けにくいため、調律が安定しやすいという利点があります。そのため当時、金属製フレームのグランドピアノはピアニストに人気のものとなりました。

フランツ・リスト(1811〜1886)はチッカリング社のピアノを賞賛し、世界中で楽器が評判になりました。その後、グランドピアノは金属製フレームが標準規格となり、19世紀に製造されたピアノは現在のものとほとんど変わらない造りとなりました。

ヘンリー・スタインウェイ(1797〜1871)が率いる会社も、金属製フレームのピアノを製造するようになりました。ニューヨークで創業し、世界一の高級グランドピアノメーカーとして知られています。

アップライトピアノの普及

職業音楽家はグランドピアノを選ぶ一方、アマチュアの演奏家たちにはスクエアピアノが家庭で愛用されていました。

そして1830年頃、垂直型のアップライトピアノが登場します。場所を取らず、狭い部屋にも置けることで人気となり、19世紀後半には一般家庭にも広く普及しました。

19世紀半ば以降にほぼ完成

19世紀半ばには、ピアノのメカニズムは完成し、現在のものとほぼ同じになりました。大ホールに対応できる音量や、オーケストラと共演できる音量になるまでに改良されました。

そして19世紀末、音域は現在と同じ88鍵になりました。このように300年以上の歴史を経て、音の質、タッチ、音域、音量、に関して現代のピアノに近いピアノが完成しました。

まとめ:ピアノの歴史をたどってみよう

ここまでピアノの歴史について紹介しました。

ピアノは1709年、フィレンツェのクリストフォリによって完成されました。当時、既に普及していた鍵盤楽器「クラヴィコード」より大きな音が出て、「チェンバロ」にはない「音量調節可能」の楽器でした。

基本のメカニズム「弦を叩くアクション」がピアノの大切な機能であることは、クリストフォリが製作した当初と同じです。さらに300年に渡り、多くのピアノ製作者たちによって改良が重ねられ、19世紀半ばには現代のピアノとほぼ同じ形に完成されました。それにより多くのピアニストが求める音質、タッチ、音域、音量の実現がなされたのです。

そして今では、オーケストラと共演しても負けない、立派な響きで聴衆を魅了する楽器となりました。習い事としてもとても人気です。

この記事がピアノ学習をする上で、楽器について学ぶきっかけになれたら幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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ピアノの蓋。正しく知って上手に活用しよう。

学校などでよく見かけるグランドピアノですが、「ピアノのフタ」と言えば、どこの部分を想像するでしょうか。

ピアノ胴体そのものの「大きく開く蓋」の部分を想像する人もいれば、「鍵盤の蓋」を想像する人もいるでしょう。

名称としては、ピアノ胴体部分の大きな蓋は「屋根」鍵盤の蓋のことを「鍵盤蓋」、といいます。

この記事では、ピアノのフタと呼ばれる「屋根」と「鍵盤蓋」について、詳しく紹介します。

ピアノのフタについて

「ピアノのフタ」を含むピアノの名称について確認しましょう。

グランドピアノ名称

グランドピアノの名称を確認してみましょう。

上の図から分かるように、正式名称として「蓋」、という名称がついているのは「鍵盤蓋(けんばんふた)」のことです。

しかし実際には、ピアノの胴体部分にある「前屋根」「大屋根」のことも「ピアノのフタ」と呼ぶことが多いです。「鍵盤蓋」と区別するために「屋根」という名称がついているのかもしれません。

たとえば、コンサート出演時、共演者に「(伴奏として)ピアノのフタどのくらい開けましょうか?」などと話し合います。この時の「フタ」とは、「屋根」のことを指します。むしろピアノの「屋根」のことを「屋根」と呼んでる人なんて、これまでほとんど知りません…

ただ、この記事では区別するために、「前屋根」「大屋根」の部分は名称どおり「屋根」と呼ぶことにしますね。

グランドピアノの屋根の働き

ピアノは楽器そのものを共鳴させて、豊かな響きを奏でます。グランドピアノは「屋根」の開き具合で音量や音の響きなどを調節できるようになっています。

そして屋根を「全て開いた」状態のことを「全開」(ぜんかい)といいます。イラストや、コンサートでもよく見かける、このような↓開き方のことです。

「全開」が1番音量と響きがあり、音質はクリアーな音がします。開き方を全て数えると5段階くらいに調節できます。

以下、①→⑤に行くにしたがって、響きが減り、音量は小さめになっていきます。音質はくぐもったような音になる傾向があります。

①全開

②半開

③小さい突上棒のようなもの(機種によりないピアノもある)で開けた状態

④「前屋根」だけ開けて「大屋根」は全く開けない状態

⑤前屋根すら開けない状態

また、響きが減ると、鍵盤が重く感じる傾向があります。同じピアノなのに、とっても不思議です。

屋根はどのくらい開けるのが理想?

