カテゴリー
ピアノ基礎練習

ピアノでのテンポ感覚を身につけよう

音楽の大切な要素の中に「テンポ(速さ)」があります。一定のテンポを刻むことは、ピアノにおいても基本のテクニックです。

クラシック音楽の中では、ロマン派の音楽のように比較的、自由なテンポ感の楽曲もあります。それでも、基本となるテンポがあり、「自由な揺れ」はそれができた上に成り立つものです。

時間の感じ方は人によって、またその時の気分で変わることがあります。楽器を演奏するには、客観的に正しいテンポを感じ取れることが必要です。

この記事では、ピアノを練習する上で必要な、テンポの感覚を身につける方法をお伝えします。

メトロノームを使った練習

正しいリズムや一定のテンポで弾いているつもりでも、気がつかないうちに速くなってしまったり、逆に遅くなってしまったりすることがあります。余裕がない演奏ほど、そういうことが起きます。

そういう時のために、メトロノームに合わせる練習はとても効果的です。メトロノームに合わせることで、客観的に一定のテンポで弾くことが可能になるからです。基礎練習でも楽曲の練習でも、多くの場面でメトロノームを活用しましょう。正しいテンポが刻めるようになります。

メトロノームの活用法についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。ピアノの練習におけるメトロノーム活用方法。

声に出してカウントをする

メトロノームの練習が効果的であることは前項で説明しました。ただし、「メトロノームがないと正しいテンポが刻めない」となってしまったら、意味がありません。

そこで、メトロノームをはずした後も、一定のテンポを継続できるための練習方法をお伝えします。

メトロノームと一緒に声に出して数える

まずはピアノなしで一定のテンポを刻む練習をします。

クラシックとポップス音楽ではアクセントの場所が異なりますが、ここではクラシック音楽における考え方で紹介します。

次の拍子を、メトロノームに合わせながら、一定の間隔で声に出してカウントしてみましょう。

4拍子 ・2・・4・・2・・4〜

3拍子 ・2・3・・2・3〜

2拍子 ・2・・2〜

8分の6拍子 ・2・3・・5・6・・2・3・・5・6〜

数字が大きいところは少し大きめに数え、アクセントがつくようにカウントします。そうすることで、その拍子らしさが表現できます

一定のテンポに慣れてきたら、メトロノームなしで、カウントしてみましょう。ある程度長めに数えても、カウントが安定していればOKです。

声に出してカウントしながら弾く

次はカウントしながら、楽曲に合わせて練習しましょう。

声に出しながら合わせることは難しいと思います。なので、「ゆっくりすぎる」と感じるくらいのテンポから合わせましょう。

ここで気をつけることは、「弾いているピアノに声を合わせる」のではなく、「カウントの声に合わせて弾くこと」です。前項で、メトロノームに合わせてカウントの練習をしたので、一定のテンポでカウントできるようになったと思います。その安定したテンポに、ピアノを合わせる、ということが大切です。

ゆっくりのテンポで練習する時のカウント方法

カウントの速さがあまりゆっくり過ぎると、逆に不安定になってしまいます。

そこで、ゆっくりのテンポで練習する時は、カウントする数字の後にさらに「ト(と)」という言葉を入れて数えると安定します。「1ト 2ト 3ト 4ト」という感じです。

なぜこのように数えるのかというと、「ト」を入れることで、ゆっくりのテンポ(速さ)でも「4分音符=♩」の半分の長さまで確実に数えられるからです。

このような練習をすると、正しく弾けていない所や苦手な所が一目瞭然で分かります。

カウントしながら弾くのは難しいと思いますが、できない時は欲張らずに、「片手ずつでやってみる」または「止まらずに弾けるくらいまでテンポを落とす」練習をしましょう。結局はその方が、上達が早いです。ゆっくりでも止まらずに弾ければ、その後、テンポを速くしていくのはそこまで難しくありません。

そしてゆっくりの段階から「どのような音色」で「どのように表現するか」など、音楽的な表現を意識することも大切。そうすることで、音楽的な仕上がりも早くなります。

まとめ:ピアノでのテンポ感覚を身につけよう

ここまで、ピアノでのテンポ感覚を身につける方法について説明しました。

テンポは音楽を学ぶ上でとても大切な要素です。時の流れは人それぞれ、気分によっても変わるもの。客観的に一定の間隔でリズムを刻むことは、ピアノを弾く上でもとても大事なことです。

そのためには、メトロノームを使った練習がとても効果的です。それによって、「実は正しく弾けてなかった」ということがすぐに分かるというメリットもあります。

ただし、メトロノームを使わないと一定のテンポが刻めないとなってしまっては本末転倒。そこで、自分でカウントしながら弾く練習も大切です。そうすることで、その拍子らしさも表現できるようになります。メトロノームなしでそれらができるようになれば、テンポ感においては怖いものなしです。

ぜひこれらの練習が、少しでも皆さんのピアノ学習へのヒントになれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
ピアノ基礎練習

ピアノ初心者のための、黒鍵と仲良しになる方法。

楽譜がやっと読めるようになったかと思えば、曲がレベルアップするにつれ増えていく楽譜上のシャープ(♯)やフラット(♭)の数々…

黒鍵が多くなると、苦手意識が強くなったりしませんか?

ここではピアノ初心者の方や、レベルアップを目指している方へ、「黒鍵」をもっと身近に感じられる練習方法をお伝えします。

黒鍵とは

黒鍵とは、ピアノの黒い鍵盤のことを言います。

黒鍵は、楽譜上ではシャープ(♯)やフラット(♭)で表されます。①音符のすぐ左側に書かれているものを臨時記号、②ト音記号やヘ音記号のすぐ右側に書かれているものは調号といいます。

なお、調号は基本、その楽譜全ての音符に有効です。例えば、上の楽譜では調号として「ファ」にシャープがあるので、楽譜中の「ファ」には全て♯をつけてひきます(「ナチュラル記号」が付く場合を除く)。

調号でシャープ(♯)やフラット(♭)の数が多いほど、楽譜を読むのが厄介だと感じる人は多いのではないでしょうか。

スケール(音階)とカデンツの練習をしよう

ピアノの基礎練習を行う中で、「スケール」「カデンツ」の練習は定番です。この練習をすることにより、ある程度、調号に慣れることができます。

ピアノの基礎練習が学べる『ハノンピアノ教本』の中にも、スケールの練習があります。下記の譜面は「ハ長調のスケール」です。

ハ長調の「音階(スケール)」の最後には「カデンツ」があります。

この練習は難しいのですが、とても良いテクニックの練習になると同時に、調性のしくみまで理解できるようになります。そして、どの音にシャープやフラットをつければいいのか、感覚的に分かるようになります。

※なお、この「ハノン」のシリーズはお子さんや初心者向けにやさしく編集された教本が多くありますが、中にはこの「スケールとカデンツ」の記載がないものもあります。購入する時は、書店などで手にとって、よく確認することをおすすめします。

小学校高学年以上や初心者でも大人の方は、「全訳ハノンピアノ教本」を1冊持っておくのも良いかもしれません。ピアノ学習者にとっては何十年と使用できる必需品だからです。

スケールの練習についてもっと詳しく知りたい方はこちら→ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

音階上の和音の練習をしよう

『音階上の和音』は、とってもシンプルです。まずは1番やさしい、「ハ長調」で説明します。

ハ長調の音階と和音

前項「スケール」の1部となる、「ハ長調」の音階を見てみましょう。

音階の音を基準(根音)とし、7つの音それぞれに、上に3度の和音と5度の和音を足して3和音にします。

これらの和音を「音階和音」といいます。ハ長調は調号が何もつかない調、つまり黒鍵も使わない調号なので、初心者にも弾きやすい和音ですよね。1音目、「ドミソ」を弾いたら、その指の形のまま、となりに平行移動していけば、楽に弾けます。

前項の「スケール」「カデンツ」とともに、「音階和音」の練習をすることは、とってもおすすめです。

♯がつく音階の例(ト長調)

シャープがつく場合の調について説明します。シャープが1つの長音階をト長調といいます。その時、シャープは必ず「ファ」につきます。「長音階」とは、明るい響きの音階のことです。

この音階の音を全て三和音にすると下のようになります。譜面上の見た目は「ハ長調」と似ていますね。ただし、調号を忘れないように弾くことが必要です。

さらに調号が増えていくごとに、難しいと感じると思います。しかし、何度も練習すれば、その調にふさわしい黒鍵を、頭で考えなくても弾けるようになっていきます。

「音階和音」は英語で「ダイアトニックコード」と呼ぶ

これまで説明した、音階上の和音(音階和音)のことを、英語では「ダイアトニックコード」と呼びます。この言葉は主に、ポップスやジャズなどのジャンルで使われます。

復習になりますが、音階和音(ダイアトニックコード)は、下のように、1つの調につき、7つの和音がありました。

そのうち1つめ、4つめ、5つめの和音は特に大事で、「主要三和音」といいます。

なお、主要三和音は、前述の「カデンツ」の和音と構成音がほぼ同じです。つまり、「カデンツ」も、音階和音の中で、とても大切な和音から成り立っているということが言えます。

ちなみに、簡単な伴奏付けも、この3つの和音で、おおよそは対応できます。

音階和音(ダイアトニックコード)を練習する必要性

一般的にピアノで必要とされる基礎練習として、スケール(音階)、カデンツ、アルペジオ、オクターブの練習などがあります。これらは、よく指の基礎練習の教本でも紹介されています。

一方、「音階和音」を練習する必要性について言及している教材は、正直、あまり見かけません。そのような理由からか、この練習によって、苦手を補えることを知らない人も、意外と多いと思うのです。

しかし、音階和音を全ての調で弾けることは大切だと感じます。音階上の全ての三和音を弾きながら、瞬時に調号の音を弾く訓練ができるような基礎練習は、他にはないからです。

ピアノは、頭で理解すべきこともありますが、手の感覚で慣れることがとても大切。

それにより、自然と指がふさわしい音へ向かうようになります。つまり、音階和音が身につくと、楽譜上での「調号」にも慣れ、黒鍵に対する苦手意識を減らすことができます

ぜひこの音階和音(ダイアトニックコード)を、スラスラ弾けるまで練習しましょう。筆者自身、この練習を沢山やることによって、調号によるミスタッチがとても減りました。

まとめ:ピアノ初心者のための、黒鍵と仲良しになる方法。

ここまで、黒鍵と仲良しになる方法についてお伝えしました。

黒鍵は楽譜上では、「♯」や「♭」ととして表されます。「臨時記号」であれば、ほぼ毎回、楽譜に表示されます。

調号」として弾く場合は、ト音記号やヘ音記号のとなりにしか表示されないので、慣れるまでは、譜面を読むことがとても大変です。

その時に必要な練習が定番の「スケール(音階)」や「カデンツ」の練習

さらには「音階和音(ダイアトニックコード)」の練習をするのが、良い方法だとお伝えしました。

「音階和音」の練習については、一般的な基礎練習として、取り上げられていないのが現状。そのためか、この練習によって、苦手が補えることを知らない人も多い印象があります。

しかし効果は抜群です。

ぜひこの音階和音の練習を多くの調で練習し、黒鍵に対する苦手意識を少しでも減らしていただけたら幸いです。

あなたのピアノライフが素敵なものになるよう、応援しています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
ピアノ基礎練習

指のコントロールが楽になる!ピアノのリズム練習法。

ピアノを練習していて、ひとつの曲が完成に近づいてきた時。楽譜なしでも弾けるくらいまでに、十分に練習に時間をかけているのに、速いパッセージでは思うように指が動いてくれない。そういうこと、ありませんか?

指がもっと自由にコントロールできたらいいですよね。

そういう悩みの解決策の1つとして、「リズム練習」があります。

この練習をひたすらやると、あら不思議。やる前と比べて、指が軽やかに感じ、スラスラと動いてくれるようになるではありませんか。

この記事では、指のコントロールが楽になるための、「リズム練習」について、やり方と注意点を含めて説明します。

ピアノのリズム練習について

ピアノは楽器の王様。表現できることは無限大です。だからこそ難しい楽器でもあります。ピアノにおける難しいテクニックは色々ありますが、その壁を乗り越えるために、リズム練習はとても効果的なのです。

「ハノン」でも紹介されている「リズム練習」とは?

多くのピアノ学習者が使う教則本で「ハノンの教本」というものがあります。ピアノのテクニックを強化する大切な基礎練習で、指の準備体操としても使われます。その中にも、「リズム変奏」での練習方法が紹介されています。

このハノンの教本を練習する際、「リズム変奏」で練習すると、「音の粒が良く揃う」という効果があります。

ハノンは、ピアノのテクニックを身につけるために、理想的な基礎練習が沢山紹介されています。

ハノンの活用法について詳しく知りたい方はこちら

ピアノ上達ヘの道!ハノンを効果的に活用する方法

しかし、ハノンを活用せずとも、楽曲中のフレーズを利用して「リズム変奏(リズム練習)」を行うだけでも、テクニックの上達にとても効果的があるのです。

その具体的な方法も、この少し後に紹介します。

ピアノにおける難しいテクニックとは

楽器によって、難しいテクニックは異なるものです。

例えば、ピアノでは前の音と次の音の高低差が広いと、すばやく移動することは難しいですが、バイオリンではさほど難しくなかったりします。また、バイオリンでは和音を弾くことはとても難しいですが、ピアノで和音を掴むことは難しくなかったりします。

このように、楽器によって、訓練したいテクニックというのは異なります。

ピアノにおいて、難しいテクニックを認識し、少しでも克服できれば、ひとつの曲を仕上げることがぐっと楽になります。その克服方法の一つとして、「リズム練習」は大きな効果をもたらしてくれます。

なお、筆者が難しいと感じるピアノのテクニックには主に次の3つがあります。

①指くぐり…1の指を2、3の下へ送りこむこと

指こえ…1の指を他の指が超えること

②音の跳躍…次の音への移動距離が長い 次の音への高低差が広い

③オクターブや重音(2音以上)が連続で登場する

これらのテクニックは、速ければ速いほど、多ければ多いほど難しくなりますし、様々な楽曲に度々登場します。テクニックや練習が不足していると、指くぐりや指こえの多い箇所でつまづいたり、流れるようなフレーズで表現したくても、デコボコした表現になったりしてしまうのです。

音の跳躍が続けばミスタッチをしやすくなりますし、オクターブや重音が連続で登場する箇所では、流れが重たい感じになってしまうことがあります。

リズム練習をすると克服可能なこと

ピアノのテクニックが十分になくても大丈夫!むしろ、テクニックがないからこそ、「リズム練習」で効率の良い練習をして、困難を克服しましょう。

リズム練習を真面目に行うと、次のようなことができるようになります。

①つぶが揃っていない→どの音符も均等になる

②ミスが多い→ミスが減る

③リズム感が甘い→洗練されたリズムになる

④音のひとつひとつが重い→クリアーな音質になる

この4つが改善されるだけで、音楽の流れが自然になり、理想の音楽に近づけます。

ピアノでリズム練習をやってみよう

実際にリズム練習をやってみましょう。

前述した「ハノンの教本」には様々なリズム変奏が紹介されていますが、全て行うとどれだけ時間があっても足りません。

なので、筆者がこれまで長年練習し、効果的だったパターンを紹介します。1つのセット内の練習はどれもバランス良く行いましょう。

4拍子や2拍子のリズム練習

8分音符や16分音符の連続は下記のような練習をします。

付点のリズム(2つを1セット)

4つのリズム(4つの変奏を1セット)

3連符、または8分の6拍子のリズム練習

3つの音符でひとかたまりの連続では下記のような練習をします。

3つのリズム(3つの変奏を1セット)

実際に練習してみると、以前より指が軽くなり、自由に動くようになった感覚があると思います。練習の量が多いほど、効果を感じやすくなります。

また、練習するリズムが甘いと、効果はあまりないので、上達が感じられない場合は、指導者のもとで行うか、録音して、自分の音を確認してみてください。鋭く、正確なリズムで練習できていますか?

リズム練習を行う上での注意点

リズム練習はやればやるほど、指が自由にコントロールできるようになります。しかし、それに満足してしまうことには、注意が必要です。

ただ指を動かすだけの練習を長くやりすぎると、演奏が機械的になってしまう恐れがあるためです。

そもそも音楽の最終目的地は、指がテクニカルに動けばいい、ということではありません。いかに作曲者の作った音楽をくみとり、奏者の想いも含めて音に表現するか、そういう「音楽性」を追求していくことではないでしょうか。

リズム練習は、あくまでも、音楽的な表現を目指すためのひとつの練習に過ぎません。この練習をするに当たっては、音のつながりや流れを意識して、目的を持って練習しましょう。

そしてゆくゆくは、技術面に支配されることが最小限になり、音楽表現に専念できる、そんな状態を目指しましょう。

自分の苦手な箇所を認識し、何を改善させたいのか、その目的を常に意識して、練習をするように心がけましょう。

まとめ:指のコントロールが楽になる!ピアノのリズム練習法。

ここまで、指のコントロールが自由になるためのリズム練習について説明しました。

中には子どもの頃からずっと、何時間もピアノの練習をし、指が自由に動かせる人はいます。

しかし、多くの人は大人になり、仕事をしながらも十分にピアノが練習できる環境でいつづけることは難しいのではないでしょうか。

ピアノ奏法における、すばやい動きや、細かい音の連続などを思うようにコントロールすることは難しいことです。

そこで、そんな悩みを少しでも解決する方法として今回の内容を記事にしました。

リズム練習はやればやるほど、自分の思うように指がコントロールできるようになります。筆者にとっても、この練習法ははずせないものです。

ただし、指が自由になったことを最終的なゴールにしないようにだけ気をつけてほしいと思います。技術面に支配されることが最小限ですめば、音楽表現に思うように専念できます。ぜひ、指が自由になったその先で、これからもあなたの音楽性を磨いていってください。「リズム練習は」その通過点に過ぎません。

この記事が、ピアノを学習する上で、少しでもお役に立てれば嬉しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
ピアノ基礎練習

ピアノ学習者必見!脱力の大切さ。

ピアノを弾く上で、「脱力」は大きな課題であり、一流のピアニストさえも一目置いているテーマです。

脱力とは、文字通り言えば、力を抜くことですが、ピアノが弾けなくなる脱力では意味がありません。大切なのは「余計な場所に力を入れない=無駄な力を抜く」ということです。

ピアノを弾く上でなぜこれが大事なのでしょうか。この記事では、脱力の大切さについて、説明します。

ピアノ学習において、なぜ脱力が大切?