屋根は5段階くらいに調節できることを説明しましたが、どのくらい開けるのが理想なのでしょうか。シーン別に説明します。

コンサート会場などで

ピアノのコンサートや発表会など、ソロで演奏する場合は「全開」にすることが多いです。これは、十分な音量、響きが必要になるからです。

声楽や弦楽器などの伴奏になると、半開などにしたりします。場合によっては小さな突上棒を使って、ほんの少しフタを開ける状態で弾くこともあります。コンサート会場が響きすぎる場合は、全く開けないこともあります。共演する声楽家や楽器とのバランスがとても重要になってきます。

「屋根」はピアノの音を反響させる働きがありますが、会場の環境によっては、声楽家や楽器の音ですらも、うまく反響させてくれることがあります。そういう場合は、全開で演奏することもあります。

会場そのものの響きや共演者との音量のバランスなどは、人前で演奏する際はいつも悩ましい問題です。

家庭での練習では

日頃の練習としては、ピアノが置かれてある部屋の響き方、外への音の漏れ方などにより、屋根の開き方は様々なようです。「前屋根」だけ開ける人、半開の人、などが多いでしょう。中には「前屋根」すら閉めて、譜面台をピアノの上に乗せた状態で弾く人もいます。

なお、先ほども述べましたが、開ける部分が多いほど、よく響くため「鍵盤が軽く」感じます。そうなると、一見、「屋根を全開すると弾きやすい」と感じます。

そのため、「指のテクニック的には、閉じて練習する方が『指の訓練』につながるのかな?」とも考えられます(指に負荷をかけて鍛える、的なイメージです)。

そう考えた学生時代に、師匠に質問してみました。そこで言われた内容は以下の通りです。

大事な本番(人前で弾く機会)が控えている直前は、全開で練習した方が良いとのこと。その理由は、よく響くことで「自分の音が細部までよく聴こえるため」です。

確かによく響いた方が、音が繊細に感じとれ、演奏する音色にとても影響します。

音楽をするということは、テクニック的に自由に動く指を作ることも必要ですが、それ以上に「表現する」=「自分の音をよく聴く」ことが大切だとあらためて感じた助言でした。

アップライトにも屋根がある

アップライトピアノにも屋根があります。

「屋根」の部分は、普段は楽譜など物を置いたり、ピアノカバーをしたりすることが多いと思います。

時には、開けて弾いてみましょう。グランドピアノの屋根と比べて、簡単に開けることができます。

屋根を開けることで、音がクリアーになり、自分の音がさらに細かく聴こえるようになります。音楽的な表現力を身につけるためには、時々は開けて練習することも効果的です。

鍵盤蓋には気をつけるべし

この辺りで「鍵盤蓋」についても触れたいと思います。

指をはさむ危険性

「鍵盤蓋」には、そっと閉まるタイプのピアノと「バタンッ!!」と勢いよく閉まるタイプのピアノがあります。

勢いよく閉まるタイプの蓋は、気をつけないと指をはさんでしまう恐れがあります。小さいお子さんは特に気をつける必要がありますので、講師や親御さんは危険性について、しっかりと伝えなければいけません。

それでも万が一のために、安全対策グッズ「フィンガード」というものが販売されています。これはアップライトピアノに使用できるものです。詳細は楽器の専門店などに問い合わせしてみましょう。

蓋の間に物を落とした時の対処法

グランドピアノの蓋や、一部のアップライトピアノの蓋には開けた状態の際、蓋と鍵盤の間に隙間ができます。そこにうっかり、鉛筆などを落としてしまうことがよくありますが、安心してください。このタイプの蓋はほとんどの場合、素人でも取り外しが可能です。