ここでは、ピアノを弾く上で必要な「脱力」の意味と、ピアノ学習の初期段階で脱力方法を身につけた方がいい理由を説明します。

脱力とは?

脱力とは、余計な力を抜いて、リラックスした状態で弾くことです。スポーツの世界でも少し力を抜いて「脱力」することが、よいパフォーマンスを発揮するために重要であると言われています。そしてこの「脱力の重要性」はスポーツ以外の分野でもよく研究されるテーマのようです。

ピアノを弾く上で、脱力が出来ていないとどうなる?

ピアノの場合、脱力が出来ていないと、硬い音ばかり出て、音楽に表情がつきにくくなりますし、響きのあるよい音では弾けません。また速いパッセージが出てきた時に指が自由に動きませんし、ミスタッチが多発する原因になってしまいます。難しい曲を弾くようになった時は特に、脱力が出来ていないと、最後まで弾くためのスタミナが持ちません。

このように、脱力ができていないことは、ピアノを弾く上でデメリットだらけなのです。

ピアノを始めたばかりのお子さんや、ピアノ初心者の方など、やさしいレベルの曲を弾くのであれば、脱力が出来ていないことへの影響はあまり感じないかもしれません。しかし、少しずつレベルアップしていくうちに、この重要性が感じられることになります。それに気がついた頃に上手く脱力ができていないと、せっかく練習を頑張ってきても伸び悩むことになります。

また、やさしい曲で身につける方が、音数が少ないので、脱力の感覚がつかみやすくもあります。そのため、ある程度ピアノが弾けるようになってから身につけることは、かえって難しいのです。

だからこそ脱力ができることは、ピアノを始めた初期のうちに身につけるべきなのです。

脱力の方法

脱力の方法で大切なのは、まずはその基本、姿勢です。

正しい姿勢で座る

ピアノは88鍵あります。イスに座るときは、鍵盤の端から端まで届くよう、身体が自由に動けるような座り方をする必要があります。

①身体を安定させ、自由に動かすために、お尻は尾てい骨を中心にしっかりと重心を下ろします。そして、上半身が安定するように座ります。

背筋は適度に伸ばします。猫背になったり、反らしすぎてもいけません。

②腕は、ひじから手首までが、鍵盤に対して水平、またはひじが少し上になるようにします。ひじが低くなりすぎない過ぎないよう気をつけましょう。この時に、手首は力が入らずに、ゆるんだ状態を保ちます

イスの高さや、鍵盤と身体の距離は、この腕の体勢によって決まります。

③大切なのは、イスに座るとき、重心のバランスを取ったら、肩から下(腕、ひじ、手首)はしっかりリラックスさせることです。腕の重みを指に伝えて指でしっかり打鍵するようなイメージで弾きます。

脱力している状態を、片手ずつ感じてみる

練習しているうちに、どうしても手首や腕に力が入る時、あると思います。そういう時、コントロールが難しいですよね?

そんな時は、片手ずつ弾いてみて、空いている方の手で、弾いている手の、力が入っているところ(腕や手首)をぎゅーっと掴んでみましょう。掴んだり、握ったり…

どうですか?そうすることで、力が入っている状態を確認できましたね?

また、そうやって片方の手で力んでいるところを握ってしまえば、それ以上力を入れにくい思います。その「力を入れられない状態」をしっかりと感じて、その感覚を覚えましょう。その状態のまま、指先は自然に弾けるようになるまで、何度かやってみましょう。

肩を上げ下げする

弾きながら肩を上げ下げしてみて、曲が止まってしまうようなら、力が入っている証拠です。

この動きをしながら、曲を止めずに弾ければ、肩と腕の脱力は上手くいっているということになります。

また、弾きながら力が入っている時は、どうしても肩が上がってしまう傾向があります。力が入ってることを自覚した時は、肩を下げる、それだけでも効果があります。

スタッカートの練習をする

手の先に余計な力が入らないようにするための練習としてオススメなのが、スタッカートの練習(=その音を短く切ってひくこと)です。

打鍵して、鍵盤が底までたどり着いたら、すぐに力を抜いて鍵盤を元に戻す行為なのですが、脱力ができていないと、いい音で響きません。なお、スタッカートの弾き方として、着地した時に、目的と違う場所に降りないよう、はねすぎない(鍵盤から手が離れすぎない)にしましょう。

最初は片手ずつ、手首をしなやかにして、弾力を感じながらゆっくり練習します。そして、ピアノの音にもよく耳を傾けましょう。使用しているピアノにもよりますが、ピアノの音が、よく響き、伸びのある音で弾けるようになることが理想ですし、それが脱力ができている証拠になります。

この練習は、どの音も均等の音量で弾く練習にもなりますし、上手にできるようになると、音楽の表情も豊かになります。

中級者以上へのお勧め脱力練習法はアルペジオ!

アルペジオというのは「分散和音を弾くこと」ですが、ピアノを学ぶ上で必要な動きが沢山詰まったテクニックであり、柔軟性を鍛えるためにも最適な奏法です。腕と手首の脱力が上手にできていないと、手首を素早く移動させて弾くことができないからです。

アルペジオを滑らかに弾くことは指の運びがスムーズであること、必要以上に身体が動かないこと、などが求められます。

今は腕と手首を上手く使えない人も、アルペジオを習得することにより、腕の脱力と手首の柔軟性が自由になり、上手に手首が使えるようになります。

このようにアルペジオは、手の動きを錬えるための要素が沢山あるので、テクニック向上や柔軟性を鍛えるために欠かせない基礎練習といえます。

アルペジオ練習の難しさは、1の指を他の指の下へ送りこむこと(=指くぐり)と、1の指を他の指が越えていくところ(=指こえ)にあります。

指こえと指くぐりをする音がひとつ前の音と少し距離があるため、上手に弾くのはテクニック的にとても難しいです。指の動きがスムーズになれば、アルペジオを滑らかにひくことができるようになります。

黒鍵を使うとなると、また違った難しさも出てきます。

肩やひじが上がってしまったり、手が斜めになったり、必要以上に身体が動いてしまうなら、脱力ができていないということになります。親指とその付け根の動きを柔らかくすることもポイントです。

アルペジオがスムーズに弾けるようになれば、自然に脱力ができているということになります。

まとめ:ピアノ学習者必見!脱力の大切さ。

ここまで脱力の大切さについて説明しました。

ピアノにおいて脱力とは、余計な力を抜いて、リラックスして状態で弾くことです。「脱力の重要性」は他の分野でも、よいパフォーマンスを発揮するためによく研究されるテーマです。

ピアノの場合、脱力が出来ていないと、デメリットしかありません。そのため、ピアノを始めた初期のうちに身につけることが大切です。

脱力を身につける方法はいくつか紹介しましたが、感覚をつかむまでにはやはり練習が必要となるものです。思い通りのパフォーマンスを発揮するためにはとても大切なことなので、ぜひ身につけたいですね。脱力する感覚をつかんで、響きのある、豊かな演奏を目指しましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
ピアノ基礎練習

ピアノでアルペジオを練習しよう。

音楽を学ぶにあたり、ピアノの基礎のテクニックはとても大切です。そのひとつに「スケール(音階)とアルペジオの練習」があり、多くのピアニストやピアノ指導者が、著書などでその重要性を解説しています。今ではブログやネット上の動画などでも、沢山の練習方法が紹介されるようにもなりました。それほどに大切な基礎練習ということがいえます。

スケールとアルぺジオはよく一緒に練習することも多いです。この記事では、アルペジオの練習方法を中心に解説します。

スケール(音階)についてはこちら↓

ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

アルペジオとは

アルペジオとは、和音を同時に鳴らすのではなく、1音ずつ順番に連続的に弾く奏法のことです。「分散和音」ともいわれます。和音の構成音を「高い方から低い方へ」または「低い方から高い方へ」と一定方向へ弾きます。

アルペジオ練習の大切さ

アルペジオの練習はとても大切な基礎練習です。その理由について説明します。

調の基礎知識が身につく

アルペジオはその調の1度の和音(主和音)で構成されています。

 アルペジオを全24調弾けるようになれば、和音の知識が理論的にも感覚的にも理解できるようになります。その曲が何調なのか、瞬時に判断できるようにもなります。つまり、調の基礎知識が理解でき、調性感も身につくということになるのです。

また楽曲分析もしやすくなるので、曲の練習や勉強にとても効果的です。初めての曲に取りくむにあたっても、初見譜読みにかかる時間が大幅に減るなど、非常に役に立ちます。

初見…楽譜を初めて見て、その場で出来るだけ止まらずに、最後まで弾くこと。

譜読み…初めて弾く曲の楽譜を正確なリズム・音符で、ある程度通して弾けるようになるまでの作業のこと。

楽曲でのテクニック練習が最小限になる

アルペジオを上手に弾くにはテクニック的にとても練習が必要です。それを日頃から練習しておくと、指の基礎的なテクニックが向上します。同時に、その調の鍵盤の感覚が身につくので、曲にふさわしい正しい指づかいができるようになり、無駄なミスタッチも減ります。

一般的に楽曲に出てくる音型は、スケールとアルペジオの音型、またはそれらが変形・発展したパッセージがとても多く登場します。つまり、アルペジオの練習が出来ていると、テクニックの向上を目指せるだけでなく、曲で出てきたテクニックを1から練習しなくても、最小限の練習ですむという一石二鳥の効果が期待できるのです。

腕の脱力と手首の柔軟性が身につく

アルペジオはピアノを学ぶ上で必要な動きが沢山詰まった、柔軟性を鍛えるために最適なテクニックです。腕の脱力と手首の柔軟性については、アルペジオを弾く上でごまかしがきかないからです。アルペジオを滑らかに弾くことは指の運びがスムーズであること、必要以上に身体が動かないこと、などが求められます。

このようにアルペジオには手の動きを錬えるための要素が沢山あるので、テクニック向上には欠かせない基礎練習といえます。

アルペジオの練習方法について

ここでは、アルペジオの練習方法について紹介します。

教本について

ハノン「ピアノ教本」

ピアノ学習者に定番のハノンの「ピアノ教本」です。アルペジオの練習はこの中の41番に載っています。39番には、スケールの楽譜もあります。

ハノンの教本がメジャーですが「スケールとアルペジオ」というタイトルの本もあります。

スケールとアルペジオ

 

指くぐりと指こえ

アルペジオは調によって指づかいが異なります。アルペジオ練習の難しさは、1の指を2、3の下へ送りこむこと(=指くぐり)と、1の指を他の指が越えていくところ(=指こえ)にあります。

指づかいを覚えることだけに着目すると、一見アルぺジオはやさしいように思えます。しかし、指こえと指くぐりをする音がひとつ前の音と少し距離があるため、上手に弾くのはテクニック的にとても難しいです。親指とその付け根の動きを柔らかくすることもポイントです

手首を素早く移動させて分散和音を弾くことをマスターするには、上手に腕と手首の脱力ができていないといけません。手首を上手く使えない人も、アルペジオを習得することにより、上手に手首が使えるようになります。

アルペジオ練習の手順

①まずは片手ずつ、必ず楽譜の指番号を守って練習しましょう。アルペジオは3和音(主和音)のくり返しの連続です。指くぐりと指こえが何度も出てきます。

下記のハ長調で、右手パートを見てみましょう。指番号は1、2、3の繰り返しとなっています。

つまり、手のまとまりが指番号1、2、3なので、どうしても上行形の時は1に、下降形の時は3にアクセントがつきがちになります。この時に、手のまとまりごとにアクセントがつかないようにすることが大切です。最初のうちは分かりやすく、1拍ごとの頭にアクセントをつけて練習すると、音楽的なまとまりを感じられるようになります。

また手首が上下に揺れたり、肘と脇の間が閉じたり開いたり、とならないようにしましょう。常に手の甲が床と平行になることをキープしてください。

②左右それぞれが、きれいなフォームで弾けるようになったら、両手で合わせましょう。両手で合わせても、片手ずつの練習で気をつけた内容(腕や手首のフォーム)を崩さないことを心がけましょう。

③ゆっくりの段階から、メトロノームを使う練習をします。メトロノームにピッタリ合わせて弾くことは意外に難しく、速いテンポだけでなく、ゆっくりのテンポに合わせることもいい練習です。この練習を沢山やると、指のテクニックやテンポ感、曲の演奏などが全体的に安定していきます。

④アルペジオの練習では、どうしても音楽的に相応しくない場所にアクセントがついたり、指の移動がスムーズにいかなかったりすることもあるでしょう。そういう時に効果的なのが、リズム練習です。沢山練習することで、指の動きがスムーズになり、粒が美しく揃うようになります。1つの調に慣れるまで、何度も続けましょう。リズム練習の方法については、後ほど説明します。

⑤慣れてきたらテンポを少しずつ上げていきます。粒の揃い方が気になったら、再びリズム練習や、片手ずつの練習を、並行して何度も行います。

両手ばかりで練習していると、利き手ではない方の音が実は聴けていないことがあります。そうならないためにも、時々は片手ずつで、特に利き手ではない方を重点的に練習しましょう。

リズム練習について

アルペジオを美しく弾くことはとても難しく、手や指の都合で、望んでもいない所にアクセントがついてしまうことがよくあります。そのための対策のひとつとして、リズム練習があります。沢山やるほど、指が自由になり、コントロールしやすくなります。ハノンの「ピアノ教本」にも様々なリズム練習が紹介されていますが、ここではおすすめのリズム練習を2セット、紹介します。指くぐりや指こえの移動もスムーズになり、弾きやすさを感じられると思います。

①付点のリズム(2つを1セット)

②4つのリズム(4つの変奏を1セット)

①と②、両方ともやると、より効果が実感できます。

1つの調を丁寧に

調によって指づかいが違うため、それぞれの調に難しさがあります。

毎日の練習で、より多くの調のアルペジオを弾くに越したことはないですが、全ての調をざっと練習するよりは、1つの調を丁寧に弾くことの方がピアノのテクニックは上がります。リズム練習や片手の練習、メトロノームの練習など、美しいアルペジオが弾けるまで1つの調を丁寧に練習し、それを全ての調で積み重ねましょう。

減七・属七のアルペジオ

ハノン42番に減七の和音のアルペジオがあります。これは、通常のアルペジオ(主和音で構成されたアルペジオ)と違い、全ての指を使うので、指1本1本の間隔が広がり、指の独立の練習にもなります。

43番の属七の和音のアルペジオもよい練習です。左手の5、4、3、2の指がさらに広がる練習となります。

スケールとアルペジオの練習を日課にしよう

スケール(音階)とアルペジオの練習がある程度マスターできたら、この2つの練習を日課にしましょう。

スケールについてはこちら↓

ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

スケールとアルペジオ、同じ調を組みあわせて、1つのセットとして練習するのが一般的です。弾く順番の例です。

〈ハ長調の場合〉

ハ長調のスケール(1〜7小節/カデンツを弾かずに)×2回→ハ長調のアルペジオ×2回→ハ長調のカデンツ⇦ここまでを1セット

※カデンツ…終止形の和音進行のこと

1セットを、全ての調で弾きます。24の調、全てを弾くと長い場合は、1日の練習で半分だけ、1/3だけ、など練習時間に応じて、分けて練習するのもよい方法です。既述のように、時には、1つの調だけを丁寧にやることも必要です。ただし、少なくとも同じ調号の短調(平行調)は、一緒に弾くことをお勧めします。

まとめ:ピアノでアルペジオを練習しよう

ここまで、アルペジオについて説明しました。まとめると次のようになります。

<アルペジオ練習をすると身につけられること>
1.調の基礎知識が理解でき、調性感が身につく。
2.主和音の感覚が身につき、無駄なミスタッチが減る。
3.楽曲の多くはスケールとアルペジオの応用なので、アルペジオをマスターすると、新しい曲の初見や譜読みが早くなる。
4.腕と手首の脱力が学べ、上手に手首が使えるようになる。

ピアノを学ぶ上で、音楽の基礎知識を身につけることはとても大切です。楽曲のテクニックばかり練習していても、基礎がなければ、ピアノの上達に伸び悩む時が、いつかやって来ます。実はそういう筆者こそが、この基礎力を身につけることが遅かったために、ピアノの上達に苦労した経験者の1人です。だからこそ、これを読んでいる皆さんには、基礎力の大切さをお伝えしたいのです。

基礎力は必ず曲に反映します。このアルペジオはスケールとともに、時間をかけてでも習得する価値のある大切な練習です。毎日の基礎練習に取り入れて、ピアノ上達のために、ぜひ活用して欲しいと思います。