ただし、最初だけは経験者にやり方を教えてもらいましょう。我流でやると、再び取り付ける際に、うまくはまらずに、ピアノを傷付けてしまう恐れがあります。取りだすまでは鉛筆がカタカタと音がするのは気になるかもしれませんが、楽器にとってそこまでの悪影響はありません。調律をしてもらう時まで、待ってもよいでしょう。

1度やり方を知れば、それ以降は自分で出来るようになりますよ。

ピアノのフタは練習の度に閉めるべきか

屋根や鍵盤蓋は、長時間開けっぱなしでも問題ないのでしょうか。開けていた方が「練習に取りかかりやすい」という意味では、開けっぱなしの方がよいかもしれません。

筆者の場合も練習の途中、休憩をする時に、屋根や蓋を閉めるかどうか迷います。時々は開けっぱなしにしたり、面倒くさいのを我慢して片付けたりすることもあります。

基本的には、長時間開けっぱなしでいることは、埃などが気になります。グランドピアノの場合は、埃は弦の下にたまっていくので、調律時だけでは、手入れが行き届かない場所に埃がたまることになるのです。

また、開けっぱなしだと、ピアノを管理する人が不在の時が心配です。例えば、ピアノを触ったことのない家族が何も知らずに、万が一お茶などをこぼしてしまったり、何か物をぶつけてしまったり…そのような可能性ができてしまいます。それで何か起きても、家族に文句は言えません。

それを踏まえた上で、きちんと楽器を管理しましょう。

まとめ:ピアノの蓋。正しく知って上手に活用しよう。

 

ここまで「ピアノのフタ」と呼ばれる「屋根」と「鍵盤蓋」について紹介しました。まとめると次のようになります。

屋根…一般的に「ピアノのフタ」と呼ばれ、「前屋根」と「大屋根」があります。

楽器本体を響かせる大きな役割があり、コンサート会場や家庭での練習など、シーン別に開き具合を調節して使います。

鍵盤蓋…ゆっくり閉まるものと、勢いよく閉まるタイプのものがあります。

勢いよく閉まるタイプは、油断すると指を挟んでしまいます。小さなお子さんやピアノ初心者にとっては取り扱いに注意が必要です。

物を落とした時のために、蓋を取り外す方法を知っておくと、後々役に立ちます。

アコースティック楽器は大切に使うと長年使用することが可能です。ピアノのフタの使い方を正しく知って、長くピアノと付き合っていきましょう。皆さんのピアノライフがこれからも楽しいものになるよう応援しています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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楽器の知識

サイレントピアノを20年以上使って。特徴を紹介。

筆者のグランドピアノはYAMAHAのもので、26年前に家やってきました。当時はまだ新しかった「サイレント機能」が搭載されているものです。当時、学校から帰宅後、夜に練習していたため、音が外に聞こえないサイレント機能は、随分活躍したのものでした。

「音が外に聞こえない」という面でいえば、電子ピアノも似たような機能を持っています。その共通点や違いをおり混ぜながら、実際20年以上に渡って使い続けてきた経験から、サイレントピアノの特徴や年数が経った今、などについてお伝えします。

サイレントピアノとは

「サイレントピアノ」とはグランドピアノやアップライトピアノに、取り付ける機能。普段はアコースティックピアノとして使用し、夜間など音が気になる時は、消音状態(音はヘッドホンから出る)にできます。

筆者のピアノの場合は、同じ大きさ・ランクのもので比べると(サイレント無のものより)、20万円くらいプラスだったと思います(1995年当時)。

アコースティックピアノの音が鳴るしくみ

まず、ピアノの音が鳴るしくみを、確認しましょう。下の図はグランドピアノの内部を真横から見た図です。実際には、弾いている人からは見えにくい場所にあります。

ピアノの鍵盤を押すと連動したハンマーが弦を撃ち、その結果、音が鳴ります。

さらに響板(大きな木の板)によって、楽器全体が共鳴し、音を大きく鳴らすという構造です。

ちなみにこのしくみのことを「アクション」と呼びます。

サイレントピアノの消音のしくみ

サイレント機能の消音のしくみは、ハンマーと弦の間にストッパーがセットされ、弦をたたく直前でハンマーの動きを止めて弦を鳴らさないようにすることで、実現します。

そして、鍵盤の動きをとらえるセンサーによって、繊細な演奏を忠実に再現するしくみです。ヘッドホンから聴こえる音は、コンサートグランドピアノから収録したピアノ音です。

アップライトは後付けできる

 

アップライトピアノであれば、サイレント機能は後付けが可能です。

尚、YAMAHAさんによると、アップライトのサイレント機能も、ヘッドホンの音は「フルコンのグランドピアノを響きまで再現している」とのことです。

2021年10月現在、アップライト用のサイレント機能を追加すると、取り付け費用込みで20万円強、とのことです。品番にもよるので、詳細を知りたい場合は、直接、楽器店に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

グランドピアノは後付けはできない、とのことです。

サイレントピアノを使ってみて

これまで20年以上サイレントピアノを実際に使ってきた感想について述べたいと思います。

音の聴こえ方は電子ピアノに近い?

タッチとしては、消音時でも、ピアノのアクションをそのまま使用するので、アコーステッィクピアノと同じタッチです。ただし、消音時、ヘッドホンから聴こえてくる音は、正直いって「電子の音」という印象です。そういうこともあり、私の場合は、サイレント機能の使用頻度は最少限にしていました。YAMAHAさんの売りとしては「(消音時)ヘッドホンから聴こえる音は、フルコンのグランドピアノ」とうたってはいますが。

ところで「電子ピアノ」にも色々種類ありますが、金額が上がるほど「アコースティックピアノの音を強弱や音色などまで再現する」「細かいタッチも感知できる」などを特長としている機種があります。そのように細部までこだわっていても、それを電子音で再現するには限界があるのでしょう。

同じように、サイレントピアノの消音時も、ヘッドホンから鳴る音は楽器本体を響かせているわけではないので、どうしても「電子音が鳴っている」という印象になってしまうのは、むしろ自然なことなのかもしれません。

やはり、ピアノの楽器本体を共鳴させるアコースティック楽器の響きにかなうものはありませんね。

電子ピアノとの違い

ところで、電子ピアノで激しい曲を長時間練習すると、腕が痛くなります。弾力性をもって弾こうとしても「力の逃げ場がない」という感覚で、強く弾くと腕や手に負担がかかるような気がします。アコースティックピアノの鍵盤の素材・アクション機能とは違うからでしょうか。他のピアノ経験者も同じようなことを言っていました。

その点、サイレント機能(消音時)で長時間練習しても、電子ピアノほどの身体の負担はありません。サイレント機能(消音時)も電子ピアノも、聞こえる音は電子音のようであっても、身体への負担はサイレントピアノ(=アコースティックピアノ)の方がやさしいということが言えます。ff(フォルテッシモ/意味:とても強く)が続く曲でなければ、さほど影響はないと言えますが…。

ハイブリッドピアノと似ている?

「ハイブリッドピアノ」というのは電子ピアノとアコースティックピアノの「良いとこどり」のようなタイプのピアノです。鍵盤の素材や、アクション機能はアコースティックピアノと同じであり、音は電子音で音量が調整できるという利点があります。

先日、このハイブリッドピアノを楽器店で試奏させていただきました。まさに、サイレント機能(消音時)と似ている、と感じました。音は電子音、タッチはアコースティック、という感想です。楽器そのものを共鳴させているわけではないので、どうしても「電子音」以上にはならないのでしょう…

サイレントピアノ(消音時)より利点があるとすれば、ハイブリッドピアノは、スピーカーも搭載されているということです。例えば、夜間に小さい音で練習しながら、家族に一緒に聴いてもらうこともできる、というわけです。

消音時でも打鍵音は響くことも…

 

気をつけたいことですが、消音時でも、打鍵音の「パタパタ」とした音はどうしても聞こえてしまいます。家の外まで聞こえることはないと思いますが、2階以上にピアノを置いている場合は、夜中に下の階に打鍵音が響く恐れはあります。

当の本人はヘッドホンをしているので、その打鍵音にすら気がつかないことも多いです(筆者自身がそうでした)。特に就寝時間は、気をつけましょう。

26年経った今

ピアノ購入後、10年くらい経った頃でしょうか。消音時に聴こえてくる音のうち、まず1音が鳴らなくなりました。タッチを少し変えると鳴る時もある、そんな程度でしたが。しかしこの頃から、数年にかけてさらに1音、また1音…と鳴らない音が増え、現在は5つ以上鳴りません。機械なので段々と劣化するのでしょう。