皆さんのピアノライフがより充実するよう、応援しています。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
ピアノ基礎練習

ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

音楽を学ぶにあたって、基礎のテクニックはとても大切なものです。その中でも、スケール(音階)とアルペジオについては、多くのピアニストなどが、著書などでその重要性について解説しています。また、ピアノ講師の方々もブログやネット上の動画などで、練習方法などを詳しく説明しているのを見かけます。それほど大切な基礎練習ということです。スケールとアルペジオは一緒に練習することが多いですが、この記事ではスケールの練習方法を中心に解説します。

スケール(音階)とは

鍵盤には12種類の高さの音があります

スケール(音階)とは言葉通り、「段」のことであり、12種類の高さの音を、ある規則で順番に並べたものです。ここでは、1番最初に覚えやすい音階、「ハ長調」を見てみましょう。

ハ長調…ハ(ド)の音を主音とする長調のことです。シャープ(♯)やフラット(♭)がつかない調号なので、初心者でも取りくみやすい調です。

主音…その調の音階の最初の音のことで、ハ長調でいうと「ド」のことです。

調号…ト音記号やヘ音記号のすぐ隣りについている、シャープ(♯)やフラット(♭)のことです。ハ長調とイ短調には、調号はつきません。

スケール練習の大切さ

ピアニストやピアノ指導者が声を揃えてスケールの大切さを語るのには、理由があります。その理由について説明します。

調の基礎知識が身につく

ハ長調は何も調号がつかないので鍵盤でいうと黒鍵は使用しません。白鍵だけを右方向に順番に弾いていけば自然な音階が成り立ちます。

ただし、他の調になると黒鍵を使ったり、楽譜では調号にシャープやフラットが付きます。スケールを練習するとその仕組みが、「感覚」で理解できるようになります。

よくスケールのことを「全音」や「半音」などの言葉で説明している解説本などを見かけます。スケールを弾けるようになれば、その理由が理論的にも感覚的にも理解できるようになります。もちろんその曲が何調なのか、瞬時に判断できるようにもなります。つまり、調の基礎知識が理解でき、調性感も身につくということになるのです。

それにより、楽曲分析もしやすくなるので、曲の練習や勉強にとても効果的です。初めての曲に取りくむにあたっても、初見譜読みにかかる時間が大幅に減るなど、非常に役に立ちます。

初見…楽譜を初めて見て、その場で出来るだけ止まらずに、最後まで弾くこと。

譜読み…初めて弾く曲の楽譜を正確なリズム・音符で、ある程度通して弾けるようになるまでの作業のこと。

楽曲でのテクニック練習が最小限になる

スケールの練習をマスターすると指のテクニック不足解消だけでなく、鍵盤の感覚が身につき、無駄なミスタッチが減ります。また曲にふさわしい正しい指づかいができるようになります。楽曲に出てくるパッセージには、スケールとアルペジオの音型がとても多く登場します。むしろ、楽曲の多くは、スケールとアルペジオの応用でできていると言ってもいいくらいです。つまり、スケールの練習が出来ていると、曲で出てきたテクニックを1から練習しなくても、最小限の練習で弾けるということになります。

和声感が身につく

それぞれの調のスケールの最後には音楽の終止形「T-S-D-T」があります。それぞれの調のカデンツの響きが分かるので、24の全てのスケールを弾くうちに「和声感」も身につきます。カデンツとは、楽曲の終止形で使われる和音進行のことをいいます。

音楽を学ぶ上で「和声感」も、とても大切な要素のひとつです。

スケールの練習方法

スケールを練習するにあたり、教本の紹介と練習方法の説明をします。

教本について

スケール練習をするための教本を紹介します。

ハノン「ピアノ教本」

ピアノ学習者に定番のハノンの「ピアノ教本」です。スケールの練習はこの中の39番にあります。この中には、アルペジオの楽譜も含まれています。

スケールとアルペジオ

指くぐりと指こえ

1オクターブ以上の長い音域を片手で弾こうとすると、途中で指が足りなくなります。そこでスムーズに弾くための練習が必要となり、スケールの練習をすることで身につけられます。

スケール練習の難しさは1の指を2、3の下へ送り込むこと(=指くぐり)と、1の指を他の指が越えていくところ(=指こえ)にあると考えられます。どの調のスケールでも同じことが言えます。

ちなみに、送りこんだ1の指で弾いた後は、すぐに手の甲は次のポジションに移動するようにします。手と指の理想的なフォームを崩さないためです。逆に、1の指を他の指が超えて弾く場合は、この逆の動作を行うことになります。

スケール練習の手順

①片手ずつ、必ず楽譜の指番号を守って弾きましょう。気をつけることは、指くぐり・指こえをしても、それをしたことが分からないよう、どの音も同じ音量・音質で弾くことです。また手首が上下に揺れず、手の甲が床と平行になることをキープしてください。

②左右それぞれ、出来るようになったら、両手で合わせます。指番号が左右で違うので最初は合わせて弾くことが難しいと思います。ゆっくりのテンポで手・指のフォームは崩さないことに気をつけて練習しましょう。

③ゆっくりの段階からメトロノームを使って練習します。メトロノームにピッタリ合わせて弾くことは意外に難しく、速いテンポだけでなく、ゆっくりのテンポに合わせることもいい練習となります。この練習を沢山やると、指のテクニックや演奏が安定していきます。

④両手の練習に慣れてきたら、リズム練習を取り入れて、粒が美しく揃うことを目指します。1つの調に慣れるまで、毎日続けましょう。リズム練習については、後ほど詳しく説明します。

⑤慣れてきたらテンポを少しずつ上げていきます。粒の揃い方が気になったら、再びリズム練習や、片手ずつの練習を並行して、何度も行います。

両手ばかりで練習していると、利き手ではない方の音が実は聴けていないことがあります。そうならないためにも、時々は片手ずつで、特に利き手ではない方を重点的に練習しましょう。

リズム練習について

スケール練習でリズム練習をすると、コントロールが自由に効くようになりますし、粒が美しく揃うようにもなります。ハノンの「ピアノ教本」にも沢山のリズム練習がありますが、おすすめのパターンを2セット、紹介します。これをやると、スケールの指くぐりや指こえの移動もスムーズになり、弾きやすくなります。

付点のリズム(2つを1セット)

4つのリズム(4つの変奏を1セット)

①と②、両方ともやると、より効果が感じられます。

1つの調を丁寧に

毎日の練習で、多くの調のスケールを弾くに越したことはないですが、全ての調を雑に練習するよりは、1つの調を丁寧にやることの方が大切です。ミスタッチをしたり、粒が揃わない、など気になることがあれば、次の調に進むのではなく、納得のいく弾き方ができるまで、1つの調で、色々な練習をするようにしましょう。

難しい調のスケール練習について

スケールの練習が、全ての調で同じ指づかいであれば楽なのに、と思いますよね。しかし実際には、調によって指づかいが違います。この違いの理由はどこから来るのでしょう?

スケールで黒鍵を弾く時は…

この記事では、全ての調は紹介しませんが、調によっては、スケールの中に黒鍵が登場しますよね。スケールの指づかいでは、黒鍵を弾くときは、1の指は最少限の使用にとどまることが暗黙のルールです。ですので主音が黒鍵始まりの調は、1以外の指でスタートすることになりますし、それ以外でも黒鍵を1の指で弾かないような指づかいになっています。それらの理由により、調によって指づかいが違ってくるのです。

難しい調を練習する時は…

黒鍵は1の指以外で弾く。頭では理解できたけど、シャープやフラットが多い調はやっぱり難しいよ。変ニ長調(下の楽譜)には調号にフラットが5つもついているし。

そういう時は、まず1オクターブだけを弾こう。下の譜面を参考にしてね。必ず、片手ずつゆっくりやるんだよ。
スケールはこの1オクターブ↓が同じ指づかいで続いているだけだから、このやり方に慣れたらスケールも弾けるようになるよ。ゆっくりトライしていこう。

右手

左手

左手で(2)とカッコ書きしてあるのは、スケールを弾くときの頂点の指づかいです。どちらの指づかいでも出来るようにしておくと、スケール練習に移行した時に、スムーズに弾けるようになります。

まとめ:ピアノでスケールを練習しよう

ここまで、スケールについて説明しました。まとめると次のようになります。

<スケール練習をすると身につけられること>
1.調の基礎知識が理解でき、調性感が身につく。
2.理論だけでなく、鍵盤の感覚が身につき、無駄なミスタッチが減る。
3.楽曲の多くはスケールとアルペジオの応用なので、スケール練習をマスターすると、新しい曲の初見や譜読みも早くなる。
4.和声感が身につく

ピアノを学ぶ上で、音楽の基礎知識を身につけることはとても大切です。スケールが弾けるようになれば、指のテクニックが向上するだけでなく、上記の内容も身につきます。

つまり、スケールは時間をかけてでも習得する価値のある練習です。何度も練習することで、その効果が感じられるようになり、ピアノがぐっと身近になることでしょう。

皆さんのピアノライフが充実したものになるよう、応援しています。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
ピアノ基礎練習