さすがに気になって、先日、調律師さんに修理についてお尋ねしたところ、こんな答えが返ってきました。20年以上前のサイレント機能は、部品が廃盤になっているものもあるので、修理不能です…と。

というわけで、修理はあっさり諦めることに。もし今後、夜中に練習がしたくなったら、電子ピアノで練習することにします。譜読みや暗譜の練習なら、電子ピアノで充分なので…。

まとめ:サイレントピアノを20年以上使ってみて。その特徴を紹介。

ここまでサイレントピアノについて紹介しました。まとめると次のようになります。

サイレントピアノ(消音時)の特徴

・ヘッドホンの音は電子音だが、タッチはアコースティックと同じように練習できる。ハイブリッドピアノと似た機能。

・サイレント機能の部分は機械なので、アコースティックの楽器本体よりも寿命が短い。

学生時代は練習時間が夜間中心だったため、サイレント機能が大活躍していました。26年経った現在では、ほとんど使用していません。しかし、サイレント機能分の金額(約20万)分の働きはしっかり活用できた、と感じています。

ピアノ購入を検討している方や、アップライトピアノに後付けを検討している方に、少しでも参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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楽器の知識

ピアノの構造を知ろう

ピアノは高音から低音まで音域が幅広く、メロディー、和音、バスなど同時に沢山の要素を奏でることができます。では、どのようなしくみで音が鳴るのでしょうか。

たとえば、ギターは弦を指や爪で弾きますし、バイオリンのような弦楽器は弦を弓で擦って音を出します。音が鳴る場所が直接見やすいところにあるので、楽器の構造や音が出るしくみが、比較的分かりやすいと思います。

ピアノの場合は構造上、それらが物理的に分かりにくい楽器です。弾いている時は、むしろピアノの内部は譜面台で隠れて見えないことが多いです。

そこで、この記事では、ピアノの構造や音が鳴るしくみを説明します。ここでいう「ピアノ」はグランドピアノやアップライトピアノなど、アコースティックのピアノのことを指します。

グランドピアノの構造

ここではピアノの各部の名称を用いながら、グランドピアノの構造を紹介します。

各部の名称

譜面台・・・譜面を立てる台。不要な時はピアノから取りはずすこともできます。

鍵盤蓋・・・鍵盤の蓋。ピアノを弾かない時は閉じます。

側板・・・ピアノの側面の板。響板とともに共鳴します。

キャスター・・・ピアノを動かす時に使います。

大屋根・・・ピアノの音が出るフレームの蓋。大きく開けるとより、大きな音が出ます。閉じて弾くと、響きを抑えることができます。

前屋根・・・屋根の前の部分。蝶つがいがついており、折って開けます。普段は、「大屋根」とともに、「ピアノのふた」と呼ぶことが多いです。

突上棒・・・大屋根を開ける時に使う棒です。大きく開けたり、ほんの少し開けたりできるよう、長さの調整が3段階ほどできます。

ダンパーペダル・・・1番右のペダル。ペダルを踏むと、音を響かせることができます。

ソステヌートペダル・・・真ん中のペダル。踏んだ時に弾いていた音のみ、長くのばすことができます。(アップライトピアノの場合は、この場所にあるペダルはマフラーペダルと呼ばれ、練習の際に、音を小さくするためのペダルです。)

シフトペダル・・・1番左のペダル。小さく、ソフトな音にします。ウナコルダとも呼びます。

内部の名称

ピアノの弦には丈夫な鋼線が使われており、1本平均90キロという強い力で張られています。

グランドピアノの弦は、低音と高音がクロスする形で張られていて、そうすることで弦を長くして音量を増加させ、同時に低音の響きを豊かにすることが可能となりました。

内部を写真でみてみましょう。

響板・・・弦を響かせる木の板。

弦・・・弦が振動することで音が出るしくみです。音程が低いほど太くて長く、音程が高くなるほど、細くて短くなります。

駒・・・弦を支え、弦の振動を響板に伝える部品です。

フレーム・・・弦を支える金属板。弦を引っ張る力はとても強く、合計で20トン近くあり、それを支えています。

音が出るしくみ

ピアノの場合、音が鳴る場所は実際に見にくいところにあります。下の図はピアノの内部を真横から見た図です。

ピアノの鍵盤を押すと連動したハンマーが弦を撃ち、その結果、音が鳴ります。

さらに響板(大きな木の板)によって、楽器全体が共鳴し、音を大きく鳴らすのです。

ちなみにこのしくみのことを「アクション」と呼びます。

尚、昔のピアノは現代のようなアクションはなく、速い連打を演奏することは不可能だったそう。現代のピアノは、鍵盤が元の位置に戻る前に次の音を叩くことができるしくみになっています。そうすることで、速い連打やトリルを演奏することが可能となっています。