ピアノ上達ヘの道!ハノンを効果的に活用する方法

ピアノの鍵盤は88鍵。その鍵盤を私たちは10本の指で弾かなければなりません。人には利き手、利き指があるので、日常生活でよく使う指は、だいたい決まっており、動きやすさには差があります。また5本の指は長さも太さも違うため、キレイなメロディーを奏でるためには、繊細なコントロールが必要にもなってきます。そういう時に役立つのが、指のテクニックを身につける練習であり、ピアノ学習者に定番の『ハノンの教本』です。

筆者も長年、時間をかけて取りくんできました。自分のピアノのテクニックに自信がなかったので、コンプレックスを克服するために、毎日の練習の始めに、長く時間をかけていました。ところが、どれだけ時間をかけても、10年経ってもコンプレックスは克服できないままでした。それでも練習を積み重ねることで、テクニック不足が解決すると信じ、がむしゃらに時間を費やし続けていました。

いつの頃からか、長年のやり方を見直し、練習方法を変えてみたところ、ようやくテクニックが上達できなかった理由が、少しずつ見えてきたのです。

結果として、ハノンは使い方を工夫することで、テクニック上達への道が開ける。逆に一歩間違えると、ある一定のテクニックまでしか上達しない。これが、長年の経験で導き出したことでした。

それにより、練習時間がはるかに多かった学生時代より、今の方がはるかに指が自由にコントロールできています。それは本当に大切な練習を、これまではピックアップ&工夫が出来ていなかった…その原因に気がつくまで数十年かかりました。

上記のことを踏まえ、この記事では、ハノンを効果的に活用して、確実にピアノのテクニックを身につける方法をお伝えします。

ハノンとは?

指の運び方やスケール(音階)・アルペジオなど、様々なテクニック練習が書かれた教本のことを指します。ピアノの練習を始める際の、指の準備体操として使われます。

フランスの作曲家

ハノンとはフランスの作曲家で、1820生まれ。本名はシャルル=ルイ・アノン(ハノン)といいます。教会のオルガニスト、ピアノ教授として活躍しました。

ハノンの教則本はピアノを学ぶ多くの学習者にとって、標準的な教材のひとつとなっています。ピアノ音楽界で、「ハノン」というと一般的にはこの曲集を指します。

一般的なピアノ学習者用だけでなく、今では子ども向け、大人初心者向け、などいくつか種類が出版されています。この記事では一般的なタイプの教本を元に説明します。

ハノン(教本)の目標

教本では「5本の指を全て平均して訓練すれば、ピアノ曲は何でも弾くことが可能になる」と考え、次のことを目標に設定されています。

1.指を動きやすくすること。
2.指をそれぞれ独立させること。
3.指の力をつけること。
4.つぶをそろえること。
5.手首を柔らかくすること。
6.よい演奏に必要な特別な練習を全部入れること。
7.左手が右手と同じように自由になること。

ハノン(教本)の構成

①1番の変奏の例(リズム練習など)
②第1部(1〜20番)
「指を〈1.すばやく動く 2.1本ずつ独立させる 3.力強くなる 4.つぶをそろえる〉ための練習」
③第2部(21〜38番) 「さらに進んだテクニックを得るための練習」
④音階(スケール)
⑤アルペジオ
⑥第3部(44〜60番) 「最高のテクニックを得るための練習」→トリル、重音の連続、オクターブ、トレモロなどの練習

ハノンに期待できる効果と落とし穴

上記の「教本に書かれた目標」のうち、身につきやすいこと、と意外と見落としがちなことがあります。理由を添えて説明します。

メリット

教本の構成の中にある「第1部」と「第2部」で占める曲数は40曲弱。とにかく多いので、ここを終わらせようとするだけで、数年はかかります。時間を費やした分だけ、練習すると格段にテクニックは上がります。例えば次のようなテクニックです。

指が動きやすくなる/指の力がつく/手首が柔らかくなる/ある程度は左手は右手と同じ速さで弾けるようになる

毎日の練習で、楽曲にすぐにとりかかるよりも、最初にこの練習をすると、確実に手や指が自由に動きやすくなります。また「リズム練習」をすることにより、さらに粒がそろい、美しい音質で弾けるようになります。

気が付きにくい落とし穴

ハノンは間違えずに弾けたからといって、すぐに次に進むような曲集ではなく、じっくりと取りくむ必要があります。また楽曲と併用して進めるものなので、第2部まで終わらせるだけでも、相当な年月がかかります。そこに落とし穴がありました。

①第1部と第2部は、白鍵のみの練習しかありません。白鍵よりも黒鍵の方が物理的に幅が細いので、黒鍵の上こそ弾くのが難しいのに、長い年月を費やしても、黒鍵を弾く筋肉は身につけられないということになります。

②第1、2部について、もうひとつの落とし穴。ひたすら全ての指を動かす練習にはなっているのですが、弱い指(4と5)は、弾きながら「隣の指が自然と助けてしまうことが可能な練習」になってしまっているのです。他の指が助けると、一見、指がよく動いているように感じるのですが、結局、指が独立しない練習となってしまいます。つまり、本当の意味で指が独立するための練習というのは、第1部、第2部にはない、というのが、この練習を10年以上続けて、筆者が気がついた感想です。

③音楽を学習する人にとって、「スケール(音階)とアルペジオ」の練習はとても大切です。音楽に大切な調の感覚や音感が身につくので、この練習こそ、時間をかけてでもマスターする価値があります。指の訓練ができるのと同時に鍵盤の感覚も身に付くので、効率のよいテクニック練習となります。これは、楽曲を練習する上でもとても役に立つものです

それほど大切な練習であるにも関わらず、教本を最初から順番に進めてしまうと、スケールとアルペジオにたどり着くのは4、5年後…。そうなると、この教本をスタートする年齢にもよりますが、大学受験で音大や音楽科を目指す人にとっては、大切なテクニックを習得しておきたい若い年代のうちに、大切な練習に充分な時間をかけられないまま時が過ぎてしまいます。

スケールとアルペジオの重要性を元々知っていれば、すぐに取りかかればすむことですが、学生時代はその重要性にはなかなか気がつきません。私もそのうちの1人でした。とにかく第1、2部の量が多すぎるので、この教本に忠実に取りくむ人ほど、本当に大切な練習になかなかたどり着かない、それが落とし穴なのです。

④指の独立が目指せる練習としては、「減七のアルペジオ」「重音の連続」などがあります。これらも非常に効果的な練習です。これらの練習も、③で述べたスケールとアルペジオの練習も、ハノンの教本の中では、そこまで重要視されていると思えないのです。くり返しになりますが、第1、2部が最初に占める割合が多いため、師事している先生がよほど、練習の必須課題として指定しない限り、大切な練習の優先順位を見落としてしまうというデメリットがあります。せめてスケールとアルペジオが掲載されている順番がもっと前の方であればいいと思うのですが…もしくは第1、2部の練習の中に黒鍵を使用すような練習があれば…そう思ってしまいます。嘆いても仕方ないので、教本を効果的に活用する方法を次に紹介します。

ハノンを効果的に活用しよう

以上の面から、筆者がたどりついた効果的な練習内容を紹介します。

第1、2部は選曲し、黒鍵での練習もする

第1、2部は同じような効果を狙ったものが多いので全てやらずに、特に苦手だと思うものを選びます。そして全て半音上げて、嬰ハ長調(変ニ長調)の状態で練習します。こうすることで、黒鍵の上でも滑らずに弾ける指の筋肉を鍛えることができます。

リズム練習をする

第1、2部の練習をする際は、粒をそろえるために、第1部の前のページにある「1番の変奏の例(リズム練習)」を必ず取り入れましょう。様々なリズムを練習することで、さらにコントロールが自由に効くようになります。全てをやるのは時間がかかるため、おすすめなのは次の2つの方法です

付点のリズム(2つを1セット)

4つのリズム(4つの変奏を1セット) 以下の3、4、5、15の4つ

どの練習も、粒が美しく揃うまで、このリズム練習を沢山行いましょう。

指の独立を目指す練習をする

次の①〜③の練習は、それぞれの指が独立しないときちんと弾けない仕組みになっているので、これを練習することで、指がかなり独立します。それぞれの指がコントロールできます。それぞれ、記述の「リズム練習」も行い、粒が良く揃うまで練習しましょう。

42番 減7の和音のアルペジオ

50番、54番 重音の連続

59番 1-4と2-5を広げるための練習

スケールとアルペジオを日課に

ハノンの教本では、39番がスケール(音階)、41番がアルペジオとなっています。それぞれ練習し、弾けるようになったら、1つの調を組みあわせて1つのセットとして練習するのが一般的です。