アップライトピアノ

アップライトピアノも基本的なしくみはグランドピアノと同じです。弦を縦に張ることで、奥行きをなくし、家庭でも練習できるよう、場所を取らないような形として作られるようになりました。

弦に合わせてメカニズムも縦なので、ハンマーをバネで戻します(グランドピアノのハンマーは、自分の力で戻ります)。そのため、グランドピアノのようなアクションを組みこむことが出来ず、グランドピアノほど速い連打ができないという欠点があります。

なお、グランドピアノもアップライトピアノも、木材やフェルトなど、天然素材でできているので、ピアノを弾かなくても、時間がたつにつれ音程が乱れてきます。そこで定期的に「調律」が必要となります。

まとめ:ピアノの構造を知ろう

ここまでピアノの構造と音が出る仕組みについて説明しました。普段よく練習する人でも、ピアノの内部は意識しないと見る機会はあまりないと思います。

練習に疲れた時など、時々はピアノという楽器そのものに目を向けてみるのはどうでしょうか?違った角度でピアノが奏でる音楽を感じることができるかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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楽器の知識

ピアノの種類を紹介。特徴を知って選ぼう!

ピアノには種類があり、その値段はピンからキリまであります。これからピアノを始めたい人や、ピアノの買い替えを検討している人にとって、ピアノ選びはとても気になる問題だと思います。ここではピアノの種類や特徴を紹介します。ぜひピアノ選びの参考にしてみてください。

ピアノの種類と特徴

ピアノには大きく分けて、アコースティックと電子ピアノがあります。それらは音が出る仕組みが全く異なります。ここではそれぞれのピアノの種類と特徴を紹介します。

アコースティックピアノ

いわゆる「ピアノ」と呼ばれるものは、グランドピアノアップライトピアノのことで、多くの木材や天然素材が使われています。鍵盤の数は全て88鍵なので、横幅は同じです。ピアノは指先で鍵盤を押し、その力でハンマーを動かし、弦を叩いて音を出します。アコースティックピアノの豊かな響きは、弦の振動を響板が増幅させ、叩いた弦以外にもピアノのボディ全体が共鳴体となることで生まれます。鍵盤を押す力加減によって音の強弱や音色が変わるので、演奏者の表現力がはっきりと出ます。

外観としては黒塗りのタイプや木目タイプがあります。黒塗りよりも木目の方がコストがかかるため、同じグレードで比べた時は、木目タイプが高価になります。

またサイレント機能が搭載されたタイプも随分、一般的となりました。この機能があれば、時間を気にせずに練習ができます。

グランドピアノ

18世紀に発明されて以来、ほとんど形に変化はありません。コンサート用と一般家庭向けのものがあります。横幅は変わりませんが、縦のサイズは異なります。その違いにより、弦の長さや響板の面積が変わるため、楽器によって深い広がりや響きが変わります。ほんの僅かなタッチの差でも変化が出やすいので、本格的に音楽の勉強をしたい人にはグランドピアノで練習すること理想的です。価格も大きさやメーカーによって変動します。

アップライトピアノ

19世紀頃に誕生した、グランドピアノの弦を縦にした縦型のアコースティックピアノです。グランドピアノに比べてとてもコンパクトなので、音色は劣りますが、家庭用・練習用のピアノとして普及しています。ピアノの後ろを壁に向けて置くのが一般的。やはり鍵盤は88鍵なので、どの型番でも横幅はほぼ同じですが、高さは異なります。その高さによって、弦の長さ・響き方が異なります。