例えばハ長調の場合

ハ長調のスケール音階×2回(カデンツを弾かずに)→ハ長調のアルペジオ×2回→ハ長調のカデンツ ⇦ここまでを1セットとする

*カデンツ…終止形の和音進行のことで、音階の中の8〜10小節目に当たる部分。

1セットで、全ての調を続けます。24の調、全てのセットを弾くと長いので、1回の練習で弾く調は、半分にする、など分けて練習してもよいと思います。既述のリズム練習も必ずするようにし、粒が美しくなるまで、練習しましょう。

ハノンの教本以外に「スケールとアルペジオ」というタイトルの教本も出版されています。それほど、この練習はピアノ学習者にとって、大変重要です。

これらをマスターすると指のテクニック不足解消だけでなく、鍵盤の感覚が身につき、無駄なミスタッチが減ります。また曲にふさわしい正しい指づかいができるようになります。そしてどの楽曲も、その調のスケールとアルペジオに近い音型がひんぱんに登場するので、初見や譜読みも早くなり、楽曲分析もしやすくなります。つまり、とても効率のよいテクニック練習であり、楽曲を練習・勉強する上でも、とても役に立ちます。

ピアノでスケール(音階)を練習しよう。

 

オクターブ練習

53番のオクターブの音階、56番のトレモロの音階でオクターブの練習をしましょう。手が小さい人、または元々身体が硬い人は手の開き方が狭いので、オクターブ練習を行うと効果的です。

自分の弱点から必要な練習を選ぶ

曲を弾いているとつまずいてしまう箇所が出てくると思います。そこがどうしてできないのかを考えてみてください。何が弱点なのかを知る→どういう指の訓練が必要なのかを探る→該当する練習番号で克服する(対応するものがなければ工夫する) この流れが大切です。

人によって、苦手なテクニックは違います。当然、時間をかけるべき基礎練習も違ってきます。自分の弱点を知って、上手にハノンを活用しましょう。

まとめ:ピアノ上達への道!ハノンを効率的に活用する方法

ここまで、筆者の経験を元に、ハノンを効率的に活用する方法を紹介しました。ハノンには指が動きやすくなることが目標とされていますが、気が付きにくい落とし穴もあります。そのために、使い方を誤ると、ある一定のテクニックまでしか上達しません

そうならないために、ハノンは効果的に活用しましょう。その方法をまとめると次のようになります。

1.第1、2部は曲が多すぎるため、抜粋し、黒鍵の練習をすること。
2.指の独立を目指す練習をすること(第1、2部だけでは身に付かない)。
3.スケールとアルペジオを日課にすること。
4.オクターブ練習をして手首を自由にさせること。
5.自分の弱点を知り、必要な練習に時間をかけること。

ハノンの教本の内容はとても充実している分、日常的に使用するものは抜粋して練習する必要があります。自分の弱点を知り、それに合わせて練習を続ければ、確実にテクニックは身につきます。ピアノの練習は継続が必要ですが、ハノンを利用して確実にテクニックを磨けば、必ず全ての努力があなたのピアノの技術、表現力に結びつくことでしょう。テクニックを身につけ、よりステキな演奏ができるよう、応援しています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

カテゴリー
ピアノ基礎練習

効率よくピアノを練習する方法

気軽にピアノを始めたけれど、なかなか上達しなくて諦めようと思っている人、むかし習っていたピアノを再開したけれど、どうすれば早く上達するのか分からない人…多くのピアノ学習者が抱える悩みだと思います。何時間も無理に退屈な練習を続けても、ピアノは上手くなりません。

日頃から、効果的な練習ができれば、歳を重ねてもずっと、ピアノを弾く楽しみを持ち続けられると思います。この記事では、ピアノの上達方法を、時間の使い方と練習方法という2つの面から、紹介します。

ピアノ上達のための、時間の使い方

ピアノは楽器の王様と言われ、メロディー、和声、リズム、バス、など沢山の役割をひとつの楽器で表現できます。その分、左右それぞれ違う動きをしますし、和音やリズムなどが複雑になり、演奏に求められる要素は他の楽器以上に多いものです。よって、「こんな曲弾きたい」という思いを叶えるまでに、多くの練習過程・時間が必要となります。誰にとっても、時間は有限です。いかに短時間で上手になるか、そこを追求することがピアノ上達への鍵となります。

ここでは、練習時間を有意義に過ごすための方法を紹介します。

ピアノを弾く目的・目標をはっきりさせる

ピアノは基本的に1人で演奏する、孤独な楽器です。練習する目的・目標がはっきりしていないと、どうしても練習には身が入らなくなるのは自然なことです。「ピアノが弾けるようになりたい」という漠然とした目標だけでは、日々の練習のモチベーションを保ち続けることは難しいと思います。

もしはっきりとした目的・目標がない人は、自分だけの期限付きの目標を作ってみましょう。「○月までにこの曲を、暗譜で弾けるようになる」「今年はこの4曲をマスターする」などです。できれば、誰かに聴かせるつもりで設定してみましょう。身近な人に聴いてもらう、インターネットに動画を投稿する、など人に聴いてもらうことを前提に目標を設定します。そうすることで、緊張感が生まれ、自分だけで完結するよりは、意欲がわきやすくなります。

次に、目標が定まったらゴールまでの計画を細分化して計画しましょう。最終的には「今日はこの1段は完璧に弾けるようにする」など、1日の練習計画を具体的に立てるところまでやります。練習しやすい区切りごとに、自分だけの「練習番号」をつけて取りくむこともオススメです。

練習の習慣を定着させる

目標を立てることが出来ても、続けなければ意味がありません。練習の習慣を身につけましょう。それが身についている人とそうでない人は、数年後には確実に差が出てきます。

お子さんの場合は、親から練習するよう言われ、嫌々でもピアノに向かうことで、ピアノに向かう習慣ができている子もいます。一方、大人の学習者は、自分で練習時間を管理する必要があります。自分の意思で始めたことなので、比較的楽しんでピアノに取りくめるかもしれません。しかし、現実には仕事や家事で日常忙しく、なかなか毎日、一定時間ピアノに向うのは難しい人も多いのではないでしょうか。その場合、週に数回でも、週末だけでもOKです。「この曜日のこの時間は練習する」など、自分の予定の中にピアノの練習を組みこみましょう。続けることが大切!

ちなみに筆者の場合、小学校時代はピアノの練習が大嫌いだったので、親から何度言われても練習はしませんでした。それでも毎週1回、ピアノ教室で30分のレッスンがあります。たとえ週1回でも、ピアノ教室で弾くことが習慣となっていたわけです。それによって、毎年発表会には、暗譜をして弾いていました。

このようにたとえ週1回でも、弾くことをやめない限り、ピアノは上達できるものです。ぜひ無理のない方法で、練習を習慣化させましょう。

練習中は集中する

せっかくピアノに向かっているのに、違うことを考えてしまったり、スマホを触ってしまったりすると、あっという間に時間は過ぎてしまいます。

そうならないために、練習するごとに毎回、練習計画・目標を立てましょう。5分、10分など細かい単位であればあるほど、集中できます。短い時間で設定すれば、すぐに終わってしまうので、もたもたしてられません。例えば、練習時間30分ある場合でも「5分間でこの1段を譜よみを終わらせる」「5分間でこの苦手な2小節を完璧にさらう」など細かく設定することがコツです。

またメトロノームでの練習は、安定したテンポを身につけるために、とても大切ですし、集中するにも、効果的です。もし持っていなければ、スマホのアプリでインストールして、活用しましょう。

ピアノの練習時間、理想は?

よく「ピアノは毎日どのくらい練習すればいいですか」という質問を聞きます。ピアノを練習する目的は人それぞれ違うもの。経験や実力も違うため、当然、必要な練習時間は違います。

例えば、1曲を1年間かけて仕上げるのであれば、1週間で30分でもいいでしょうし、1曲を一週間で仕上げるのであれば、曲の難易度にもよりますが、毎日5時間以上練習が必要になるかもしれません。

また「曲を完成させる」と一言で言っても、求められる完成度は演奏する場所によっても違ってきます。「ただ弾けるようになればいい」、「身近な人に聴いてもらいたい」、「動画をアップしたい」、「複数人数の前で暗譜で弾きたい」、「大きなステージの上で弾く機会がある」など、その内容によって曲の深め方も様々です。

自分が1曲を仕上げるまでに、どのくらいの時間、期間、練習量が必要なのか、ということを目安として知っておくと、ゴール設定に役に立ちます。また集中力が続く時間は何分くらいで、いつ頃の時間帯か、など知ることも参考になります。それらによってあなた自身の理想の練習時間を決めるといいと思います。

時間の濃度を上げて、少しでも短期間で、曲の完成に近づけましょう。

意欲によって、練習時間を変えてもOK

ピアノを弾きたい願望がある人にとって一番避けたいのは、「いつの間にかピアノを弾かなくなっていた」となることです。そうならないためにも、自分にとって、練習へのハードルは低めに設定しましょう。「今日は5分だけ」という短い時間でもOK。自分にとって継続できる方法を、最優先させましょう。僅かな練習でも1週間、1か月、半年、1年…と継続していけば必ず上達するものです。