電子ピアノ

複雑なハンマーアクションも響板もなく、鍵盤を押すと、その動きをセンサーが感知し、電気を使って録音されたピアノの音を出します。鍵盤の数や楽器の大きさは機種によりますが、ピアノと同じ88鍵の機種も多くあります。88鍵であれば横幅はあまりピアノと変わりませんが、それ以外の部分が全体的にコンパクトで軽量であるため、設置場所を選ぶ必要がありません。また調律が不要ですし、ヘッドホンの利用もできるので、時間を気にせず練習できます。メトロノーム機能やピアノ以外の楽器の音色が付いているなど、楽しくて便利な機能も付いています。持ち運びができるタイプのものは、ピアノがない会場で演奏したりすることも可能です。

ハイブリットピアノ

「ハイブリット」とは「融合」「組み合わせたもの」という意味があります。アコースティックピアノと電子ピアノのそれぞれいいところを併せ持ったタイプのピアノと言えます。

アップライトピアノにあるハンマーアクション機構がそのまま搭載されているので、アコースティックピアノに限りなく近いタッチ感を実現しています。弦は張られておらず、最新のデジタル技術を使って音を作り出しています。鍵盤の材質はアコースティックピアノと同じ木製ということも、ピアノと同じようなタッチを実感できる理由のようです。

購入した後の特徴

楽器店で並んでいるピアノを見れば、どれも素敵で、どのタイプを購入するか、迷ってしまいます。その時に気にかけておきたいのは、時間が経つとどうなるのか、ということです。

アコースティックピアノ

ピアノの弦は強い力で張られています。また、木材やフェルトなど天然素材で構成されているので、時間がたつにつれ、音程が不安定になってきます。そこで年に1度は、調律が必要となります。古いピアノでも毎年調律し、きちんと手入れや管理をすることで、何十年にも渡って使用することができます。実際、親子2、3代受けついで使用しているという家庭もよくいらっしゃいます。調律代はアップライトで¥15000前後、グランドピアノで¥20000代くらいでしょうか。調律までの期間が長く空いたり、設置場所の環境・条件が悪かったりするともっと高くなる場合があります。

もしアップライトピアノを購入し、先々、音楽大学に進学するとなれば、グランドピアノに買い替え…という可能性も出てきます。その時に、使用していたアップライトに価値があれば、そのピアノを下取りに出して、その分の金額を差し引いて新しいピアノを購入できる、ということもアコースティックピアノならではの特権です。

電子ピアノ・ハイブリットピアノ

調律が不要である分、管理費はかかりません。その一方、電化製品なので、古くなると電子部品などが劣化し、修理不能の故障となる可能性があります。寿命については、機種ごとに異なると思われますが、アコースティックピアノほどの寿命はないと考えられます。

ちなみに筆者のグランドピアノはサイレント機能付き。ピアノとしての機能は数十年経った今も、もちろん問題はありませんが、サイレント機能においては、鳴らない音がだんだんと増えてきました。やはり、電子部分は本物よりも、寿命が短いのだな、と感じます。

ピアノを選ぶ目的

ピアノを購入する目的は人それぞれ違うものです。ここでは目的別に、どのタイプを選ぶのがよいのか、紹介します。

長期的にピアノを学びたい

お子さんが長く練習することを前提に購入を考えているのであれば、少々値段が高くてもアコースティックピアノをオススメします。電子音ではなく、楽器本来の響きを常に聴けることは、ピアノを学習するに当たり、理想的な環境だからです。鍵盤を押したタッチにより、繊細なニュアンスを表現できるため、表現力も豊かになります。中古であれば、高級な電子ピアノやハイブリットピアノより安いアップライトピアノが探せる可能性は充分あります。

住宅事情でピアノを置けない時

ピアノを長期的に学びたくても、マンションやアパートなど、住宅環境などにより、ピアノが置けない場合もあると思います。そういう時は、ハイブリットピアノが選択肢のひとつとなるでしょう。また電子ピアノでも金額が高いものであれば、グランドピアノの鍵盤と同じ材質を使ったものもあります。聴こえる音は電子音でも、表現力にこだわった設計の機種も沢山あり、機能も充実しているようです。ハイブリットピアノでも電子ピアノでも、実際に楽器店で試奏させてもらい、自分の指・耳で弾き心地を確かめみましょう。

趣味で気軽にピアノを始めたい・設置場所を選びたくない

鍵盤が88鍵欲しい、でも気軽にピアノを始めたい、という場合でも電子ピアノの種類は沢山あります。安価な機種を購入することもひとつの選択肢です。

私がイベントや訪問演奏などのために購入した電子ピアノは本体だけで5万円くらいでした。弾き心地は楽器店で確かめて、インターネットで購入しました(ネットの方が安い)。他に付属品(スタンド、持ち運び用のケース、ペダル)などを同時購入しました。家で練習用でも使用しています。使わない時はケースに入れて物置にコンパクトに収納できるので便利です。引越の可能性があるご家庭は、このくらい気軽なグレードのタイプがいい、という方もいるかもしれません。

資格取得のため(保育士や小学校教諭など)

保育士や小学校教諭の資格を目指すための練習用として購入を検討している場合。通っている学校に練習ピアノがあれば、家用のピアノは、電子ピアノで充分だと思います。その場合は、グレードは高いものでなくてもOK。可能な限り、学校のアコースティックのピアノで練習する時間を多めに取り、家のピアノでは必要最小限、そのくらいの割合が理想的です。せっかくアコースティックピアノが弾ける環境があるなら、その特権を充分に活用しましょう。

大学進学による下宿先のピアノについて

音楽大学や教育学部の音楽科への進学がきっかけで親元から離れた時。その際の練習用のピアノについて、どうしようか迷う人もいるでしょう。グランドピアノを1人暮らしのアパートに持っていくとなると、防音室や楽器OKという条件付きで物件を探す必要があります。見つかったとしても家賃が高いので、経済的な負担が気になる人は電子ピアノでも問題ないと思います。

私は大学時代、「楽器OK(特別な防音は無)」のアパートの角部屋にグランドピアノを持って行きました。しかし、家で練習した回数はほんの数回。入居の条件的にピアノの音出しはOKでも、近所への音漏れが気になり、ほとんど家では練習しませんでした。ピアノ搭載のサイレント機能は使いましたが…学校の練習室で練習した方がモチベーションが保てますし、結局は練習室での時間が圧倒的に長かったです。

当時の友人の中には、ピアノを持ってこずに、学校の練習室でだけで、充分に練習をこなしている人もいましたし、電子ピアノを部屋に置いて、普段は練習室で練習する、という人も多くいました。

事前に学校の練習室の数と学生の人数を調べて、どのパターンにするか決めるといいかもしれません。実家と大学の距離にもよりますが、グランドピアノの運搬費はとても高いです。その分で、そこそこ高価な電子ピアノを下宿先の地域で購入するのもひとつの方法かもしれません。

楽器店に質問!ピアノの値段の差

アコースティックピアノ、電子ピアノ、ハイブリッドピアノ…それぞれの種類の中で比べても価格に差があり、どれを選べばよいのか迷います。そこで、楽器店を訪問して、店員さんに尋ねてみました。

ピアノって値段が多すぎて、違いが分かりません。値段の差、って何ですか?

アコースティックピアノにおいては、大きさです。グランドピアノは奥行き、アップライトピアノは高さによって値段が比例することが多いです。またサイレント機能が付いていたり、ボディが木目調だとその分値段は上がりますよ。

中古であれば、年数やメンテナンスなどによる物の状態によって、価値が変わります。

電子ピアノ(ハイブリッドピアノ)においては、ズバリ、どれだけ本物のピアノにタッチが近いか、その差です。また、使われている材料がアコースティックピアノと同じ天然素材であれば、更に値段は上がります。

まとめ:ピアノの種類を紹介

ここまでピアノの種類と特徴について説明しました。種類によっていわゆるメリットとデメリットがあり、ピアノを購入する目的、生活環境によって人それぞれ、その時によって、合うピアノは違うと思います。

グランドピアノという種類の中だけで比べても、それぞれ弾き心地は違うし、アップライトピアノになるとやはりグランドほどの表現力の差は出ません。高価な電子ピアノが「アコースティックピアノと同じアクション機能」と説明されても、そもそものアコースティックピアノだってタッチ感は色々あるのに、と思って、やはり混乱してしまいます。

そう思うと結局は楽器店に足を運び、自分の指で弾いて、耳で聴いて感じて、体感して、自分なりに弾き心地のいいものを選ぶのが一番だと思いました。試奏する時は「ゆっくりで表現力が求められるような部分」と「速いパッセージが続くような部分」をそれぞれ弾いてみて確かめると、タッチの差が分かりやすいですよ。

すぐに購入する予定がなくても「いつかは」という想いがある方は、ぜひ楽器店へ足を運んで、体験してみましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。