ただ、その日の気持ち・疲れ具合により、練習への意欲は日によって異なります。もし、疲れてやる気が出ないな、という時。それでもまずピアノの前に座わってみましょう。行動を起こすことで、意外と練習できてしまうことがあります。

それでも、どうしても集中できない時は、無理しないで休みましょう。大切なことはたとえ毎日でなくても、練習を継続させることです。無理することで、続かなくなってしまえば、意味がありません。また次の日、チャレンジすればいいのです。

ピアノ上達のための練習方法とは

これまで述べたように、ピアノ上達には練習時間の密度を上げることが大切ですが、同時に練習方法にも工夫が必要です。そうすることで、同じ時間をかけても、より早く曲を仕上げることが出来るようになります。

ここでは、効果的な練習方法をいくつかに分けて紹介します。

新しい曲に取りくむ時は

新しい曲を弾く時には、譜よみをします。「譜よみ」というのは、初めて弾く曲の楽譜を正確なリズム・音符である程度、一通り通して弾けるようになることです。

弾きたい曲に対して譜よみの力が足りないうちは、1曲が形になるまでどうしても時間がかかります。それにより曲の楽しさを感じる前に、練習が苦痛に感じてしまうことはよくあることです。逆を言えば、譜よみのレベルが上がれば、苦痛に感じる時間も減っていきます。

ただし初心者であっても、ゆっくりと正しく譜よみを進めて行けば、確実に弾けるようになります。肝心なのは、正確に、弾ける速さでゆっくりと、片手ずつ、楽譜を読んでいくことです。少しでも自分の弾ける速さより速く弾いてしまうと、止まってしまい、余計に時間がかかってしまいます。

そうやって確実に弾けるようになれば、その後、テンポを速くすることはそれほど大変ではありません。ここはぐっと我慢して、「ゆっくりで確実に弾く回数」を増やしましょう。正確にくり返すことで、その動きを脳と指が覚えてくれます。その成功体験を数こなすことで、譜よみの力・指のテクニックも少しずつ上達していきます。

ここで大切なことがもうひとつあります。譜よみをする段階で、音楽的な曲想をつけるようにしましょう。譜面どおり正しく弾くことだけでも大変かもしれませんが、それだけでは「音楽」とは言えません。その曲をどう表現するのかということをゆっくり・片手ずつの行程でこそ心がけましょう。音を出すときは常にいい音で弾く、それを心がけることにより、音楽的に仕上がるまでの時間が少なくてすむようになります。

正しい指づかいで練習する

楽譜には、作曲者や楽譜編集者がお勧めする指番号が書いてあります。もし弾きにくい場合は、弾きやすい指づかいを、譜よみの段階で決めてしまいましょう。練習する度に違う指で弾いていては、脳と指は混乱し、新曲を習得するのに時間がかかってしまいます。弾きこむうちに弾きにくいと感じることもあります。その時は気付いた時に変えればOKです。

メトロノームを使う

弾けるようになってきたら、メトロノームに合わせて弾いてみましょう。速さの感覚が客観的に身につきますし、安定感が出てきます。また、既に述べたように、集中するにもいい方法です。

少し遅いかな、と感じるテンポで、確実に合わせることが大切です。それが出来るようになったら、少しずつテンポを上げて(速くして)いきます。遅めのテンポで確実に弾けなければ、速く弾いても上手くは弾けません。もし少しでもミスするようであれば、更にテンポを下げ(遅くし)、やり直しましょう。場合によっては、ミスしたところをピックアップして部分練習し、仕上げていきます。最終的に理想のテンポに近づくまで続けましょう。

楽譜以外の情報も知る

新しい曲に取りくむ上で、その作曲家の人生や作曲された時代背景を知ることもとても大切です。またプロのピアニストの音源を参考にすると曲に対するイメージも湧きやすくなります。ピアノ学習は、楽譜を正しく読みとることが基本ですが、それ以外の情報も参考にすると、音楽的な表現をする上でとても役に立ちます。

練習方法の見直しをする

効率のよい練習が出来ないと、なかなか曲が仕上がらず、途中で諦めることになってしまいます。上手く弾けない箇所がある場合、「ただ練習の回数が足りていない」のか、それとも「練習の質が悪い」のか、それを見極め、必要に応じてやり方を見直す必要があります。

では質の練習・悪い練習とはどのようなものでしょうか?

質の悪い練習とは

・何となく練習している。
・途中でつまづいてもそのまま先に進む。
・完成度が低い段階で、通してばかり弾く。
・練習する度に、違う指を使っている。

つまり、次のように意識して練習しましょう

質のよい練習とは

・毎回、練習計画を立て、時間を細分化し、目的をもって練習する。
・嫌いな所・つまづいた所こそ、他よりも時間をかけてくり返し練習する。
・完成度が低いうちは、せまい範囲をくり返し練習する。
・毎回、同じ指づかいで練習する。

自分の演奏を録音する

客観的に自分の演奏を聴くというのは、難しいものです。ある程度、曲が仕上がってきたら、ぜひ自分の演奏を録音・録画しましょう。音そのものに集中したい時は録音でもいいですし、録画であれば、視覚的なことにも気がつくことが出来ます。

自覚はないのに、意外と身体全体にが力んでいたり、弾き方が雑になっていたり、と沢山の発見があります。自分の弾きたい表現が出来ているか、厳しめに確認することで、今後の課題が見つかります。このように自分の演奏を客観的に聴くことは、音楽的な上達への、もっとも効果的な方法のひとつと言えます。

さらに上達を目指すには

ピアノ学習をもう少し頑張れそうな方に、さらに上達のヒントになる内容を紹介します。

音感を身につける

「音感」とは音に対する感覚のことです。音の高低、音色などを聴き分ける力を言います。

ピアノという楽器は何も考えずに鍵盤を押さえても、必ず何かしらの音が鳴ります。そういう意味では他の楽器に比べると、初心者でも挑戦しやすい楽器です。

一方、一人で「メロディー/伴奏(和声)/リズム」など沢山の要素を表現することが必要であるため、他の楽器よりも大変な面があります。そこで音感が身につくと、譜よみの手助けになりますし、上達への近道に繋がります。中でも音の高低を聴きとる力は、ピアノ上達にとても大切です。ソルフェージュなどのレッスンを受けて、集中的に音感の強化をする人もいます。ピアノを長く続けていれば、あるレベルの音感までは身につきますが、個人差はあります。次の練習も音感が身につく、ひとつの方法です。

音階(スケール)とアルペジオを練習する

音階とは、1オクターブ間の音をある規則に沿って順番に並べた音のことを言います。アルペジオとは、和音を構成する音を一音ずつ低い方、または高い方から順番に弾いていく奏法のことです。

多くの曲は、音階、和声、アルペジオ、オクターブの組み合わせで出来ています。音階をアルペジオをマスターしておくと、弾きたいと思う曲に出合った時にとても役に立ちます。またこの基礎的な技術は譜よみや初見にもプラスとなります。初見とは楽譜を見てその場で弾くことです。

そこで、ハノンの『ピアノ教本』を使い、全ての調性の音階とアルペジオを弾けるようになることをお勧めします。全ての調が難しければ、最初のうちは♯(シャープ)や♭(フラット)が2つずつくらいの調までをまず弾けるようになりましょう。この練習は時間をかけてでもマスターする価値があります。調の感覚や音感が身につき、ピアノがとっても身近になりますよ。

まとめ:効率よくピアノを練習する方法

ここまで、効率よくピアノを練習する方法を紹介しました。まとめると次のようになります。

練習時間の使い方

・ピアノを弾く目的・目標を作り、練習に対するモチベーションを上げる。
・毎日でなくてもいい。とにかく練習を習慣化させる。
・練習時間は集中するために、時間を細分化した計画を立てる。メトロノームを使うのもよい方法。

効果的な練習とは

・新しい曲に取りくむ時は、片手ずつ、ゆっくりと、譜よみをする。この時、音楽的な曲想をつけながら、いい音で弾くことを心がける。
・正しい指づかいで練習する。
・楽譜以外の情報(曲の背景を知り、音源を聴くなど)も利用して、演奏に役に立てる。
・自分の音を録音して、課題を見つけ、さらに音楽的な上達を目指す。

本来、ピアノを弾くことは楽しいこと、素敵なことであるはずです。しかし、効率の悪い練習をしてしまうと完成までに時間がかかり、挫折にもつながってしまいます。そうならないためにも、ここで紹介した中から、自分なりの練習方法を見つけ、工夫し、より短時間で上達を目指して欲しいと思います。
そしてこれを読んでくださっている皆さんが、これからも楽しいピアノライフを送れますように。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。